第百十話 二日目
沖縄出張二日目。二日酔いの統括をフォローしつつ、花は仕事人として淡々と面談をこなしていきます。一方、修学旅行を満喫するリサからは、一通の眩しすぎる画像が届きました。平和なひと時かと思いきや、その写真の片隅には、見過ごせない「違和感」が写り込んでいて……。
事業所へ向かう車の中。
「…………」
統括は飲みすぎたようだ。春馬はピンピンしている。早朝から散歩に出掛けており、不審者を見たとかなんとか、元気よく話している。
「…………俺は、ダメだ、後は任せた……」
「想定内だ。よし、僕らで面談しましょう」
「了解です」
花と春馬は、さも当たり前かのように淡々と面談をこなす。
一通り面談を終えて、ミーティングとなる。
今の現状を踏まえて、統括より全体へ話す。
(よし、もう復活してるみたいだ。良かった)
ミーティングが無事に終わる。
スッ
(ん? 立ち上がってどこ行くんだ?)
「……気持ち悪い……」
花は無言で車の鍵を渡す。
「昼まで寝るといいよ。後は任せて」
フラフラと去っていった。気配を消しているのか、誰も気がついていない。
(話す時はビッとしてたのに、やっぱり昨日やりすぎたんだなあ。まさか、今日の夜も飲み会なんじゃ……)
花の予想は的中し、今日は高口や管理者も含めての飲み会となる。いわゆる上だけの集まりだ。
(ダメだろこの席順は、悪い予感しかしない。高口とタヌキが隣同士じゃないか……)
しばらく談笑していたが、やはり仕事の話となる。
高口が熱く語り出す。タヌキに対して、「もっとこうしてほしい」という要望や、日頃の行動、言動について指摘する。立場上は高口の方が下のため、タヌキも負けじと張り合う。とぼけてはぐらかす、誤魔化す、スルーする。あらゆる回避で高口の言葉は次々とかわされ、ボルテージが上がっていき、ついには揉め出した。
「春馬‼︎」
統括から号令がかかる。
スッ
春馬が高口を抱きしめた。ムキムキのため、抵抗できない。
なんとかその場は収まり、解散した。
(嫌な予感は的中した。しかし、これはどう見てもタヌキが悪い。面談の結果も、辞めそうなスタッフも全てタヌキが原因だ。ほんとに上っ面だけのやつだったな)
その後は、スナックでカラオケをして高口は落ち着いた。
本社組はまた夜の街へ繰り出す。今度は宿泊先周辺だ。
(まだ飲むのか? 流石にヤバいだろ。まあ、こんな機会あんまり無いから仕方ないか)
「そういえば、昨日はどうだったんですか? かなり美人な人でしたね〜。とても会ったばかりとは思えない距離の近さに見えましたよ?」
(鋭いところに気がつくな)
「きっと、距離を詰めるのが得意なんだろう。相手の懐に入る技術はさすがですね」
花は軽くいなした。
飲み歩くのも終わり、ホテルへ帰り解散する。
「ふう。今日もあっという間だったなあ。ん? メッセージが……」
『今日も飲み歩いてる?』
『ああ、今終わった。みんな酔い潰れてたよ』
『暇?』
『今から寝るところだ。暇といえば暇だが』
『明日帰るの?』
『ああ、明日帰る。仕事は今日で終わりだ』
『フライトは午後でしょう? 午前中は空いてる?』
『周りの同行次第だ』
『そうなのね。もし暇だったら教えてちょうだい〜』
『わかった』
アユからのメッセージだった。
(せっかくだ。もし会えるなら会っとくか。ま、ゲームでも会えるんだが……ん? もう一つメッセージ……画像か? このALOのアプリ、そんな添付機能もついてるのか。ま、今時当たり前か……あいつ、何考えてんだ……今日はマリンスポーツか。これは、ランスは鼻血出すぞ)
リサからのメッセージだった。マリンスポーツをしているところの画像が、グループチャットの方に添付されていた。
(なんちゅう眩しさだ。直視できん。ま、気持ち切り替えて楽しめてるなら良かった。
ん? この画像……ここにいる道路沿いにいるこいつ……いや……見なかったことにしよう。隣にスーツのやつ、これがマネージャーか。
はぁ……気持ちはわからんでもないが……てか、リサはこれ気づいてんのか? まあ米粒以下にしか写ってねえから気づかんわな。ん? よく見たらこいつ……なんか鼻のあたり抑えてねえか? ……まあ……そうなるのもわからんでもないが……)
『楽しんでるみたいだな。みんなで行ける旅行なんて、一生にそんなに無い。全力で楽しめ』
『はーい! わたしの水着、どう〜?!』
『いいんじゃないか?』
『おーい、もっと何かないですか〜??』
(これ以上、なんて言やいいんだ。細かく言ったら変態じゃねえか)
『似合ってると思うぞ』
『もっと心を込めて〜!』
『さっさと寝ろ』
『今から抜け出して遊ぶんだ〜、花さんの真似して!』
『冗談抜きで危ないからやめろ。こないだの件を忘れたんか? 行くなら男子を連れて、何人かで行け!』
『え? やっぱり行っていいんだ〜』
『俺は止めたからな。タクより危ない外国人らもいるんだ』
『大丈夫〜、明るいところしか行かないから〜』
リサはノリノリで行き先を暴露し、メッセージは未読になった。
(あいつ、マジで行ったんじゃ……なんか、嫌な予感するなあ。あの写真見る限り、タクは近くにいるんじゃねえか? ……)
◆
リサは言葉巧みに理由をつけて、ホテルから抜け出していた。いつもの秀才トリオだ。
「ちょっとハザマさん?! すぐ戻るからね? 何かあったら大変だよ!」
「今日は全然お土産買えなかったから、たくさん買うんだー!」
「だめだ、聞いちゃいない」
三人の後ろを、車から覗く影が見えた。
修学旅行の思い出。リサは悔いなく過ごすことが出来るのだろうか。
第百十話 完
第百十話をお読みいただき、ありがとうございます!仕事の面談と夜の宴会、そしてリサとの絶妙な(?)メッセージのやり取り。花の忙しい沖縄出張二日目が描かれました。リサの水着姿に鼻の下を伸ばすタク(?)の姿や、夜の街へ繰り出すリサたちの危うさに、花の心配が止まりません。
アユからの「午前中空いてる?」という誘いも気になるところですが、果たして波乱の三日目はどうなるのでしょうか。
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