第百十九話 たまげた
見慣れた鍛冶屋の村で、師匠と笑い合い、大切な人の笑顔を思い浮かべて素材に向き合う。
ただの冒険者だった花の手の中に、新しい「誰かのために」という温かな目的が生まれます。
「よし、みんなは報告書はできたな? 出してみてくれ」
統括が皆の報告書を見る。
「…………よし、これでいこう!」
「え? 俺のでいいの?」
「これはやべえ……まるでデスノートだな!」
「本来、こんな書き方したくなかったんだ。けど、離職者を防ぐことや、事実をそのまま載せたらこうなった。タヌキには悪いが、もはや弁明はできんレベルだったよ」
その後、離職の話はなくなり、スタッフは残ってくれた。
タヌキは表に出ている不祥事以外にも、様々な粗相をしており、全て浮き彫りになった。ついには無断でこなくなった。
こうして、沖縄支部に平和が訪れた。
高口は心機一転、会社のために尽くすこととなり、その後成果を上げていく。
◆
「さて、行こうか。今日は鍛冶屋の村に行く。森を抜けるが、どうする?」
「ちゃんと、憂さ晴らししながら行きましょう。いつも抱っこじゃあ悪いもの」
破壊力のある二人。
モンスターが大量発生するエリアに到達した。
「やはりな。この分岐点から湧いて出てくる。今度調査するか」
二人であっさりと森を抜け、丘の展望台に辿り着く。
「今日は、珍しく昼間ね」
「そうだな。この前まではリアルの時間とリンクしていた気がするが、またランダムになったのか」
「あ! もしかしてあそこの村?」
「そうだ。さて、行くか」
丘を下って門番にも顔パス。
「うわーお! ドワーフだらけ! ここが鍛冶屋の村!」
一通り村を案内して、師匠の元へ。
「おう! 花か! って、うおおお! その子がリサか?!」
「はじめまして、わたしはアユと言います。リサちゃんじゃなくてごめんなさいね」
アユはいつもの色仕掛けの挨拶をする。
「なにぃ?! リサとは別の子だと?! なんという美貌のアバターだ!」
「師匠、この子のアバター、俺と同じで顔は変えてませんよ」
「な、なにぃ!? こりゃたまげた!
花、お前、どんな弱み握ってんだ? 悪いことはよせ、この子を解放してあげろ!」
「なんでそうなるんだよ!
別に弱みもねえし、ただ、普通に知り合って仲良くしてもらってるんだ……まあ、違和感ありますよね」
「ちょっとお師匠様?? 花はわたしにとって大切な人なの! そんな自信を無くさせるようなこと言ったら、お仕置きしますからね〜」
「ふん! お仕置きだと? どれ、俺特製のスコープで………な、なんつう魔力………お前ら、異端児にも程があるぞ?!」
「アユは怒らせない方が良い。即PKだ」
「ぶわっはっはっ! いやあ、今日はすげえ日だ! 異端児二人がまさか手を組んでいるとは!
ゲームバランスを揺るがすプレイヤーだな!
花、益々気に入ったぞ!
どれ、アユとやら、お前の武器やアイテムは、俺に見せる気はあるかい?」
「あら、お安くしてくれるのかしら〜?」
「残念だが、俺も異端でな、作るかどうかはわからねえ! だが、花がいるからな!
もし、花が作るというなら、俺も協力しよう!」
アユは、杖を手渡す。
「とりあえず装備はこれだけよ。防具は着けてない。だって、好きな服にしたいから〜」
「お前らは、防具無しでよくやるなあ! 信じられんぞ!
ふん……至って普通の杖だな」
「このサイズなら、この服のアバター内に収納できるみたいなの。大きい杖は持ち歩くのが大変だから〜」
「そうだな。アイテム枠拡張スキルがなきゃ、武器は荷物でしかねえ。だが、魔法使いは、用途に合わせて杖を複数持っておくのもありだぞ?
近接戦闘が無いとは限らんからな!」
「でも、収納ができないわ。それはどうするの?」
「ぶわっはっはっ! そのために、こいつがおるんだ!
どうだ花! アユのために、何かアイデアは無いか?!」
アユは花を上目遣いで見つめる。
「……ちょっとそれやめろ」
「いいじゃない〜、乙女なところを出したって〜、別に無理して悩まなくてもいいわよ? わたしは今のままでも満足してるんだから」
「師匠……こういうのはどうでしょうか」
花はハンマに耳打ちする。
「うおお! そりゃ面白い! じゃあ、それをこの子にプレゼントしてやりな!」
「え? プレゼント?? 花、わたしの誕生日が近いの、どこで聞いたの〜?」
「……え? 誕生日、もうすぐなのか?」
「ええ、7月7日よ」
「なに? もうすぐじゃないか!」
「ぶわっはっは! なら、急いで作らんとなあ!
俺からのアドバイスはメッセージで送っといてやる! 頑張るんだな!」
「え? 本当に何かくれるの?」
「ああ、まあ、楽しみにしてな。それまで鍛冶に集中するから、会えんかもしれん」
「ほんとに?! 嬉しい!! 楽しみにしてるわ!
なら、わたしも仕事に専念しますね〜」
◆
王都へ戻り、いつもの屋上へ。
「じゃあ、7月7日楽しみにしててくれ」
「ええ、本当に楽しみだわ」
花はそれからプレゼント作成に取り掛かるのだった。
果たしてどんなものを作り出すのか?
第百十九話 完
第百十九話をお読みいただき、ありがとうございます!
沖縄支部の騒動が一件落着し、物語は少し落ち着いた日常と、新たな目標(アユの誕生日プレゼント!)へとシフトしました。ハンマ師匠の工房で、花はどんなプレゼントを構想したのでしょうか。続きが楽しみですね!
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