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14.待ち合わせ

 電車を降り、駅構内のモニュメントまで歩いた。地元の待ち合わせ場所として最もポピュラーで、例にもれず、ぼくもそこで、ある人と会う約束をしている。


 遠目からでも幾何学的なモニュメントの位置がわかった。待ち合わせしている相手を探すと、すぐ見つかった。お互いの目と目が合った。


「カヤさん、すみません! 遅れました!」

「いえ、30分前なので気にしないでください」


 カヤさんが先に待っていた。私服姿で、頭にキャップ帽をかぶり、口にはマスクをつけている。素顔はほとんど見えない。何となく、身バレ対策なのかもしれないと思った。

 蝶子さんの一件から、エクスアーツについて色々調べていくうちに、カヤさんのことにも少し詳しくなった。

 カヤさんはエクスアーツのプロプレイヤーだった。スポンサーがついており、大会に出場して優勝経験もある。顔出しNGで活動し、生放送配信などにも出演していた。

 それゆえに、実際にリアルでも身バレ防止に徹底しているんだろう。


「あの、今日はよろしくお願いします」

「……はい」


 カヤさんは小さい声でこたえて、顔をうつむかせる。

 嫌われてるわけ、ではないと思いたい……。


「……天川さん、これから運営チームの人に会いに行きます。あの夜は会社との契約上、多く説明はできませんでしたが、今日は大抵のことが聞けるはずです」

「あの謎のゲームについて、ですよね? メッセージだと次世代XRタイトルとだけ書かれていました。あとは蝶子さんのスカウト枠とかも」

「問題はそこです。あのバカが天川さんを誘ったせいで状況がややこしくなってるんです。まだ開発段階で危険かもしれないゲームに天川さんを参加させるなんて……許せません」


 カヤさんは蝶子さんがぼくをゲームに参加させたことに怒っていた。実際見ず知らずの人間に説明もなしに、あのリアルすぎるゲームをやらせる行為は中々に非情だ。

 カヤさんはぼくが巻き込まれたことを知ると、運営と話し合う場を短いあいだにセッティングしてくれた。頭に信頼の二文字が浮かんだ。プロのプレイヤーとして活動している人間の凄みを感じ取れた。しっかりしないといけない。


「ぼく、頑張ります!」


 カヤさんの尽力を無駄にしない。蝶子さんの件にケジメをつけよう。自然と身体が力んだ。


「力になれたなら、良かった、です……本当に。行きましょうか」

「はい!」


 ぼくとカヤさんは駅前から離れて移動する。ふたりで一度駅前で集まった理由は合流してから運営の方と会うことにしたから。運営と会う場所はは商業施設内の喫茶店だ。ここからそう遠くない。歩いて向かう。


「…………」


 向かっている最中、会話がなかった。そういえば、ぼくとカヤさんの関係性をどう言い表せばいいだろうか。偶然にもエクスアーツで繋がった関係ではあるが、友達といえるほど仲を深めているわけではない。近い関係だと、先輩後輩だろうか。

 そもそもカヤさんは何歳なんだろう。同世代の女子なのかな、と予想はしている。もしかしたら年下かもしれない。だとしたら、たわいもない会話をするにしても、共通の話題がない。

 黙ったまま歩いていって時間が過ぎていく。どんどん耐えられなくなってきた。頭の回転させて、ぼくは口を開こうとした。


「天川さん」


 すると先にカヤさんが喋ってくれた。


「はい! なんでしょう?」


 カヤさんは言い淀んでいた。


「えっと、最近、どうですか……」

「……っ!」


 めちゃくちゃ返答に困る質問がきた!

 どうやら気まずいと思っていたのはぼくだけじゃなかった。というか、気を使わせてしまった。そのせいでカヤさんに変な質問を言わせてしまった。カヤさんのほうを見るとうつむいていた。どことなく恥ずかしそうにしているように感じる。

 ここでぼくが適当に返答してはいけない。会話は途切れるなんてもってのほか。

 カヤさんから貰ったパス、受け止める! ぼくはカヤさんと顔を向き合わせた。


「いろいろありましたけど、ぼく、めっちゃ楽しいです!」

「そ、そうですか……?」

「はい! というのも全部カヤさんのおかげです! カヤさんがぼくを守ってくれたから大変な状況でも安心して、ここまで来れてるんです。ひとりじゃダメでした。あの、いつかお礼をさせてください! 好きな食べ物とかありますか!?」

「え、え、えっと……アップルパイ……?」

「美味しいもの調べておきます! ほかにぼくにしてほしいことがあったらなんでも言ってください! ぼく、頑張ります!」

「わ、わかりました。わかりましたから落ち着いて……。も、もう行きますよ!」


 カヤさんは早歩きで先へ行ってしまった。まずい、距離が離れると会話が途切れる。ぼくも早歩きで横に並ぶ。


「カヤさんはどんなトレーニングしてますか!? ぼくはランニングがメインでほかはエクスアーツで身体鍛えてます」

「え! あの、その……も、もういいですからー!」


 ふたりで早歩きしながら、ぼくたちは喫茶店へ行った。

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