決勝戦①
3回戦こと準決勝の第2試合。
そこを勝ち抜いたのは、下馬評通りの猛者である「倍筋 弩筋」であった。
割とどうでもいいが、弩筋に負けた対戦相手は麗羅の元実家、病手家の娘であった。
試合中にあくどい事をやってまで負けたため、下手するとお家取り潰しまでありうるような負け方をしていた。今後も無事という事は無いだろう。
貴族としての病手家はこれで終わりだ。
「それでは、泣いても笑ってもこれで終わり! 王子を婿にする猛者はどこのどいつだ!?
大番狂わせ、奇跡の逆転女王! 神手麗羅か!
実力十分、王者の貫禄! 倍筋弩筋か!
どちらの実力もここまでに証明されている。だけど勝者は独りきり。
さあ、心の準備は万全か! 決勝戦、始め!!」
開始の合図とともに、向き合う二人は『倍々筋』を使い、距離を詰める。
互いの武器はその拳。下手な金属よりも固い己の肉体をぶつけ合う。
そして初撃は――弩筋の勝利であった。
「軽い、わね」
弩筋は麗羅の拳の“軽さ”に痛ましい物を見たという顔をする。
もともと『倍々筋』は倍筋家に受け継がれてきた技であり、その完成度・習熟具合で弩筋が劣るという事はあり得ない。
麗羅の技の完成度は脅威であるが、それは「単独で開発された初代の技」としてであり、連綿と受け継がれ磨かれてきた技に敵うはずもない。しかも弩筋は倍々筋を使うための体を作り上げていて、わざと体のシナジーは麗羅の比ではない。
また、麗羅には多くの技を会得するために一つ一つの技の習得度合いが荒いという欠点もある。オリジナルには勝てない。
つまり。
このまま倍々筋だけで戦えば、弩筋が必ず勝つ。
「重いわ」
麗羅は弩筋の拳の重さに眉をしかめる。
技の完成度、基礎となる身体能力。どちらも弩筋の方が上と、最初から分かっていた話である。
トリックスターの立ち回り。それこそが今の麗羅の強みである。
正面を切って戦ったのは、彼女に対する憧れから。
ああなりたいという思いだけの、愚行とも言える選択であった。
そして自分は弩筋のようにはなれない。
それを改めて突き付けられた。
ゆえに。
麗羅は自分らしい戦いを選択した。




