第百十五話 最終日
沖縄での修学旅行も、いよいよ最終日を迎えました。
終わりの時間が近づく中、二人は何気ない時間を惜しむように街を歩きます。
まばゆい光に包まれて、二人の心に少しずつ灯る、言葉にできない温かな感情。
何気ない掛け合いの裏側で、二人の距離がそっと近づいていく、そんなひとときです。
早朝。
花の携帯に着信が入る。
「おはようございます、花峰です。
ええ、いや、特に皆とのスケジュールは……はい。
二人はおそらくまだ寝ていると思います……はい……え? あ、そ、そうなんです。なんだか気にかけていただいていて……はい……実はあの後からメッセージもいただいてまして……はい……そうなんです。今日の午前中も、ですが、あくまで仕事で来ているので、それは皆の同行次第だと伝えておりまし……ええ?! いや、さすがにそれは……いいのですか?……わかりました。
ありがとうございます、所長。
二人には、メッセージで伝えておきます。
失礼します」
(…………………いいのか?………まじか)
花は統括と春馬の二人に、お昼頃に事業所集合するため、それまでフリー。花峰は所長指示でそれまで出てくる。ホテルの下で所定の時間に集合、とだけメッセージを入れておく。
戸井はもちろん、早朝から所長と出かけている。
(さて……メッセージ送るか)
花はアユにメッセージを送った。
『フリーの許可が出た。行けそうか?』
すると、数秒で返信があった。
『ええ、もちろん! どこに行けばいいかしら?』
(早! 待ち構えてたのか? いつから起きてたんだ?)
『とりあえず、迎えに行く。1時間後で』
『そんなに待てないわ〜』
『じゃあ、30分後で。今から向かう』
(準備とか大丈夫なのか?……まさか、本当に待ち構えていたのか……?)
◆
「ハロ〜、おじゃましまーす」
今日はいつもに増して、露出の多い服装だった。
「日焼けとか、気にしないのか?」
「全身に塗ってあるから、対策バッチリよ。
傘もあるわ。
どう? なかなかイケてるでしょう?」
「イケてるなんてもんじゃねえよ、眩しすぎる。直視できんぞ!」
「あら、いつもより素直なコメント! 逆に照れちゃうわ、どうしましょう〜」
いつもの漫才のような掛け合いをしながら、目的地へ向かう。
ガラス細工の工房へ。昨日の別れ際に、アユからの提案だった。
最終日は晴天。
海沿いの景色は最高だった。
運転中の花に、アユが飲み物を飲ませる。
「お口はここかしら?」
「バカ! それは鼻だ! 事故るぞ!?」
「あらいけない! ちゃんとしなきゃ」
「それは頬だ!」
ふざけながら大笑いする。
◆
「ここか。やっぱり雰囲気あるなぁ」
「花は時間が無さそうだから、作るのは無理そうね。お店を見てまわりましょう!」
アユは日傘を差して、終始ご機嫌な様子だ。
花はすでにバテていた。日差しも強く、歩く距離も、お店の数も多い。
「ちょ、待ってくれー、なんでそんなに元気なんだ?」
「どうしてかしらね〜。そ、れ、は、花がいるからで〜す!」
(テンション高!……いかん、マジで熱中症になりそうだ)
その時、アユは花に駆け寄ってきた。
「いいこと思いついた、よし! これならどうかしら?」
「お、おいおい! それは!」
「だぁ〜れも見て無い無い! こうでもしないと、バテちゃうでしょう?」
アユは、花の手を掴み、くっついた。そして、日傘を差して影をつくる。
「ね? 良いでしょう?」
「ほ、本当だ」
「え?!」
アユの顔が少し赤くなる。目をキラキラさせて花を見た。
「影に入るだけで、こんなにも違うなんて、助かったよアユ。ありがとう」
「……………」
アユは目を細めてじっと見つめる。
「ん? なんだ? ちょ、怖いんだが」
ヒョイ。
「あ! 俺のセーフティゾーンが! 頼む! 影を! 傘の中に入らせてくれ!」
密着はしているが、傘をわざと外すアユ。
「防御力も、ちゃーんと鍛えてくださいまし。は、な、ちゃん!」
(わ、ワザとだなー! な、何がいけなかったんだー?!)
そうこうしているうちに、アユの一番のおすすめポイントに到着する。
様々な色のガラス細工がたくさん並んでいる。
光が差し、どれも綺麗に並んでいた。
花は暗がりの部屋を見つける。
「あそこも展示されているのか?」
「お、実は一番のポイントなの。行ってみましょう!」
「これは、すごい。なるほど、夜になると光でこんなふうに見えるのか! 気泡が雰囲気出てる」
お店の人が気を利かせて説明してくれる。
「泡がこうしてガラスに残ってるでしょう? これはねえ、その瞬間の時間を閉じ込める、思い出が消えない。という意味があるんだよ。
お二人にピッタリだねえ。
新婚旅行か何かかな?」
店員は悪気なくニコニコしながら話す。
「あ、僕らは……」
花が答えようとしたその時。
「はい! 実はそうなんです〜。見えますか? ですって、あ、な、た!」
「いいねえ〜、お兄さんなかなかやるねえ! こんなちゅらかーぎーな人つかまえて〜!」
アユは、得意げに花を見る。
花は、方言がわからなかったが、アユの態度から見て、それとなく照れているように見えた。
「今の店員さんの言葉、わからなかったでしょう? 教えてあげましょうか?」
「いや、だいたい勘だが、アユを褒めたんだろ? 可愛いとか、美人って言ったんじゃないか? だから、いじられて普通に照れちゃったよ」
(それって。嬉しかったってことじゃ)
「わ、わかってたのねー! なーんだぁ」
「さすがに新婚だなんて言われて照れたよ、そんな夢見たいなこと、想像もつかんからなあ!」
(ゆ、夢みたいって……え?!)
花は、いつもの謙遜混じりで受け答えしていたが、アユまで照れ出し、モジモジしていた。
「花……聞いてもいい?……」
「ん? どうした? トイレか? 早く行ったほうがいいぞ?」
バシッ!
「痛え! え?」
日傘で花の頭を叩き、今度は頬を膨らましていた。
(全くわからん! 何が起こった?!)
そんな掛け合いをしながら見てまわり、あるところで、二人の足が同時に止まった。
(こ、これは……‼︎)
第百十五話 完
第百十五話をお読みいただき、ありがとうございます!
沖縄の最終日、ガラス工房で店員さんに「新婚さん?」と勘違いされる二人の距離感が、なんとも初々しくて素敵な回でしたね。花は相変わらず自分の殻の中にいますが、アユがどんどんその殻をノックしてくる様子に、読者としてもニヤニヤしてしまいます。
【読者の皆様へお願い】
アユの「ちゅらかーぎー(美しい人)」を褒められた時の反応、可愛かったですね。もし「二人の掛け合いが最高!」「もっとイチャイチャしてほしい!」と思ってくださった方は、ぜひ下部の**評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)**やブックマークをお願いします!皆様の応援が、執筆の何よりの活力です。
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