第百二十一話 ランスの奮闘日記
誰かに背中を押されるように、ランスは未知の扉を開きます。
森を越え、丘を越え、たどり着いたのは熱気あふれる鍛冶の里。
独り立ちした剣士の目に映るのは、これまで見たことのない広大な景色でした。
それぞれの道が、やがて大きな物語へと繋がっていく――。
シャー!
カーテンの開く音。
「失礼します。検温の時間です。あら? どうしたの、布団にくるまって?」
ガバッ
「す、すみません。お願いします」
「どうしたの?! 顔が真っ赤じゃない?! すぐ測るからね! 気分は悪くない?」
「は、はい……」
「脈と血圧が少し高めね。何かあったの?」
「あ、い、いえ、特には……」
「何かあったら、すぐにコールを押してね?」
「ふう……リサさん、グループチャットにこんな写真を……それにしても、楽しそうだな……ん? 花からだ…………」
『俺たちの予想はハズレた。ガッツリビキニだったとはな。
鼻血出してないで、俺がいない間も修行するんだぞ? カッカッカッ!』
「ぐぬぬぬぬー! 出すかーーー! よし、ログインするぞー!」
「ヒアサお兄ちゃん、うるさくて寝れないよぉ」
「そうだよー、うるさいよぉ」
「ご、ごめん、みんな!」
◆
森の奥地。
「ここからが鬼門だな。僕も、スキルコンバインで攻撃パターンをいくつも作ることができた。
ステータス振りも、防御に頼ることなく、他はバランス良く上げている。
そろそろここを突破しなきゃ!」
ガーン! ザシュ! ザシュシュシュ! ザン!
キキャーー!
「よし! 順調だ! ゴブリンキングとの経験値が大きかった! ステータスを大幅に上げることができたぞ! 今回に限っては攻撃力に全て振ったからね! 今までは二発、三発で一体倒せてたのに、一撃で倒せるようになるとこうも楽になるなんて!」
ランスは湧いてくるモンスターを蹴散らしながら進んだ。
森の奥地と坂道の二股にたどり着く。
「森の奥地はすごい雰囲気だ。ここは花と一緒の方が良さそうだね。
なら、予定通り丘へ行こうか!」
ランスは丘を越えていく。
すると、風車のような展望台へ辿り着いた。
「ここが、花の言っていた展望台か。ん? セーブポイントがある。そうか、パーティだから僕にも見えるんだ!」
ランスは展望台から景色を見る。
「前は、常に集団行動だったけど、今回は一人の方が多い……今まで周りに助けられてばかりだったんだなあ。防御力が高いだけじゃ、前に進むのもこんなに大変だなんて。
花は、意地悪な感じで言ってくる時もあるけど、僕が成長できるように仕向けてるのかなあ……花たちと出会って、新しいことばかりだ。こんなに高揚するなんて……はじめてかもしれない……僕の心臓……最近いつもドキドキしてる。いや……ワクワクかなあ」
ふと、横を見ると、丘を下った場所に村が見えた。
「あ! あそこだ! 鍛冶屋の村!
僕の剣、そろそろパワーアップさせなきゃ!」
ランスは勢いよく丘を下る。
その顔はワクワクで満ちていた。
(いつか……いつか、こんなふうに、走れるようになるかなあ!)
ズザザザザー!
ランスは村の門番に声をかける。
「ん? なんだ、人間か………って、ええええ! また人間ーーー?!」
門番は腰を抜かす。
ランスは手を差し出して、門番を起こす。
「ああ、すまない。何か身分を証明できるものは……ああ、これだけあればもう何も心配ない」
「花に言われてきてみました。鍛冶屋の村、とても楽しみです!」
「おお、あのボウズの仲間か。ならほれ、通行書じゃ」
ランスはすんなり村に入れた。
「わあー! すごい雰囲気だ! いろんな工房があるぞー!」
ランスはまず、村の入り口すぐの受付嬢の元へ行き、すぐに村の案内を受ける。
村長にも挨拶を済ませて、フリーとなった。
「よし! 気になる工房、見て回るぞー! ハンマ工房以外のところも、なんだか気になるなあ!」
こうして、ランスの一人時間がはじまった。
武具の強化を目的にしていたランス。
ハンマを紹介してもらったが、ランスはどの工房を選ぶのか。
第百二十一話 完
第百二十一話をお読みいただき、ありがとうございます!
物語は、花たちの日常と並行して、ランスの新たな冒険へと広がりを見せています。自分自身の力で一歩を踏み出し、成長するランスの姿は読んでいて胸が熱くなりますね。
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