44.部活動
部室のドアを開くとほゆ先輩がジャージ姿で仁王立ちで待っていた。
「ふっふっふっ、よく来たね、晴くん!」
「いつも通りですけど」
ほゆ先輩以外に莉々、広紀も待っていた。なぜかジャージを着ていた。
「晴くん、最近忙しそうだよね。それは例のアルバイトだね?」
次世代エクスアーツに関する情報は伏せてあるけど、運動系XRゲームのテスターとは伝えてあった。
「テストも終盤になって、仕上げの段階に入ったんです。準備なんかで色々と忙しいですね」
「試合だってあるよね? そこで、部長の私から提案です。ゲーム同好会と戦ってみない?」
「先輩と? 別にかまいませんが、一体どうして?」
「少しでも力になりたいからに決まってるでしょう! 晴くんはゲーム同好会のメンバーなんだから、一蓮托生、どこまでも協力するつもりだよ!」
話を聞くに、ほゆ先輩はテスト大会が近づいたことを、ぼくとの雑談で知り、なにかできない考えてくれたようだった。つまり同好会の時間をぼくのために使ってくれるのだ。
ほゆ先輩はやる気満々、莉々はスマートフォンをいじり、広紀はハンカチで汗を拭いていた。
「莉々と広紀はどうして参加してるんだ?」
「ほゆちゃんにお願いされて、いいよー、って返事したから」
「仲間外れにされたら怖いから」
ぼくに対する感情は薄めだった。
「協力って、どんなことをするんですか?」
「練習だよ。私たちを練習相手にして戦う。ゲームはエクスアーツでいいかな、晴くんやってたもんね」
いそいそとほゆ先輩は準備をはじめた。アイウェア型のデバイスをメンバーにくばっていく。よく見ると部室が綺麗になっていた。散らかっていたソフトやゲーム機、書籍などが整理整頓されていた。
「晴くん、動かすからテーブルの端っこ持って」
ぼくは、ほゆ先輩とテーブルを盛り上げて、壁際に運ぶ。部室の中心から物がなくなり、エクスアーツをプレイする時に必要なスペースが確保できた。
「まずは晴くんと莉々ちゃん! 莉々ちゃん頑張ってー!」
「はーい、頑張りまーす」
気だるげにしながらも、莉々は言われた通りにエクスアーツ開始の準備をする。
「莉々はいいのか? ぼくに時間を使うなんて」
「なにそれ。晴って他人に感謝しすぎっていうか、恩だと思いすぎっていうか。友達と遊ぶくらいで気負いする必要ないんじゃない?」
「そう、かもな」
「生きづらそうだね。だから、放っておけないのかもね」
ちらりと目線を逸らして、ほゆ先輩を見る。広紀にエクスアーツのやり方を教えていた。
「さあ、私たちもやろうよ」
莉々は構える。ぼくも続く。
「やったことあるのか?」
「友達と付き合ってね。格闘というかエクササイズみたいで、割と簡単だった」
アイウェアのデバイスから試合開始の合図があがる。
莉々の動きは機敏だった。基礎的な動きはできあがっていて、運動神経の良さを感じる。戦術的な読み合いは知らなさそうだけど、防御のタイミングを理解している。十分強い。油断すれば負けてしまいそうだった。
下手にカウンターは狙わず、ぼくも基本に忠実な動きで対応した。手数で押しを強めながら攻撃を繰り出す。莉々の反撃をガードして、さらに追い詰めていく。
余裕がなくなってきた莉々が形勢を変えようと様々な方法を試すが、その中で悪手があった。ぼくはその隙を狙って、コンボを繋いでライフをゼロにした。
次のラウンドもなんとか勝ち、二本先取で勝利した。
「手も足も出なかった。強いね、晴。ここまで上手かったとは知らなかった」
莉々はアイウェアのデバイスを取る。疲れはみえなかった。
「莉々も強かったよ。なにか運動部だった?」
「中学は女バス。高校はしない。うちの高校、部活マジっぽいからパス。身体動かしたいだけだから性に合わない。ねえ、どうやって攻撃のタイミングをするの? 教えてよ」
「あ、ああ。かまわないよ。攻撃のタイミングは、自分の攻撃速度と相手の防御速度の駆け引きで、もちろん自分が防御する立場なら逆に……」
ぼくは莉々にエクスアーツについて教える。元々できる部分が多いから、応用を含めて説明した。
ほゆ先輩と広紀にも説明をして、ぼくが講師を務めるエクスアーツ教室となった。普段ぼくもしていることで、改めて言語化すると学びがあった。
まさか、こういうことを、ほゆ先輩は狙っていたのか? そんな風に考えながら部活動をした。




