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19.練習試合

 カヤさんの説明に従って網膜に映るタイトル画面から操作して対戦モードへ移った。


 カヤさんは背を向けて、ホールの片側へ行く。ぼくも反対側に移動する。距離を置いたところで顔を見合う。

 デバイスから音が鳴る。カヤさんからゲームの招待メッセージが届く。受け取り、ゲームの参加を承認する。

 カヤさんが指を鳴らす。


「おお……!?」


 視界が変わった。青空の下、高層ビルの屋上に立っていた。


「ステージは高層ビル屋上。基本は仮想空間のステージで戦います。投影せず現実の空間ですることもできます。現実の体育館に戻しますか?」

「い、いえ。いけます」


 目を凝らして地面をよく見てみると体育館の床が見えた。他の競技スポーツのコートを示すテープがうっすらとわかる。本当に高層ビルに移動したわけではない。あくまで映像だ。

 わかっているにも関わらず、足がすくみ、風が吹いているような錯覚をおぼえた。


「次はキャラクターについて説明します。これは見たほうが早いですね。私の手前を見てください」


 言われた通りしていると、カヤさんの前で、光る粒子が舞いはじめた。粒子が凝縮され、一体のキャラクターが現れた。

 立っていたのはエクスアーツに出てきそうなバトルスーツだった。青を基調として、差し色で白のラインが入っていて、スポーティな印象がある。

 キャラクターはカヤさんが手を振ったり、首を動かすと追従した。


「これが私のキャラクターです。現行のエクスアーツ同様、キャラクターは相手のものだけ見えます。相手のキャラクターに攻撃をくわえ、ライフポイントを0にしたほうが勝利です」

「ぼくのキャラクターはどんなヤツですか?」

「オプションの項目から確認できます」


 仮想モニターからキャラクターと書かれた項目をタッチする。ぼくのキャラクターはマネキンが空手着を着たような姿だった。


「……格好よくない」

「テスト段階でいくつかカスタムできるので、時間が空いてるときにでも変えてください」

「今すぐ変えます!」


 その後も、カヤさんにいくつか設定についてレクチャーしてもらった。


「天川さん、次は実際に試合をおこないます。準備はいいですか?」

「いつでもオッケーです!」

「1セット、ラウンド2本先取です。制限時間は60秒。現行と同様のルールです」


 カヤさんは構えをする。ぼくも構えをつくる。

 現行のエクスアーツでは、最初の構えが重要な要因のひとつだ。得意の技を出しやすい構え、先制攻撃しやすい構え、防御がしやすい構え。戦いのスタイルが決まる。

 カウントダウンがはじまる。

 ぼくは目の前にいるカヤさんのキャラクターを見る。

 どんな手でくるかはわからない。まずは様子見か。

 試合開始のゴング音が鳴った。

 速攻はかけなかった。ぼくは様子を見ながら、いつでもガードできるスタイルを選んだ。


「バレバレですよ」

「はい?」


 次の瞬間、カヤさんの蹴りがぼくの頭をぶち抜いた。


「ぶっ!?」


 思わず後ろへ倒れた。


「リアルスリップは1秒ごとに250ダメージです。起き上がって2秒間は無敵時間です」

「は、はい!」


 すぐ立ち上がり、構える。

 ガードできるようにしていたのに間に合わなかった。

 いや、違う。攻撃がしてもガードで防げると思って余裕ぶっていた。ぼくは油断していたんだ。その隙を狙われた。

 カヤさんのキャラクターが距離を詰めてきた。横腹に向かって蹴りを入れようとする。ぼくがガードポーズを取ったためダメージを受けない。カヤさんは一歩下がり、様子を見ている。

 ガードポーズを解いて、ぼくは攻めに出た。まず一発、ダメージを入れたい。パンチで通常攻撃をくわえようとした。するとカヤさんは身体をそらして回避してから、すかさずコマンド技を入れてきた。

 また顔面直撃の蹴り技。今度は通常攻撃ではなくコマンド技だからダメージも大きい。


「まだまだいきますよ」

「は、はい!」


 ぼくは回避を意識する。

 エクスアーツと仮想戦闘領域の最も大きな違いは回避だった。エクスアーツの行動範囲は前後合わせて2メートルだったが、今は視界に広がる範囲がすべてステージだった。

 ゆえに身を守る(すべ)として立ち回りの重要性が上がっている。背後を取られる可能性もあるし、戦略の幅自体が大きく広がった。


 自由度が増した分、ゲームとしてはピーキーだと思った。フィジカルへの依存性も高まり、自分の身体というコントローラーを扱えるようにならなくてはならない。

 格闘技やスポーツと同じ領域に足を踏み出していると思うし、それとはまた違う、本能的な……喧嘩やストリートファイトにも似ているのではないだろうか。


 カヤさんが先に攻撃してくる。リーチの長い蹴りのモーション攻撃を連発し、ぼくは何歩か退く。

 とにかく、とにかく一発でも当てようと拳を前へ突き出す。

 結果、あっけなく防御され、回避され、最後はカウンターで顔面に拳が入り、ダメージを食らった。

 ぼくはまともなダメージを与えられず、カヤさんがラウンドの2本先取されて、試合は終わった。

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