第百二十話 鍛冶スキルB
工房で、花は一心不乱に素材と向き合います。
ただの道具としてではなく、誰かの笑顔を想像しながら作り上げる特別な一品。
刻一刻と迫る七月七日に向けて、静かな情熱が熱を帯びていきます。
花が手にするのは、未来を切り開く技術と、誰かを想う心です。
数日後、ハンマ工房。
「プレゼントの件ですが、やはり発想次第だと思うんですよね。今俺にできるのは、アイテムと武具の分解、融合です。
なら、今の時点で手に入るアイテムたちと掛け合わせられるもので、役に立つものを考えたんです」
「ん? お前、今、武具と言ったな? もしかして……」
「はい、鍛冶スキルB、習得しました」
「おい、鍛冶スキルBは『ドロップしたアイテム同士を20回掛け合わせる』だぞ? もうやったのか?」
「はい。転移装置を分解しているときに、ふと思いついたんです。これは、戦闘に役に立つんじゃ無いかなって」
「どういうことだ?」
「俺はアニメ好きです。とあるアニメで、自分の投げた武器の場所に、一瞬で飛ぶという技をつかうキャラがいました。もしかすると、それを応用できるんじゃ無いかなと思いました」
「まさか、作ったのか?」
「ええ、外に出てもらえますか?」
花は、武器ではなく果物ナイフを取り出す。
ハンマ目掛けて投げるが、華麗に避けられる。
ストン!
果物ナイフはハンマ工房の壁に突き刺さる。
その瞬間。
バシュン! パッ!
花は一瞬でハンマ工房の壁に移動した。
「ね? できたでしょう? これができたら、この果物ナイフを投げた先にワープできるから、追い詰められても回避することができる。
なんなら、マーキングしておいて、何かあれば戻ることだってできる」
「おお、よくやった! もしかして、それを作りまくっていたのか?」
「そうです。果物ナイフの他には、オブジェの石とか、粘土とか、ボールとか、色々なもので試した。だから、勝手に20回以上掛け合わせてたんです。もう楽しくて……夢中でした」
「しかも、お前は拡張スキル持ちだから、いくらでもストックできるからな。相性が良すぎるわな! ぶわっはっはっは! で?」
「で?」
「アユに贈るものは、どんなものにするか決めたのか?」
花はアイテムを取り出す。
「はい。原型は作れました。このボールを見ていてください」
シャ!
ボールから、杖が出てくる。
シャ!
次はお酒が出てくる。
シャ!
服が出てくる。
「おお! 見事に収納できとるな! なるほど、収納が課題であったために、そういうアイテムを作ったというわけだな! きっとそのボール、気に入るぞ!」
「いや、これは実験結果に過ぎません。
なので、ここから応用で、自分の望む形のものに、この効果のものを掛け合わせる予定です。
そして、もう一つ。先ほど取り出した杖です」
花はハンマに杖を手渡す。
「師匠、それを折ろうとしてみてください」
「お?! なかなか折れん!」
「そうです。アイテムそのものの強度を上げました。そして」
シャ!
「おう?」
ハンマの手から杖が消えて、手元に戻ってきた。
「この指輪とその杖は、対の転移装置を搭載しているため、もし杖を落としても、指輪をタッチすると杖が戻ってくる仕組みになってます」
「おおお! なかなか考えたな! しかも、サイズ感も違和感なく!」
「これはなかなか面白かったです。特定の大きさにしかできないかと思ったら、ある程度組み合わせるものによって、キットの大きさも変化するなんて。大発見でしたよ。あと、鍛冶スキルにはAI解析がついていて、組み合わせや配合でどんなものになるか、ある程度微調整が必要なときは、その方法を教えてくれるなんて、これも大発見でした」
「ん? 待て、解析は鍛冶スキルじゃねえぞ?
それは『創作解析スキル』だ!
鍛冶スキルを得た後に、分解と融合をしまくったら、稀に覚えるスキルだ!」
「そうだったのか……だから作りたいものを作れるようになったのか。
これから、目標とするものを、自分で作ってみようと思います!
この工房で作っても、構いませんか?」
「ああ! いいぞ! 好きなだけ使え!」
(よし、あと数日で完成させるぞ!)
◆
「アユ! 指名です!」
「はーい!」
(今のうちに、しっかり稼いでおこう。ダイニー大陸への準備をしなくちゃね……それにしても、誕生日がこんなに待ち遠しいなんてね)
第百二十話 完
第百二十話をお読みいただき、ありがとうございます!
花の創意工夫によって、ゲーム内での自由度が格段に広がりましたね。「プレゼントの作成」という目的が、花のものづくりをさらに加速させています。七月七日に向けて、物語も着実に動き出しました。
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