16
僕達は廃墟となった工場へと飛び込んだ。
まずは時間を稼ぐため、入り口の巨大な扉を閉める。
錆びついた鉄の扉は、二人係でもびくともしないほど重かった。
「レン、扉を閉めるぞ!」
「わかりました!……ぐっ、重い!」
「そのまま押せぇ!」
「ぬおおおおおおお!!」
『ゴゴゴゴゴォォン──』
なんとか扉を閉めることができた。
「よし、これで少しは時間を稼げる。今のうちに罠を仕掛ける場所と金属を探すぞ」
隊長がそう言った瞬間だった。
『ドッゴォォン──!!』
!?!
「と、扉が!」
閉めたばかりの巨大な扉が、まるで紙切れのように吹き飛んだ。
鉄の扉は僕達の横をかすめ、壁に激突する。
『ドスン……ドスン……ドスン……』
巨大な足音が工場に響いた。
そして化け物の唸り声。
『グオオォォォォ!!!』
「まずい!あの野郎、もうこっちに来ているぞ!」
隊長が叫び、腰から何かを取り出して僕に押しつけた。
「レン、お前がやれ!俺が時間を稼ぐ!」
渡されたのは、マスグレネードだった。
「そのグレネードを使え。安全ピンを引き抜けば五秒で爆発する。金属を引き寄せたい場所に投げろ。わかったな!?」
えっ……僕が……?
不安だがもう逃げ場はない。
「は、はい!任せてください!」
「頼んだぞ!!」
隊長は振り返りもせず、巨大な化け物へ向かって走った。
銃声が工場に響く。
『バババババババァン──!!』
一刻を争う状況の中、僕は必至に工場の中を見回した。
その時だった。
天井から何本か吊り下げられた鋼鉄の柱が目に入った。
「これだ……!」
思わず叫ぶ。
「アレックス隊長!見つけました!こっちへ!」
「わかった!今行く!」
「そのまま真っ直ぐ走ってください!」
「うおおおおおお!!」
隊長がこちらへ向かって走る。
その背後を、大型ジェミニが猛スピードで追って来ていた。
時間がない。
僕は安全ピンを抜き、鋼鉄の柱の真下にグレネードを投げた。
カウントダウン開始。
五秒───。
四秒───。
三秒───。
「行けるぞ、レン!」
「頼む……間に合ってくれ!」
二秒───。
しかし、二秒を切ったところで、大型ジェミニが隊長に追いついた。
巨大な拳が振り下ろされる。
『ドゴォォン!!』
隊長の体が宙に吹き飛び、工場の壁へ叩きつけられた。
「ぐわあぁぁぁ!!」
「アレックス隊長!!」
一秒───。
ゼロ。
グレネードが爆発した。ヴォォォ〜ンと爆発音を出し、床に磁性粒子が飛び散る。
磁力に捕らえられ大型ジェミニは、必死に動こうとするが体が引き寄せられ動けない。
そして天井から鋼鉄の柱が落下した。
『ドォォォン!!!』
巨大な衝撃。
「うっ!!」
『グオオォォォォ!!!』
怪物が悲鳴を上げる。
や、やったのか……?
僕は慌てて隊長のもとへ駆け寄った。
「隊長!大丈夫ですか!?」
「ぐっ……この馬鹿者が……!」
血を吐きながら隊長が怒鳴る。
「俺のことはいい……!あいつを殺せ!今しかない!」
壁に叩きつけられた衝撃で、隊長の無線機は粉々に壊れていた。
だがライフルは無事だった。
隊長は震える手でそれを僕に差し出した。
「早く……撃て……!!」
「わかりました!」
僕はライフルを受け取り、大型ジェミニへ近づく。
巨大な口を開け、怪物はまだ暴れていた。
今しかない。
僕は引き金を引いた。
「あああああああああああ!!!」
『バババババババァン──!!』
弾丸をすべて口の中へ叩き込む。
『カチッ……カチッ』
「弾切れか……!」
怪物の悲鳴が止まった。
動かない。
僕は振り返る。
「や、やりましたよ隊長!大型ジェミニを倒しました!」
安堵が全身を包んだ。
「はぁ……終わった……」
僕は勝利を確信し、ほんの一瞬油断してしまった。その一瞬の油断を僕は一生悔やむことになる。
「待て……まだだ……!!」
「え……?」
振り向いた瞬間。
鋼鉄の柱の下敷きになった大型ジェミニが、瓦礫の隙間から腕を伸ばしてきた。
そして巨大な爪が僕に向かって振り下ろされる。
「レン!!!」
『グオオォォォォ!!!』
もう間に合わない。
あぁ……。
ここで終わりなんだ。
『僕は必ず戻ります。だから信じて待っていてください!』
『……約束よ!必ず……!生きて帰ってきて!』
約束したのに……。
「ごめん、ユリエさん……。僕……約束守れないと思います。さようなら……」
『グサッ──』
鋭い爪が腹を貫いた。
次回に続く




