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17.正式参加

「ありがとうございました」


 帰り際、ぼくはカヤさんにお礼を言った。

 ぼくはテスターになることに決めた。エクスアーツが好きだから、もっとエクスアーツについて知りたくなってしまったから、ぼくはゲームに参加する。

 もっと言えばカヤさんや蝶子さんに憧れていた。プロの動きをみて、自分は彼女たちのように身体を動かせるようになりたいと夢に思ってしまったから。


「どういたしまして。といっても、大したことはしてませんけど」

「そ、そんなことありません!」


 もしカヤさんがおらず、いきなり蝶子さんの強引な方法で運営からのテスターの話だけを聞かされていたら、ぼくは信用できずにテスターを受けていない。カヤさんが不安要素を取り払ってくれたからぼくはゲームの正体を理解できた。


「ゲームに参加できてうれしいです。まあ、まずは両親を説得しなきゃいけませんけど」

「ご両親は、認めてくれると思いますか?」

「はは、学生でもできるアルバイトってことで。ゲームのテスターも珍しくありませんせんし。あ、もちろん去田さんに内緒と言われたことは言いません!」

「社員でもないし、まだ契約を結んだわけでもないですから別にバラしても責任はないと思いますけどね」

「え、そ、そんなもんですか?」

「あくまで信用の話です。バラすメリットはないので、言わないと思いますけど」

「な、なるほど」


 喫茶店では話を聞くことで精一杯で頭が回ってなかったみたいだ。あそこまで話してくれた理由は、賭けだったかもしれない。もしくはぼくがバラさないと思ってくれたからか。


「天川さんがテスターになったら、いろいろやることがあります。まずはゲームのルールを理解してもらわないといけません。日程を決ま内といけませんね」

「連絡ください。いつでも大丈夫です」


 喫茶店から駅前まで戻ってきた。


「私、こっちなので」

「はい! 今日は本当にありがとうございました!」

「もう、さっきも聞きました。何回目ですか」

「す、すみません」

「また今度」


 カヤさんは一言いって去っていった。

 ぼくはひとり、家へ帰る。


「次世代エクスアーツ……」


 そのプレイヤーになる。それが今からワクワクして止まらなかった。


 夕食後、ぼくは両親を説得した。

 ここが最初で、一番の難所かもしれない。

 ぼくがゲームテスターのアルバイトをしたいと直接言うと両親に根掘り葉掘り質問攻めにあったが、どうにか答えきった。


「危なくないの?」


 母はぼくを心配してくれた。中学三年生の事件を考えたら当然のことだった。


「だ、大丈夫! 信用できる知り合いの人もいるから!」


 ウソではない。カヤさんと去田さんは信用できる。頼りにできる人たちが二人もいるだから、普通のアルバイトより安心できる。問題児の蝶子さんもいるけど。


「晴がやりたいならやればいい。必要なことがあればいいし、不安なことがあれば話してくれればいい。とりあえずやってみればいいんじゃないか」

「なにかったらすぐに言いなさい。わかった?」

「わ、わかった! ありがとう!」


 快諾ではなかったが、なんとかアルバイトの話は通った。

 これでテスターができる! 内心、ぼくは高ぶっていた。

 部屋に戻ってカヤさんに急いでメッセージを送った。


「よかったですね」


 すぐに返事がきた。


「はい!」

「日程を決めましょう。都合のいい日を教えてください」

「わかりました!」


 メッセージを送り合い、着々と話が進んでいく。


「あとはデバイスですね。近日中に家に届くと思います。私と会う前に開封しておいてかまいません。わからないことがあれば、私にメッセージ送ってください」

「ありがとうございます!」


 喫茶店でも目にした次世代XRデバイスが自分のところへ来る。想像するだけでワクワクしてくる。


「大体はこのくらいですね。では、また」

「はい! またよろしくお願いします!」


 メッセージが終わり、ベッドに横になる。


「よしっ!」


 なにか一歩前へ前進した気がした。大人になったような、自分で自分の道を選べたような、広い世界を見れたような、そんな達成感で胸がいっぱいになる。


「ちゃんと、成長できてるよな」


 昔の自分よりも、強くなれたかな。

 額の傷を撫でながら、そう思った。

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