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水晶の令嬢 〜転生者から持ち込まれた悪役令嬢という概念に翻弄された話〜  作者: ゆずさくら


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人質解放作戦の裏

 人質解放が行われ、その見返りにゴブリンの協力者に(きん)を渡した。

 サクラの部隊は人質と共に、ルコール地方を離脱して、城下町のクランクへと南下した。

 サクラはその足でそのまま城へ向かい、ユウトに報告を行った。

 解放された人質の数を聞くと、倍に足りない。

「また人数が少ないぞ!」

 サクラとの会話はヒートアップしていた。

「なぜ人数を確認しない?」

 サクラはジェスチャーを交え、懸命に行ったことをアピールする。

「ゴブリン側が引き渡すのに任せるしかなく、渡す金の量は……」

「ゴブリン側が数え間違いをしないように、解放された人質の数に応じて金の量を調整しろ。都度約束の量を渡すからだ」

「約束の量を渡さなかった時、どうなるか」

 ユウトとサクラの言い争うようすを見かねて、隊長が出てきた。

「今回は新兵が死んでいます」

「……」

 ユウトは自分が内情を探るために潜り込ませた兵が殺されたことを知った。

「新兵が殺されたと同時に金の量を確認されています。おそらくゴブリン側の警告だったのではと」

 ユウトは『新兵』が金の量を確認したはずだと思っていたが、隊長の言う内容を否定しなかった。

 その代わりに、別のことを訊こうと考えた。

「サクラ、少し外してくれ。隊長と話がある」

「……指揮の問題は私が受けます」

「いいから、一度はずせ」

 睨むようにサクラを見ると、グラスを指で押し上げた。

 サクラは反論せず静かに部屋を出ていった。

「隊長は金の量を確認したか?」

「大まかには」

「言ってみろ」

 ユウトは腕を組んで睨みつけている。

「大まかな数です。正確なところは」

「それでいい、言ってみろ」

「20」

「にじゅう!?」

 ユウトは隊長にサクラを連れてこいと命じた。

 隊長は慌てて部屋を出ていった。

 サクラが入ってくると、ユウトは隊長を下がらせた。

「サクラ、言いたいことはわかるな」

「なんのことでしょう」

「隊長が偶然、運んでいる途中の金の数を覚えていた」

 覚悟を決めたような表情をして、サクラは膝をついて頭を下げた。

「すみません」

「どうして金の量が足りていないのだ。私が出したのは50、当然運んでいる数も、それだけなければならないんだぞ。20では半分にも満たない」

 ユウトは黙っているサクラに立てと命じる。

「謝罪ではなく、説明が必要だ。何があって金を失った?」

「持っていく前の問題です」

 両手で箱を上げ下げするような仕草をして、そう言った。

「持っていく前だと!? サクラ、お前は何を言っている? 城からシロガネ家までの我が家臣が金を抜いたと言うのか?」

「違います。シロガネ家にやってきたハヅキ様の取り巻きです」

 またその話か。ハヅキが命じ、サクラをいじめたという連中。ハヅキは彼女たちと関わりがほぼない。連中が『勝手に』動いているとしか思えない。

「では、いじめと同じで、ハヅキが原因だとでも?」

「最終的には」

 ユウトは城の者に命じて、五人を呼び出してハヅキの家に集まるようにした。

「サクラもくるんだ」

 ユウトは馬に跨り、ハヅキの家を目指した。

 サクラも城から貸し出された馬に乗り、後をついて行った。

 街を進む中、五人の娘たちも各々の手段で、ハズキのいるスズミヤ家に集まっていた。

 ユウトとサクラがスズミヤ家の敷地前に来た時には、ミミ、メイ、クミ、ハナ、リサの五人が集まっていた。

 彼女たちは、馬車を下りて立っていた。

「さあ、決着をつけよう」

「……」

 馬に乗ったままのユウトは、先頭に立ってスズミヤ家に入って行く。

 ミミが言う。

「私たち、なんの件で呼ばれたのかしら」

 しんがりを行く、サクラが言う。

「とぼけないで、金を脅し取っていて」

「……」

 ミミはメイやクミ、ハナ、リサの顔を順に見ていく。

「脅し取った。我々が(・・・)

 メイが言う。

「どこで、いつ頃かしら」

「城からシロガネ家に金が届いた時に、私を脅したじゃない。30も持って行った」

 メイは二、三度頷いて、クミの顔を見る。

「6ずつ山分けしたわね」

 ハナは首を横にふる。

「違うわ。あの時、私たちは(・・)をハヅキ様に渡したのよ」

 それを聞いてサクラが言う。

「やっぱりそうだったのね」

 五人は頷きあった。

 歩いていくと、道の先でユウトと馬が止まっている。

 ユウトはスズミヤ家の者と話していた。

「……という訳でして」

「いくらなんでも、それでは遅すぎる」

 馬に乗ったサクラがユウトのところまでやってくる。

「何かあったのですか?」

「ハヅキがドラゴンを探しに行ったまま帰っていない」

「南はゴブリンもエルフもいませんが、治安は悪いと聞いています」

 ユウトは明らかに動揺していた。

「そもそもドラゴン石(ドラゴンズコード)が見つかっていたのでしょうか? ドラゴン石がないままドラゴンと出会えば、当然、彼女には死が……」

ドラゴン石(ドラゴンズコード)はあったんだ」

「今、なんと」

 ユウトは首を横に振った。

「いや、なんでもない」

 空は暗く、淀んだ雲が低く垂れ込めている。

 すぐにも降り出しそうな様子だ。

「雨?」

「確かに、濡れたけど。違うわ」

 雲の上で何かが光った。

「あれは雷なの」

「音が違うような」

「雲の中で光る雷の時は、あんな音だったような」

 様々なことを話しながら、五人の娘たちが空を見上げている。

 ユウトも気になってきて、空を見上げた時だった。

 雲の一部が渦を巻くと、穴が開いた。

 そこから地上に日差しが差し込んでくる。

「あれは……」

 ユウトは雲に開いた穴から、下りてくる飛翔体を見つけた。

「ドラゴン!? ハヅキがドラゴンと共に帰ってきたのか」

 その場にいる全員が空を見上げた。




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