13.ゲーム同好会の部室
「晴くん、なにか良いことあった?」
携帯ゲーム機で対戦中、ほゆ先輩の一言で不意をつかれた。先輩が操作するロボットのブレード兵器の連続斬りがぼくのロボットに直撃して無残に破壊された。ロボットは爆発四散したあと、画面にLOSEの文字が表示された。
「ぼくそんな風に見えます?」
「うん! 今日の晴くんはずっとそわそわしてて楽しそうだもん! 予定あるんだね?」
「そこまで見抜かれると恥ずかしすぎますね」
実際、顔が熱くなってきた。わかりやすいのかな、ぼく。
放課後のゲーム同好会の部室。いつもならほゆ先輩と昔のゲームで遊んで過ごすが、めずらしく予定が入っていた。
ぼくはこのあとカヤさんと会う。蝶子に巻き込まれた謎のゲームについて進展という。
数日前、ぼくは謎のゲームに巻き込まれた。最新式XRデバイスを装着しておこなわれた、現実と仮想の境がまるでない、エクスアーツの進化形らしきゲームだった。ぼくは蝶子さんに半ば強制的にゲームへ参加させられて無理矢理対戦するはめになった。
対戦内容は圧倒的な実力差だった。エクスアーツのランカーである蝶子さんに一方的にやられた。途中でチカさんに助けてくれたおかげでゲームは中断された。実際に武力を振るわれているような疑似体験だった。もしゲームを続けていたらぼくは失神していたと思う。それほどリアルな体験だった。
謎のゲームは終わった、はずだった。
数日後、エクスアーツ運営チームからメールが届いた。
次世代XRタイトルのテスターへの参加資格。
これが何を意味するのか理解するため、カヤさんと会う。
「予定の時間まで時間があります。やりましょう、先輩。あと少しでコツが掴めそうなんで」
「ほほおう? やる気だねえ。なら、いざ勝負!」
再戦しようと携帯ゲーム機を操作していると部室のドアが開いた。
「やほやほー。ほゆちゃん元気ー?」
女子生徒が入ってくるとほゆ先輩が立ち上がった。
「莉々! わーい! 来てくれたんだ!」
ほゆ先輩は莉々(りり)に抱きついた。
我がゲーム同好会の部員である莉々が来た。部室に来る日は気まぐれな半分幽霊部員で、ぼくと同学年の一年生。部室で会うのはこれで4度目だった。
莉々はパイプ椅子に座った。
「晴もひさしぶり。晴がいると部室狭いなー」
「いつもいるけどね。莉々がいるから狭い」
するとドアからもうひとりきた。
「広紀もきてる!」
「ど、どうも先輩……。失礼します……。晴も莉々も、どうも」
ぼくたちと同学年なのに広紀は頭を低くして挨拶する。広紀は半分幽霊部員その2だ。
「すごい! ゲーム同好会全員集合だ!」
ほゆ先輩が目を輝かせる。ほゆ先輩がゲーム同好会存続のために頑張って集めた部員。莉々、広紀、そしてぼくだ。入部理由はそれぞれ違う。莉々はたしか「うちの高校、部活推奨と言いつつ空気的に強制じゃん? だから一番ゆるーいところを選んだ」と言っていて、広紀は「卓球部に中学時代に付き合っていた彼女がいて……またサークルクラッシャーしそうで逃げてきた」と言っていた。
正直、そこまで仲良しといえる仲ではない。会話も少ない。しかしぼくたちはひとつの共通点がある。
「ほゆちゃん、紅茶とクッキー持ってきたんだー。一緒に食べよ」
「先輩これ……前言ってたゲームソフト……見つけたからどうぞ……」
「ほゆ先輩っ、もう一戦だけしましょうっ」
それは全員ほゆ先輩が好きなことだ。
「も、もてもてだな~。えへへ~」
ほゆ先輩はまんざらでもない、ふにゃふにゃの笑顔になる。
そのあとのゲーム対戦は莉々と広紀の差し入れでパワーアップしたほゆ先輩によって連敗した。
制服の上着に入っていたスマートフォンが震える。そろそろ出る時間だ。
「すみません先輩。今日は先に」
「うん! いってらっしゃい~!」
ほゆ先輩が手を振ってぼくを見送ってくれた。
「よくわかんないけど、いってらっしゃい」
「い、いってらっしゃい……」
莉々と広紀も手を振ってくれた。
三人に見送られて、部室を出る。
ゲーム同好会は他の部活とは違う空気がある。不良とも陰気とも違う、たまたま集まっただけの学生たち。ぼくはこういうところがずっと欲しかった気がした。
ぼくはカヤさんと待ち合わせしている場所へ向かった。




