第8話 第三地上エリア
扉が開くと辺りは真っ暗だった。
「クリア!」
周辺に敵がいないことを隊員達が確認すると不気味な風音が遥か遠くの方から聞こえてくる。
暗闇に慣れてくると細長い通路が見え、その先に薄っすらとした小さな光が見えた。扉の向こうにはトンネルが続いていて、僕達はアレックス隊長の指示に従い列をなして小さな光を目指した。しばらく歩くとトンネルの出口が見えてきた。
ようやく外だ。
百年ぶりの青空が見れる!僕は早る気持ちを抑えながら空を見上げた。しかしそこに青空は無かった。僕の視界は何かに遮られてしまった。
これは……何?霧か……!?
アレックス隊長の方を向くと彼は携帯無線機を取り出しどこかに連絡しようとしている。しかし何度試しても相手から応答が無いようだった。
「やはり第一部隊に何かあったに違いない。全員無事でいてくれればいいんだが……!」
隊長は頭を抱え、苦しい表情を見せながらウエストポーチから第三地上エリアの地図を取り出す。
「今から市街地へ向かう。第一部隊が最後に定時連絡を発信した場所だ。そこに何か手掛かりがあるかもしれん」
「了解!」
「それにしても今日は霧が濃いな。クソ、こんな日についてねえ。全員明かりをつけて、固まって進め!!!」
隊長の命令でみんなは一斉に銃に装着されている懐中電灯の電源を入れ、僕も同じことをした。そして立ち止まっていた僕達は再び警戒しながら前へと進んだ。
僕は思った。命令を大声で言った隊長。
声が大きすぎる!やつらがすぐ近くにいてその声が聞こえたらどうするんだよ?
と少し心臓がバクバクした……(泣。
僕は呆れていたが気持ちを切り替え、考えた。
ところでこの霧、何か濃すぎるぞ?
僕はいつの間にか隣にいるユリエさんに聞いた。
「ユリエさん、霧が濃いですね。第三地上エリアは普段からこんなに霧が濃いんですか?」
「違うわ、このエリアは普段綺麗な青空が見えていつもは晴れているのよ。何かおかしいわ、注意して……!」
普段空は晴れているはずのエリア。しかし今日は濃い霧が発生している。
最悪だ。よりによってこんな日に霧だなんて僕達は運が悪すぎるぞ。
いや、待て……?
それともこれは〝やつら〟の仕業なのだろうか?ユリエさんに確認してみよう。
「ユリエさん、ジェミニは霧を発生させたりできますか?」
「ジェミニが霧なんて……!聞いたことがないわ……!」
「そうですか、わかりました」
「やっぱりこれは謎の生物の仕業の可能性があるな……」
僕がそうつぶやくと───。
「ほう、俺も同じことを考えていたところだ。お前もやはりそう思うか」
僕の独り言をアレックス隊長に聞かれていたようだ。
「はい、何か対策を考えないと大変なことになるかもしれません」
隊長は僕の考えに賛成し、一列に進んでいた我々小隊のフォーメーションを変更した。
「全員聞け!!!フォーメーションを変更する。4人一組になり一人を三人が取り囲むトライアングルフォーメーションを組め!!!」
「了解!」こうして5組が4人一組のフォーメーションを組んで進むことになった。
たしかにこの霧の中、一列だとお互いカバーできない。このフォーメーションなら危険な事態に遭遇した場合少しは対処できるだろう。
でもこれだけで大丈夫か……?
僕は不安な思いを抱いていた。
「レン、お前はユリエと仲が良かったな。なら後方に行って彼女の組に合流しろ!」
「やったぁ!ありがとうございます!」
良かったぁ……ユリエさんと一緒で後方だ。それにここで知らない組みに入れられていたら大変だったぞ……!アレックス隊長の配慮に感謝だ!後二人は誰だろう……?まぁ、グレンと彼の仲間のヒューズ以外なら誰でもいいか!
「あぁ、後二人だな。ならグレンと眼鏡、お前らがレン達と組め。他の隊員も4人ずつ順にフォーメーションを組むんだ。俺は先頭の組にいる。お前らは最後尾だから逆三角形のフォーメーションだ」
「わかりました。それから私はヒューズです、アレックス隊長。失礼ながら申し上げるのはこれで何度目ですか……?」
え?嘘だろ!?グレンとヒューズも一緒なのか?ちっ、(最悪だ……)僕は思った。
隊長、あなたをいい人だと思い始めていたのに僕の感謝を返してくれ!
「お願いします!隊長!どうか、どうか、違う二人と変えてください……(泣」
「もう決まったことだ、ぐちぐち言うんじゃねえ!」
「ううぅぅぅ……」
チクショウ、よりによってグレンと一緒とは。何とかならないのか?
――はぁ……。まあ、でも仕方がないか……。
望んでいなかったがこうなったら仲良くしてみるか……。
次回に続く