第百二十七話 森での遭遇
物語は十六年の時を遡り、とあるバーの片隅から始まります。
そして現代、カレッジを目指す森の中では、新たな二人の戦士が拳と剣を交えていました。
「引きこもり」のスバルと「前作プレイヤー」のランス。
交わるはずのなかった点と点が、巨額の賞金が懸かった「コロッセオ」という舞台へ向かって走り出します。
16年前。
カラン……。
「おう! いらっしゃい花ちゃん! 来てくれたんか?! こっち空いてるぞ!」
隣の中学出身の友達で、このバーのマスター。隣の中学はかなり荒れており、花の中学の生徒はよくカモられていたそうだ。中学時代は四天王と呼ばれていたらしい。
統括と花は幼馴染で、統括は友達が多い。花はその周りとも顔見知りになっていた。
陰キャの花はとうてい友達になるような相手ではないが、統括といると自然とこの手の友達も増えていった。
ストン。
花が座った隣には、大男がいた。
ギロリ。
花は視線を合わせない。こんな時は“空気”になるスキルが発動している。
「はな……ちゃん? ……そうか、お前があの……」
(ダニィ!!? 俺の存在を知ってるだと?! 一体どこで!! ……お、終わった。こんなヤバそうな大男に睨まれてる。嫌だな……今まで絡まれることはあっても、華麗に逃げてきたのに……)
大男は花に振り向き、手を前に突き出してきた。
(や、やべえ!! 胸ぐら掴まれるのか!!? いや、でもこちらから反応したら正当防衛が! へ、平常心だ! ここだけ耐えろ!)
スッ。
(へ???)
なんと、その手は握手だった。
「お前が噂の花か、名前はずっと前から知ってた! 俺は岩川、よろしくな!」
(ダニィ!? だ、誰だ?? ……あ……一人しかいないわな……)
花は毅然と振り向き、手を差し出す。
ガシッ。
「こちらも、名前はずっと前から知ってた。こちらこそよろしく」
花の足はガクガクしていたが、なんとか悟られないように耐えた。胸ぐらを掴まれたらおそらく漏らしていただろう。
こうして二人は偶然にも知り合いになった。
◆
「そりゃあ!」
ズババン!
「思った通り! これは回しやすい! ハンマさんありがとう!」
ランスはカレッジに帰るため、森で剣を試していた。
「ん? あそこはモンスターが溢れてるところだ。誰か囲まれてる!」
「ぬどりゃあああ!」
そのアバターは、いかにも格闘技ゲームのキャラのような胴衣を着ていた。
蹴り、正拳突きなど、空手技を繰り出してモンスターを倒している。
が、リーチが短いため、徐々に群れに押し込まれる。
「ぐぬぬ! いかん! このままでは!」
ズババン!
キキャー! バシューーン!
「大丈夫ですか?! 助太刀しても構いませんか?!」
「お、おお! 助っ人! 助かる! よろしくお願いします!」
即座にパーティ設定を繋ぐ。
「うおりゃ!」
「ぬどりゃあ!」
ズドドド! ズババン!
二人は一気に森を抜けた。
「はあ……はあ。ありがとう、通りすがりのものよ。俺はスバル」
「ランスです。いやあ、危なかったですね。あそこは何故か湧いて出るポイントなんで、僕も警戒してるんです」
「あんなポイントがあったなんてな。あれは一人で通過するのは不可能だな」
「ちょっと隙を見ないと難易度が高いですね。まあ、僕の仲間は一人でスイスイいっちゃうんですけどね。自信無くすよ、あははは」
(くっ! この青年もなかなか眩しいぞ! 爽やかだ! 陰キャの俺には眩しい!)
「その仲間は、そんなにすごいやつなのか……上には上がいるものだな」
「スバルさんもかなり強いですよ? 僕は前作プレイヤーで、そこそこやるつもりなんですが、その彼が異常なんです」
二人はカレッジ方面に歩いて行く。
「スバルさんもカレッジに?」
「ああ、たくさんスキルが欲しくてな。だが、習得するにはマスター金が必要だ」
「ああ、だから森へ」
「うむ。なかなか金は貯まらんのだ」
「スバルさんは“モンク”ですか? なら、それはあるかもしれないです。モンクはスキルの組み合わせも強いし、武器があまりいらない分、極めるとチート級に強いので、その代償みたいなものだと思います。これは前作でも同じでした」
「ドロップアイテムは普通なんだが、金だけ少ないと思ってたんだ、やはりそうか」
「だから、パーティを組んで効率よくやる方がいいですね! どうでしょうか、日中はなかなか他のプレイヤーも少ないので、時々一緒にやりませんか?」
(ぬあにぃ!? なんてスムーズに、そして爽やかに話を持って行くんだこの青年は!? しかし、嫌な気分はしない。俺にもメリットしかないな)
「よ、よろしくお願いする! ランス殿!」
「ぷっ! 殿はやめてよ〜!」
「ああ! ついクセが! 仲良くなると、つい変な呼び方をしてしまうクセが! す、すまない!」
「大丈夫! 好きに呼んでよ!」
スバルは、ランスが花の仲間だと知らない。
それを知るのはまだ少し後だった。
引きこもりのスバルは、基本的に日中はログインしている。
前作の引き継ぎと、驚異のログイン時間で、すでにアップデート後のプレイヤーに匹敵するレベルになっていた。
カレッジへ到着する。
「ん? 掲示板になにか書いてある……コロッセオ? あ、賞金もあるぞ!」
「なに?! 賞金も?! 各ブロックで50万円! さらに優勝はプラス50万円?! ギルも同等だと?!」
「どうしようかなあ、けど、下手に目立って他のプレイヤーに目をつけられたらどうしよう……スバルさん、こういう大会はしっかり考え……」
「よーし! ランス殿! 俺は出るぞーー!」
(ええええ! 即決ーー??!)
第百二十七話 完
第百二十七話をお読みいただき、ありがとうございます!
花の過去、そしてスバルとランスの共闘。
引きこもりから一歩踏み出し、眩しい世界へ飛び込もうとするスバルの決意は、高額賞金の懸かった「コロッセオ」で試されることになります。果たして、二人はどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。
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スバルの即決力に驚いた!岩川と花の初対面にハラハラした!と思っていただけましたら、ぜひ下部のブックマーク・評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)・そしてレビューや感想コメントをいただけると、執筆の何よりの励みになります!
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