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18.体育館

 ぼくは市内の体育館へやってきた。

 スマートフォンのメッセージを確認する。場所と時刻、どちらも問題なし。

 体育館へ入り、スポーツ競技室へ向かう。廊下を歩いて、ドアを横へスライドする。

 競技室にはすでに人がいた。ぼくは背筋を伸ばす。


「お、おはようございます!」

「おはようございます。早いですね」


 カヤさんがいた。服装はいつも通りのスポーツウェアだったが、パーカーもキャップもかぶっていない。マスクはつけていた。長い髪は後ろにまとめていた。


「いろいろご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします!」


 今日からテスターとして正式に次世代エクスアーツのゲームに参加する。カヤさんはぼくに次世代エクスアーツについてレクチャーするためにわざわざ日程を決めて来てくれた。

 良いところ見せたいな。

 ぼくは背負っていたリュックを壁際に置いて、中から飲料水を取り出して飲む。


「あの、天川さん。まさか走ってきたんですか?」

「は、はい。まずいですか?」

「かまいませんけど、ご実家から体育館まで10キロはあると思いますが」

「いつもそのぐらいは走ってるので大丈夫です!」

「……すごいですね」


 そういえば、とぼくはふと思ったことがあった。


「あのカヤさん。前から思ってたんですけど」

「なんでしょうか」

「どうしてぼくの実家の住所知ってたんですか?」


 蝶子と戦った翌日、カヤさんは家の前でぼくを待っていた。連絡先は交換したが住所は教えていなかった。なぜ住所を知ってたのだろう。


「…………」

「カヤさん?」

「ヒュ……」

「え?」

「ヒュ、ヒュー、ヒュッヒュー……」

「あ、あの」

「ヒュー、ヒュッ、ヒュルルルー」


 下手な口笛でごまかそうとしてる!?

 え、なんかマズいことを聞いてしまった? まさかハッキングとかそういう犯罪的な方法とか使える人なんだろうか!?

 いや、でもカヤさんが信用できる人物だとこれまでの行動が証明している。疑うなんてもってのほかだ。多分、住所を調べてくれたんだろう。


「カ、カヤさん! そういえばデバイスちゃんと届きましたよ! 今からつけますね!」

「ヒュル~」


 リュックの中からデバイスを取り出した。

 先日、家に届いたばかりテスター用のデバイスだ。新品で黒を基調としたカラーリングに、金色のラインが入っている。腕に装着するとブレスレットにしか見えない。

 ぼくとカヤさんはホールの中心に立つ。


「まず、腕に装着したデバイスについてです」


 カヤさんが腕をあげて、ブレスレットをぼくに見せる。


「これはライトー社が開発した次世代XRデバイスです。ゴーグルやアイウェア型と異なり、腕につけるブレスレット型です」


 自分の手首についたデバイスを見ながら、カヤさんの説明を聞く。


「マイクと超指向性スピーカー、そして新作ゲームである『仮想戦闘領域』がインストールされています。マイクで音声操作し、スピーカーからはゲーム内の音声や効果音が流れてきます。まずは起動させてみましょう。天川さんの声で、ゲームスタートと言ってください」

「わかりました。ゲ、ゲームスタート……」


 音声操作に反応し、デバイスが起動する。ブレスレットの金色のラインが光り出し、視界に様々なUIが表示された。

 カヤさんは何もない空中に触れている。真似して視界に表示されたUIに触れてみると、操作できた。


「起動すると視界に映った仮想モニターをタッチしたり、スワイプできます。ではゲームも始めましょう」


 ぼくは唯一選択できるゲームタイトルをタッチした。タイトル名は『仮想戦闘領域』となっていた。

 ゲーム画面が空中で浮かび上がる。

 ついに始まる。

 次世代エクスアーツが。

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