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41.千茅VSルリッチ②

 ルリッチが仕掛ける。地面を力強く蹴りつけ、一気に距離を詰めた。

 千茅さんに向かってラッシュをかけた。至近距離ならば、コマンド技よりもモーション攻撃で手数を増やしたほうが隙が少なく、連続ダメージでライフポイントを削れる。

 動揺も見せず、千茅さんは瞬時にガードポーズを構えた。


 その動きを読んでいたかのように、ルリッチは拳を開き、千茅さんの腕を掴もうとした。投げ技を狙っっているようだ。

 千茅さんはルリッチの手を弾き、防いだ。


「ウガ! ぶっ!?」


 刹那、ルリッチの上体が後方へ仰け反った。千茅さんの攻撃がヒットしていた。投げ技を対処してから、千茅さんは腰をひねり、鞭のように右脚をしならせて、蹴りをかます。足先がルリッチのアゴにヒットし、ダメージが入った。


 キャラクターとプレイヤー本人の視界が同期する。ダメージを食らって仰け反り、上を向いたキャラクターに合わせ、ルリッチの視界も上を向く。

 これは『ダメージモーション処理』と呼ばれる仕様で、プレイヤーの動きがキャラクターに連動するように、ゲーム内のキャラクターの動きにプレイヤーが連動する。


 ダメージモーション中、ルリッチの視界は上を向いており、千茅さんの次の動きが見えなかった。

 さらに、上体が仰け反った状態では、胸部を守るように両腕を揃えるガードのポージングもできない。


 千茅さんが圧倒的優位を持った。それを本人も理解している。

 ルリッチに拳を叩きこみ、連打する。繋げるように、無防備な身体の下部に蹴りを入れる。


「や、やめ——ウギ!」


 状態が戻りかけたルリッチの顔面に、千茅さんの拳が打ち込まれる。ルリッチの視界はダメージエフェクトで暗くなる。再び不利になったルリッチにできる行動の選択肢は少ない。後ろに回避しつつ、ガードを選んだが、間に合わなかった。

 千茅さんはポージングする。クラウチングスタートのように思いっきり腰を低く、両手を地面につける。基本姿勢から、逸脱したポージングであればあるほど、難易度が上がる分、ダメージは大きい。千茅さんは大技を仕掛けた。

 千茅さんの全身にエフェクトがかかる。青色のオーラで身が包まれて、右脚には氷のようなエフェクトが発生した。

 駆け出し、跳んだ。全身が宙に浮いて、右脚を突き出す。

 視界が回復し、光を取り戻したルリッチが最初に見た景色は千茅さんの右脚の足裏だった。


「アガ、アガガガガー!」


 ルリッチの顔面を千茅さんの右脚が貫き、そのまま通り抜ける。千茅さんはルリッチの背後に着地した。

 ルリッチのライフポイントは0になる。選択したキャラクターは激しい音とダメージエフェクトでボロボロになった後、地面にうつ伏せに倒れる。追うように、ルリッチも腰を抜かすように地面についた。


「まずは1ラウンド目。さあ、続き、しようか」


 千茅さんは息ひとつあがっていなかった。試合開始の定位置に立って、ルリッチの準備を待っていた。


「ウガ、ガガガ……」

「どうしたの? さっさと立ち上がったら? 休憩のつまりなら姑息だね。別にどれだけ休んでもかまわないけど。っていうか、そのままずっと休んでいたら?」

「な、舐めんな! やってやる!」


 ルリッチが立ち上がる。定位置に立って、構えをした。何の変哲もないデフォルトのファイティングポーズだった。

 2ラウンド目が始まると千茅さんの速攻で始まった。いきなり頭部に蹴りをヒットさせてから、続けざまに後ろ回し蹴りで上部にヒットさせた。ルリッチのライフが削れた。


「くっ……」


 モーション攻撃によるダメージエフェクトはほとんどなくない。ルリッチはすぐ回復した視界で千茅さんを捉え、襲いかかる。身体で覆いかぶさるように前へ飛び出す。ルリッチは両腕で千茅さんの肩を掴んだ。両腕掴みの投げ技は強制発動。千茅さんが投げられ、地面に叩きつけられる。

 千茅さんはすかさず起き上がる。ルリッチが蹴りをいれてきたが、軽く後ろに跳んで回避した。千茅さんは動じずに構えて、ルリッチと向き合う。


「ガハハ! 一発いれたぞ!」


 千茅さんは前方へステップを踏んで、距離を詰めた。ルリッチはガードポーズをとったが、千茅さんはルリッチの両肩を掴んだ。


「お返し」


 肩を掴んだことで自動的に投げ技に移行する。千茅さんはルリッチの襟首を掴んで、足を払い、身体を密着させて、投げ飛ばした。


「ウガ!」


 ルリッチは起き上がって、ガードポーズをとる。するともう一度、千茅さんは両肩を掴んできた。


「ウガ!?」

「もう一回ね」


 そのまま、また投げ技が発動して、ルリッチは投げ飛ばされた。

 その後も千茅さんのペースは崩れずに、2ラウンド目も千茅さんが取り、2本先取で千茅さんの勝利で終わった。

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