47.初戦
時刻になり、中央部に行く。ぼくの試合はまだだったが、最初の試合を行う二組が用意したステージの上に立っていた。
向き合った両者のプレイヤーがデバイスを作動させる。これで両者の視界にはキャラクターが表示されたはず。
エクスアーツの大会ならモニターに映し出された共有データを使うことで、リアルタイムで試合を観戦できる。だから第三者視点から見るエクスアーツは演舞に近い。プレイヤーならひとつひとつの動作にどんな意味があるか理解できる。
そのつもりで観ていると変化があった。ステージを境界にして、プレイヤーの姿が消えてキャラクターが肉眼で映った。選手たちは驚いていた。
ステージが丸ごと仮想空間に包まれていた。
「四隅に設置した機材がゲームの世界を立体的に投影しているんです。これが次世代エクスアーツの観戦システムです」
去田さんは自慢げだった。自分の仕事が誇らしいのだろう。
純粋に驚いた。ゲームの世界が切り取られて、現実の世界に持ってこられたような、そんな感覚だった。
ぼくもあそこで戦う。いや踏み込むといったほうが正しい。
行きたい。あそこの世界を見てみたい。
その機会はすぐに来た。二組の試合が終わり、次はぼくの出番だった。
ステージに上がる。ぼくは顔出し防止のマスクをつけて、アイウェアもつけた。これは英雄対策だ。ぼくの正体はバレたくない。二度と関わりを持ちたくない。
初戦の相手は良助ではなく、違う選手だ。ぼくよりも年齢は高く、大学生くらいだろう。
審判役のスタッフの指示に従い、デバイスを操作する。
「形式はBO3を2セット。2本先取の試合を2回勝ったプレイヤーの勝利です。いいですね」
デバイスから了承を確認するボタンが表示される。タッチすると、世界が変わる。
向かい側に立っているプレイヤーの前方にキャラクターが表示され、ぼくと顔合わせする。ぼくには相手のキャラクター、相手にはぼくのキャラクターが表示されている。
相手の姿が消えて、キャラクターだけが残る。
次にステージが変化する。ドームから仮想世界のステージへと塗り替わる。表示されたステージは西洋風の建物が立ち並ぶ路上だった。
カウントダウンが始まる。
おたがいに構える。
深呼吸をする。無理矢理にでも冷静になろうとした。
ゴングが鳴る。
試合が始まった。
いつもと環境が違うが、ゲームの仕様は変わりなかった。むしろプレイしやすい。現実の環境で安全を確保できているなど、他のことに邪魔されず、試合に集中できる。
蹴りを避けて、側面へ足を滑らせる。相手はぼくが仕掛けることを予想して、ノンストップで出の早い攻撃をしてきたので、ぼくは後方に下がり、思ったように距離を詰めて攻撃できなかった。
最終テストに残ったプレイヤーだけあって一筋縄ではいかない。隙を見せれば、見逃してもらえずコンボでライフポイントが削れる。
戦いながら相手をよく観察して、弱いやり方を削除する。有効なやり方を見つけ出し、プレイスタイルを修正する。
ぼくの攻撃が入る。連続して攻撃を加えていき、最後のポーズ技を決める。相手のライフポイントがゼロになり、ぼくがラウンドを先制した。
こんなところで負けられない。ぼくが倒さなければいけない相手は、もっと、もっと強いんだ。
自然とプレイに力が入る。攻撃的なプレイスタイルで相手を圧倒していく。相手は防御よりも回避をよく使い、攻撃を仕掛けてくるが、それよりも先に近づく。攻撃の手を緩めずにドンドン追い詰めていく。
ステージの角に相手がついてしまう。リングタイプの試合の利点を使い、ぼくはポーズ技を使う。両腕で大振りをするラッシュ系のポーズ技。本来なら当たりづらい技だが、リングタイプで空間が区切られた場合はヒットしやすい。千茅さんとの対策で教わった戦略のひとつだった。
相手にラッシュが入る。逃げ道はなくガードポーズしかない。
そこでぼくは掴み技を使い、ダメージを与えた。そこで相手のガードが崩れる。最速で拳を叩きつけてコンボを繋げ、必殺技を使う。
輝くエフェクトに相手は巻き込まれて、ライフポイントがゼロになる。
その後、ぼくは2本先取し、勝利した。
まずは1セット。




