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希望のバンガード   作者: 神崎メオ
3/18

3Three


 頭が追いつかない。


「ど、どういうことですか……?……何を言ってるのか……」

「エイリアンと言えば理解できますか?」


 マツダの声は淡々としていた。


「それがすべての『始まりの日』です。一年前、2139年3月26日。突如として奴らは現れ、世界中を攻撃しました。……その結果、世界人口のおよそ七割が命を落とした」

「七割……!?」

「我が国も例外ではありません。生き残った者の多くは、日本各地の地下都市へ避難しています」


 耳鳴りがした。

 僕が眠っている間に、世界が壊れていた。


「そ、そんな……嘘だ……!」

「時間がないのです」


 マツダは言葉を切らなかった。


「第二部隊から要請が来ています。人手が足りない。……今は、戦える者は全員出てもらうしかない」


 そして、静かに告げる。


「よって、君には二時間後の出撃に同行してもらいます」

「じょ、冗談じゃない……!僕、さっき起きたばっかりなんですよ!?まだ──!」

「私も冗談であってほしい。しかし、これが現実です」


 心臓が暴れる。

 七割が死んだ……?

 その意味を、すぐには理解できなかった。

 とんでもない数の命が失われたのだと、本能が告げていた。

 信じられるわけがない。

 僕はまだ両親の死すら受け入れられていないのに。


 蘇った直後に、こんな現実を突きつけられるなんて。

 訓練も受けていない僕に、戦場へ行けと言うのか。

 ふざけるな……!

 死ぬに決まっている……!こんなの自殺行為だ!


 逃げる言い訳を……何か……!


「君を出す理由は、もう一つあります」


 マツダの視線が鋭く僕を射抜いた。


「君の身体は強化されている。……だが不完全だ。潜在能力を引き出すには、実戦が最も効率的なのです」


 そして彼は続けた。


「それに、君はもう痛みを感じない身体を手に入れているはずですよ」

「潜在能力……?僕はただの十七歳ですよ!まだ高校生だったんです!」

「ユウガミ君。世界はもう、平時ではありません。年齢など、意味を失いました」


 言い切るように告げる。


「君には戦ってもらう。それが、今の世界だ」

「そんな理屈……!僕は治験体第一号で、特別な存在じゃないんですか?僕が死んだら、この研究は……!」


 マツダは静かに首を振った。


「アヴァロンは、もはや君一人のものではない。技術は進歩し、短期間で蘇る者も増えました」

「……」

「君は……もう特別じゃない」


 そう言って、彼は隣室を指さした。

 ガラス越しに見えたのは無数のカプセル。

 その中で眠る人々。


 背筋が凍った。

 そして、膝から力が抜けた。


「理解できましたか」


 答えを待たず、マツダは続ける。

 だが、もう何も頭に入らなかった。


 認められるはずがない。


「……僕は行きません。絶対に。出撃なんて、拒否します……!」


 まだ、父と母を失った現実にすら向き合えていないのに。


 僕は立ち上がり、扉へ向かった。

 ドアに手をかけた瞬間、背後で声が響いた。


「彼は失敗だ。捕らえろ!」


 振り返る間もなく、数人の警備員が飛び込んできた。

 ドアは閉まっている。

 開かない。


 背後から足音が迫る。

 逃げ場はない。


「いやだ……やめろ!誰か助けて!」


 次の瞬間、硬い衝撃が後頭部を打ち抜いた。

 視界が闇に溶け、音も消えていく。

 そして、僕は意識を失った。




次回に続く


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