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25.戦う日常

 ルリッチと戦った日から、本格的にゲームテスターとして参加することになった。

 ゲームは平均週に2回参加する。指定された時刻と場所に向かい、相手プレイヤーと会う。

 ぼく以外のテスターと何人も会った。


「動きがトロい! 年寄りに負けてどうする高校生!」


 定年退職したてのおじいさんに投げ飛ばされたり、


「試合終わったし写真一緒に撮るべ!」


 試合よりも観光が目的のバイカーのお兄さんに町を紹介したり、


「最近お腹が出てサイズが……」


 コスプレが趣味のお姉さんと最近見たアニメの話をしたりした。

 テスターに選ばれたプレイヤーは関連性のない、人柄も違う人たちだった。

 テスト中のゲームタイトルは老若男女問わず、誰とでも遊べるゲームにしたいというコンセプトが伝わってきた。だから、あえてバラバラにしているんだ。


 肝心のゲーム部分もプレイするたびに学びがあった。現行のエクスアーツと違う、フィジカルとゲームがリンクする感覚。戦術が上手くいって、自分とゲームがピッタリとフィットした瞬間は感動を覚えた。

 ちゃんと仕事もする。たまに挙動がおかしくなるときは運営にメッセージを出して報告する。遊んでばかりだがテスターの本業はこっちだ。


 対戦スケジュールは大体は土日に組んでもらった。学業とテスター、忙しくないといえばウソなるけど苦労よりも楽しさが勝っていた。

 学校生活に変わりはない。授業が受けて、放課後にほゆ先輩と遊ぶ。

 今日遊んだゲームは落ちものパズルゲームで対戦した。ぼくは携帯ゲーム機の画面に表示されるブロックをタイミングを合わせて消していく。


「強くなったね晴くん!」

「もう百回は対戦してますからね。似たゲームで練習しました。先輩に勝つために頑張らせてもらいます!」


 ブロックを並びていき、溜めて溜めて一気に消す。ブロックを消した分だけ相手を邪魔するブロックを与えられる。ぼくが送った邪魔なブロックが、ほゆ先輩の画面に現れる。ほゆ先輩は難な対処して邪魔なブロックを消す。逆にほゆ先輩から邪魔なブロックを送られてくる。負けじと対処していく。


 状況はぼくの劣勢で続いていく。画面はブロックで一杯になっていった。

 ぼくは出てくるブロックを瞬時に判断して落とす。一秒もかからない速度でブロックを落として消していく。速度を落とさずブロックを積み上げてから一気に消していく。ほゆ先輩をブロックで邪魔し続けていく。

 数分間の攻防戦の末、片方の画面にブロックが埋め尽くされた。

 ほゆ先輩が携帯ゲーム機を机に置く。


「負けちゃった」


 ぼくはほゆ先輩に初めて勝った。


「つ、疲れた」


 終わってやっと身体の疲労に気づいた。集中を途切れずに無心で操作して、脳をフル回転させていた。


「ついに晴くんに秘密のご褒美を分け与える日がきたね」

「ご褒美?」


 ほゆ先輩は椅子から立って、ぼくの隣まで近寄ってきた。


「ほ、ほゆ先輩」

「晴くん……」


 距離を詰められて、ぼくの横を通り越した。部屋の奥まったスペースにかがんで、箱を取り出してきた。

 ほゆ先輩は机に箱を置いて、フタを開いた。

 箱の中はお菓子が入っていた。贈呈用の高そうなお菓子だった。


「先生には内緒だよ。ひとつ取っていいよ」

「コレが秘密のご褒美ですか?」

「ゲームでランクが上がったり、10連勝したり良いことがあったら、こっそり食べてたんだ。後輩が初めてゲームに勝った記念日にお菓子を贈呈します」

「ありがとうございます!」

「まあ、エクスアーツのときにあげても良かったんだけどね。手加減された勝利だったから」

「バレてました?」

「悔しいから練習もしてたよ。三日坊主だったけど。そうだ、晴くん、エクスアーツのアカウントを見た?」

「見ましたよ。大会ですよね」


 今度、エクスアーツの大会が行われる。人気プレイヤーが集まり、大きな会場で戦う。会場に観客を入れたり、ライブビューイングもある。

 近々対戦カードが発表されてSNSはみんな出場するプレイヤーを予想していて、すでに盛り上がりをみせていた。


「ゲームは三日坊主だったけど、配信を見るのは好きになってきたんだ。一緒に見ようよ。晴くんの注目してる人とかいる?」

「どうでしょう、ぼくにはわからないです」


 ほゆ先輩がスマートフォンで動画を見て、ぼくも画面を覗く。

 頭の中で思い浮かぶ人はふたり。蝶子さんとカヤさんだった。ふたりともランカーで実力もある。次世代タイトルのテスターに選ばれているし、公式からも信頼されている。

 しかし名前を出して口が滑ってでもしたら良くない。特にカヤさんはお世話になっているから迷惑をかけたくない。むしろお礼のひとつでもしなければ。

 そういえば……。


「ほゆ先輩、美味しいお菓子の店って知ってますか?」

「普通の人よりは知ってるかな。お母さんが甘いもの好きで、近所のお店は一緒に回ったし、お取り寄せを家族みんなで食べたりしてるから」


 ぼくはほゆ先輩を見る。 


「じつは、ほゆ先輩に頼みたいことがあります」

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