第百八話 はじめてのリアル
人は見た目か、それとも中身か。
誰しもが一度は抱くその問いに、花は二十年前、残酷な形で答えを突きつけられました。
今夜、ネオンが揺れる沖縄の街で、彼はかつての古傷を抱えたまま一人の女性と向き合います。ゲームの中での絆は、現実という「目に見える壁」を越えることができるのか。
大人の夜が、静かに深まっていきます。
ーー20年前。
「なあ、あの子、結局あの先輩と付き合ったんだって!」
「え?花峰さんに興味があったんじゃなかったの?」
「なんか、急にそっけなくなって、距離を取り出したらしいぞ?花峰さん、何かやらかしたんじゃない?」
「いやいや、それはないでしょう。あの子、全然元気だし、多分、"違う"と思ったんじゃない?けど、あそこまで興味のある素振りされたら、向こうは信じちゃうよね……それが、急に距離をとられるなんてね」
結局、その後すぐに、同じアルバイトの先輩と付き合っていたが、見た目もよく。一人暮らしもしており、大きなバイクにも乗っていた。
(人は中身?……ああ、そうかい。結局俺と決定的に違うのって、目に見えるものじゃねえか。
そんな短期間に、人の中身の何がわかるっていうんだ。見た目が良ければ中身もよく見えてくる。とんだカラクリだ。
もう、やってらんねえな。)
この時は自分も未熟で、心底絶望した。
見た目。それは生まれて変えられないものだからだ。
◆
「花峰!いい感じだったじゃないかー!ハグなんかしてぇ!」
「あ、ありがとうございます所長。勧めてくれた通りの、素敵な方でした。」
「何か約束してなかったか?こっちにいて大丈夫なのか?」
「あ、はい、その、みんなを送り届けたら、連絡をとのことで……」
「おおお!やるなぁ!それは会わにゃいかんなあ!」
「いや、でも、ホテルから那覇までは、距離もあるので、安易に車を使うわけには…」
「構わん!!今回は無理にこっちに呼んだんだ!事故したり変なことに使わなければ、ワシが許す!その代わり、行く前にちゃんとこいつらだけは、ホテルまで送ってやってくれ!」
「ありがとうございます。承知しました。明日は面談予定なので、程々にしておきます。」
「ガッハッハ、まあ、お前が個人的に遊びに行くなんて聞いたことないからなあ!しっかり楽しめ!ガッハッハ」
その後も、一行は二件ほどハシゴし、ホテルまで皆を送り届けた。
部屋まで入るのを確認して、再び車に戻る。
(ん?アユからメッセージだ。あれ、もう仕事終わって、とっくに家で準備できてる?)
花は車を走らせて、アユを迎えに行った。
「あら、車持ってたの?じゃあ、遠慮なく、しつれい〜」
「ああ、ちょっとな。これなら自由に動けるが、車止めてどこか入るか?」
「いいえ、今日はゆっくりぷらぷら話しましょう。さっきまで仕事だったから、もうオフモードだわ。」
「じゃあ、何か買い込んで、行くとするか」
「ふふ、アバター内に収納できないから、持ち歩かないとね〜」
「だな、ところで、言われたまま迎えにきたが、私服に着替えたということは、この辺に住んでんのか?」
「ん〜?き、に、な、る?」
「いや、やっぱりいい。さあ、行こうか。」
「ちょっとぉ〜、あそこよ!あの一番上!」
花は見て驚いた。
「タワー……す、すげえな、さすが、売れっ子は違うわぁ」
「ぷ、売れっ子って、一気に昭和感出さないでよ〜、その歳で〜」
「俺の歳知らんだろう。昭和で悪かったな」
「またまた…え?ほんとなの?なら、その見た目は詐欺よ詐欺!どう見たって、アラフォーには見えないわ!」
「まあ、そういうことにしておこうか。
展望台でいいか?」
「ええ、もちろん、どこでもいいわよ。
それこそ、ど、こ、で、も!」
アユはネオン街を指差す。
「はいはい、じゃあ、そこらでまずは買い込もう。」
「んもう〜、少しは魅了にかかってよね〜、リアルでも無効化するとは、さすがは花ね〜」
「ふ。シャープに拒否するところまでがネタなのはわかってる。こういう会話は誰とでもはできんからな、そうだろう?」
「そりゃあ、相手は選ぶわよ。若くなくても、本気にするオジサンには絶対言わないわ。」
「本気にするオジサンだぞ、俺は。まあ、冗談だが。」
「……いいのに……」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、なにも〜。はぁ……道は長いですなぁ〜」
「アユまで年寄りみたいなこと言うなよ、まだ若いんだから。」
「わたしも、そこまで若くありませ〜ん」
いつものノリを言い合いながら、静かに車は走り出す。
夜はここから、まだまだ続くのだった。
第百八話 完
第百八話をお読みいただき、ありがとうございます!20年前、見た目や持ち物で判断された苦い記憶。それがあるからこそ、花はアユのような眩しい女性に対しても、どこか冷めた「自分へのブレーキ」をかけてしまう……。そんな切ない大人の心理描写が胸に刺さりました。
一方で、高級タワーマンションの最上階に住むアユが、わざわざ花の運転する車で「ぷらぷら話したい」と言う。この特別な空気感、果たして今夜のうちにブレーキは外れるのでしょうか。
【読者の皆様へお願い】
現実の壁を厚く感じる花と、それを軽やかに飛び越えようとするアユ。二人のドライブデート(?)の行き先が気になる方は、ぜひ下部の**評価(⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)**やブックマークをお願いします!皆様の応援が、二人の夜をさらに輝かせます。
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