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水晶の令嬢 〜転生者から持ち込まれた悪役令嬢という概念に翻弄された話〜  作者: ゆずさくら


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人質解放作戦の2

 最初の人質解放から、四日が経過していた。

 再びサクラが城にやってきてユウトと会った。

「今度は前回の倍の人数を解放できると約束が取れました。

「そうか」

「人質解放のための、金を受け取れますか」

 ユウトは頷いた。

「ニングットと取引するところに、私も加わりたい」

「以前もお話ししましたが、ユウト様に何かあったら」

 サクラは胸の前に、手を重ねて心配であることを示す。

「では、なぜ、一番最初は平気だった? その時から断れられているならともかく、なぜ金を運ぶことになると危険度が増す?」

「以前説明したように金を運ぶため、最初とは違い隠密行動ではないのです。前回の作戦時も数名が怪我をしています。今度は怪我では済まないかも」

 訴えかけるように手を握りしめる。

「ならば、俺は隠密に行動する」

「武器を持ったものが隠れていれば、ゴブリンは警戒します。そうなるとユウト様だけでなく、我々にも危険がおよびます」

「……そうか」

 ユウトは考え直した。

 サクラと共に金を運ぶ兵士を一人、懐柔し、隠密に調査役として潜り込ませよう。

 サクラを疑っているわけではないが、渡した金と解放される人質が、これで正しいのか確認する必要がある。


 二人は城の中を移動し、金を受け渡した。

 塊になっている金の数を二人で読み上げ、確認した。

「前回の倍はある。道中で必要な分があったとしても人質は前回の倍かそれ以上解放してもらわないと困る」

「はい」

 真剣な表情でサクラが頷く。

「すぐ立つのか?」

「兵の準備が出来次第、ルコール地方へ出発します」

 ユウトはすでに臣下に命じて、サクラに同行する兵士の一人に取引の記録を取るように指示していた。

 出発までに間に合えばいいのだが。

「頼んだぞ」

 サクラは城の者を従えて、金を持ち帰った。

 サクラの後ろ姿を見ていると、ユウトの下に臣下が一人やってきた。

「サクラ様の一団に一人、記録を取るように命じました」

「仕事が早いな、よくやった」

 一瞬、サクラがこっちを見ていた気がした。

 ユウトは不安になった。

 まさか、勘付かれた?

 振り返ったところで声が聞こえる距離ではない。

 読唇術が出来たとしても、口元がはっきり見える距離ではない。

 大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。

「……」

 やはり自分自身で行って、ニングットと交渉するべきだろうか。

 それとも……

 ユウトはアシムのことを思い出した。

 彼なら鳩を使って偵察も出来る。

 ユウトはそこまで考えると、あることを思い出した。

 そこにいた臣下に言う。

「おい、ノームの文字を読むための『グラス』を用意しろ」

「……それが」

 臣下は俯いていた。

「なんだ? 『グラス』のことを忘れたのか?」

「違います。つい先日、ノームの文字を読むグラスが砕かれておりまして」

「なんだと! すぐに必要なのだ。作らせろ」

 顔を上げた臣下は、すぐに頭を上げた。

「わかりました」

 臣下が去っていこうとするところを呼び止める。

「アシムと連絡をとってくれ」

「ユウト様のお友達のノームの方ですね」

「回りくどい言い方をしなくてもいい。すぐに両方に取り掛かれ」

 臣下はユウトの指示に頷くと、部屋を出ていった。


 サクラは金をシロガネ家に運びこむとルコール地方へ輸送する準備を始めた。

 黒装束に着替えたサクラは、輸送を担当する兵たちの前にたった。

「全員いるか?」

 隊長が気づき、作業を隊員に任せてサクラのところにやってくる。

「はい、揃っております。準備もすぐ終わります」

 その時、一人の兵士の姿が、見ているサクラの目に留まった。

 背格好、やっている作業に特に変なところはない。

 隊長が作業に戻ろうとするところを、サクラが呼び止める。

「待て。あの者、知らない顔だな」

 隊長がサクラが指摘した者を把握するまで時間がかかった。

「ああ、訓練が終わったばかりで、初めての実戦参加となります」

「……」

 今から兵士を入れ替えていては時間がかかってしまう。

 サクラは困惑した。

「次回から新兵を入れる時は相談してほしい」

「わかりました」

 隊長は深く頭を下げ、作業に戻っていった。


 ユウトが部屋で過ごしていると、臣下がやってきた。

「ユウト様。ノームたちの情報を集めてまいりました」

「早かったな」

「アシムの姿を最近見ていない、という者ばかりで」

 ユウトは立ち上がった。

「そもそもノーム達は群れないらしいが、どういう情報網なのだ」

「群れない生き方をする者が多いのは確かです。ただ、ノームの繁栄のため、定期的な男女の集まりを行なっているようです」

「よくわからんな」

 臣下は言い方を考えるため、少し間をおいた。

「男女が仲良くなるための集まりです。家族を作るため、というべきでしょうか」

 ユウトは首を縦に振った。

「その集まりに、アシムは必ず参加していたようですが、そこに現れなくなったということです」

「……わかった。ではノームの文字を読むグラスを早く用意しろ」

 ユウトが目にかけているグラスも、作成に時間がかかるものだった。

 特に、磨きに時間がかかるという。

「ユウト様もご存じと思いますが、グラスは職人の作業が必要で」

「急がせろ」

「わかりました」

 頭を下げ臣下が去っていくと、ユウトはベッドに横になった。

 アシムは何を調べていたのだろう。

 もしサクラのことを調べていて『()された』のだとしたら……

 ユウトの中で、サクラに対しての疑念が大きくなっていた。




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