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 はい。人間辞めて可愛らしいのは頭だけ?ゆるキャラになってしまった前島です。


 落ち込んでいても仕方がない。と、いうより俺は今、異世界にいるわけですし?


 元の世界で死んで転生してこちらに来た訳でもないし、いつか戻れる方法が見つかるだろう。

 元の世界の未練なんてやり残したゲームとアニメ位だしな。彼女なんて大層な存在は俺にはいない。

 高校卒業して会社入って中年になって結婚も出来ず、一人で寂しく死んでいく未来しか見えない俺が何の因果か異世界へと飛ばされてしまったわけだ。


 人間一度はファンタジー溢れる異世界で過ごしたいとか思ったことがあるだろう。

それが今、現実に起きているのだ。死なない程度にエンジョイするしかないでしょう。これは。


 まぁ、顔所か全身が元の俺の姿で無いのは残念ではあるけれど・・・。


 残念で済ませられるのは俺の精神に何らかの障害が発生しているからなのだろうか。


 まあそんな事を考えている場合ではない。これからの事を考えなくては。

 異世界で生きていく為に必要な物がある。それは食料と金、住処だ。

 人間だろうが魔物だろうがゆるキャラだろうが生きている限りは腹が減る。栄養を摂取しなければ飢えて死んでしまう。周辺に生息している動物を殺生して調理したり、野草を採取出来ればいいのだが、ただの高校生の俺が動物を殺生して解体したり、食べられる野草を見つけたり、調理出来るはずもない。

 

 そういう訳で、人間か魔物の住む集落を見つけて、食べ物を譲ってもらう必要があるわけだ。

 いずれは自分で狩りをしたり、野草や野菜を育てて収穫出来るようになれればいいのだが、それはまだ先の話だろう。


 譲ってもらうにしてもタダというわけにはいかないだろう。

 ここで使うのが、金である。


 この世界の通貨を入手しその金で食料や生活用品を買い揃える。

 戦闘が必要な場合は武具も手に入れなければならないだろう。

 幸いにして俺には聖剣ムーンレイスとマオくんの装備一式があるが、聖剣は勇者が持つ専用装備みたいなものだ。

 むやみやたらに周囲に曝す必要は無い。もし関係者に見られれば俺の身が危ういだろうしな。

 マオくんの装備一式は防具として勇者の攻撃を防いだほどの防御力を誇っているので、とりあえず防具はこのままでいいだろう。


 金を入手する方法だが、RPGみたいに魔物を倒せば金や経験値がその魔物からドロップするなんてことはないだろうから、やはり集落を見つけてアルバイト的なことをするしかないだろう。

 何か売り物になるような物を持っていれば、金に変えることも出来るのだが、生憎売却できる物は何一つ持ってない。


 次に住処だ。


 俺は野宿なんてしたことがないし、あるのは中学の時に行った県内にある冒険活動センターとかいうキャンプ場を使用したキャンプくらいだ。

 魔物ひしめく森や街道で安眠出来る自信はない。

 まあ、今の俺は頭は完全に魔物風だから襲われることもないかもしれないが、逆に同じ人間に魔物として討伐されてしまう可能性もある。


 そうなるとやはり、集落を見つけて宿屋にあたる施設を借りるしかないだろう。

 人間の町なんかだったら、異世界トリップモノのテンプレである冒険者ギルドなんかがあればクエストを受注して日金を稼ぎ、宿に泊まって生計を立てられればいいのだが、そんなに甘くは無いだろう。

 それに俺のスキルについても色々と検証しなければならないし、出来れば誰も来ないような場所が近くにある集落が望ましい。

 ある程度実力を確かめてから大きな国に向かった方が良いだろう。


 よし。ある程度の方針は決まったな。

 まずは集落を見つけ働き口を探し、金を稼ぐ。

 その金で食料と寝床を確保する。

 暇があったらスキルの検証。


 よし、これで行こう。


 では早速出発するとしよう。

 向かう先は先程俺が来たのと反対側の方角。

 つまり、戦場だった原っぱと真逆の方向となるわけだ。

 ここに向かってくる途中に集落らしい集落は発見してないしな。向かうなら先に向かうべきだ。




 なんて事を考えていた時期が俺にもありました。


 結論から言うと、道に迷った。です。


 広大な荒野を歩き始めて早、数時間。一向に集落が見つかりません。


 おっ!第一村人発見!


 なんて具合にいくと思っていたのだが、認識が甘かったようだ。

 お腹の方も盛大な音を立てて空腹を主張している。水辺も草木も生えてない荒野の為、水分すら補給出来ない悪環境。

 

 ヤバい。軽く詰んでいる気がする。


 車があればこんな所スイスイに動けるのだろうが、生憎俺の移動手段は足しかない。

 てか、人っ子一人見かけないってどういうことだよ。

 

 ダメだ。意識が朦朧としてきた。


 フラついた足で左右に揺れながら歩いていると前方にオアシスのようなものが見えた。

 本格的にマズいな。幻覚まで見えるようになったようだ。

 俺は遠巻きに見えるオアシスを辿り着く事を夢見ながら意識を失うのであった。


 



 幸雅が出立する前まで時間は遡る。ルーフスを彼方へと放り投げ、それを追っていなくなった幸雅をポカンと見ていたリリスはハッと我に返ると自分の足で大地を踏みしめる。

 身体の調子を確かめるが、勇者と戦う前所か、今までで一番コンディションが良いような気がした。今ならば勇者に卑怯な手を使われても配下を守りつつ戦い勝利を収めることも可能だろう。

 そんな事を内心思いつつ、徐々に眼を覚ます両軍に向かって拡声魔法で声を大きくした状態でリリスは言った。


「聞け!下等な人間共よ!劣悪な勇者は骸と化し灰となった。人間共!最早貴様たちに勝ち目は無い。だが寛大な心を持つ私はお前たちにチャンスを与えよう。大人しく自分たちの土地へと引き返すのであれば追わずにおいてやろう。しかし!もしこれ以上歯向かうのであれば容赦はしない!貴様たちを皆殺しにした上で人間界へと出向き貴様たちの国ごと滅ぼしてくれよう!さあ選べ!敗走か死か!」


 魔王リリスの凛とした声が辺りに響き渡ると、先に動きだしたのは人間軍だった。

 不可解な集団気絶をリリスの行いだと思ったのか、リリスを恐れ人間界へと我先にと逃げ出したのだ。

 そして、それを追おうとする魔王軍は誰一人としていなかった。

 魔王リリスの治める土地に住む住人たちは元々戦闘狂ではないし、魔王自ら逃がしてやると言っているのだ。もし人間を追い襲うような事があれば、魔王リリスに背いたと捉えられてもおかしくはない。


 次々と武器を投げ捨てて敗走する人間軍を見ながらリリスは未だ胸の内に残る力の残留を感じていた。


 あの存在はいったい何者だったのだろうか。どうして魔王である自分に格下相手にしか使えない魔力譲渡を行う事が出来たのか。

 いや、現れた時に伴っていたあの魔王である自分すら凌駕する圧倒的な重圧とあふれ出る膨大な魔力量を考えれば自分より上位の存在。魔力譲渡を行使できるのは当然のことか。

 しかしあのような魔王をも超える超越者が存在した事が信じられない。

 魔王としては新参者ではあるが、それでも百年と数十年間。魔王として務めてきたはずだった。

 それなのにあのような者が存在した事など、感じ取れた事も無かったし、他の領土を持つ古参の魔王たちからの話にもあのような存在の話は聞いた事が無かった。


 いや、唯一聞いた話があったな。とリリスは大昔に母から聞かされたおとぎ話を思い出す。


 古の時代より人間は魔の者を恐れた。

しかし暗黒を切り裂く刃を持った者が現れ、世界に光をもたらした。

 それが勇者と呼ばれる存在である。

 勇者によって魔の者は次々と切り伏せられ、絶滅の危機に瀕した。

その時、闇よりいでし漆黒の衣服を身に纏いし者が現れた。

 その者の一撃は山を砕き、海をも割った。

 その者のは魔王と呼ばれ、魔界を統べんとする絶対強者であった。

 魔王はその恐るべき力を振るい勇者を倒し、勇者を生み出した神にも牙をむけた。

 魔王の力は凄まじく、世界を創造した神すら切り伏せてしまった。

 神の力を吸収した魔王は魔神と化し、この世から人知れず消え去ったのだ。

 魔神の消え去った後、世界はその構造を大きく変えた。

 元々一つであった人間が暮らす土地と魔物の暮らす土地が分離し、二つの土地を結ぶ中立地帯。エターナルアースが誕生した。

 以来、神が存在したと言われている天界への道は固く閉ざされ、何人たりとも進入する事が出来なくなった。

 魔物たちは人間との争いに、勇者という存在に怯えることなく平穏に暮らせるようになった。

 人間側は各国の共通の敵である魔物の脅威が減り、同じ人種の国々で争う様になったという。


 確かそんな感じの内容だったはずだ。


 あの途方もない魔力、あふれ出る風格。もしかすると古の魔神の再来なのかもしれない。

 でも、どうして数百年振りにこのような場所に突然現れたのか。


(私を助けに来てくれたわけじゃ・・・ないわよね)


 頬を朱色に染めながらそんなことを考えていると、リリスの下に魔物たちを撤退される段取りを任せたいた魔将軍の二人が帰ってきた。


「リリス様。人間軍の退却が完了致しました。我々、魔王軍も撤退準備完了しております」


「お疲れ様。じゃあ結界も解いておくわ」


 そう言うと呪文を唱え始めるリリス。短い詠唱が終わるとリリスの手のひらから赤い球体が上空へと放たれると、遥か上空にて四方へと飛び散った。

 結界とは魔王であるリリスが戦時中に自身の直轄領に用いた魔法である。

 戦時中に人間や他の魔王の配下の魔物が自分の治める国や街に入れないよう、認識阻害の結界を張っていたのだ。

 それを今、解除したというわけだ。


 結界を解除し終えたリリスは規則正しく整列し自分たちの住処へと帰っていく魔物たちを見ながら今後の事を考えていた。


(人間の追い払いも終わった事だし先輩たちに報告に行かないとね。誤魔化すか、それとも・・・)


 あの場に現れた謎の強者の存在はすでに探知能力に長けた他の魔王には既に気付かれているかもしれない。


(それでも・・・!)


 リリスは拳を固く握りしめ、決意を胸にいつものように配下の二人へ後の事を任せると、背中の翼を展開させ、ふわりと上空へと飛び立つのであった。

 



 香ばしく焼けた小麦の匂いに誘われて俺はゆっくりと瞼を開ける。


「ここは・・・?」


 空腹で気絶した俺はいつの間にかどこかの集落の一室に運び込まれていたようだ。

 見渡すと木造の住宅の中にいるようで、卵型の繭のようなベットに俺は寝せられているようだ。

 天井に人工的な蛍光灯のようなものはなく、淡い光が木から漏れ出ているようで明るい。部屋のドアは開け放たれており、その先から目覚める時に感じた香ばしい小麦の匂いが漂ってきている。

 気絶する前は空腹だった事を思い出し、盛大に腹を鳴らしていると開け放たれていたドアの向こうから足音が聞こえてきて、そこから顔を見せる人物が一人。


「あっ、眼が覚めたんですね」


 話しかけてきた人物は見た目10歳位の少女だった。


「ハンナさーん!あの人目を覚ましたよ!」


 と、目を覚ました俺の姿を見た少女は再びドアの向こうへと行ってしまった。

 そのまま固まっていると今度は恰幅の良い長髪を後ろにまとめ上げた4、50代のおばさんだった。

 似てない親子だな。と思っているとハンナと少女に呼ばれていたおばさんが腰に手を当てて俺に話しかけてきた。


「おや、目が覚めたようだね。色々と聞きたい事はあるが、まずは飯にしようじゃないか」


 そう言われた俺は飯という言葉に腹の虫が鳴き始めた。

そして早速ドアを開けてリビングに向かおうとした俺の頭がドアに挟まり脱出に手間取ったのは言うまでもない。いったいどうやって俺を運び入れたのやら。



 ハンナさんの飯はとにかく量が多くて旨かった。

 何かの肉をオーブンでじっくりと焼き、柔らかいパンにレタスっぽい葉の物と一緒に挟んだサンドイッチは、あふれ出る肉汁がパンに染み渡りしっとりジューシーに、パンは表面を軽く焼いてあったので、カリッ、サクッと音を立ててから肉汁を吸った中のふわふわのパンの食感と共に肉の旨味が口いっぱいに広がった。

 付け合わせのスクランブルエッグもふわ~りトロトロで旨かったし、スープも色んな野菜がごろごろと入っていて空腹の俺は二人の倍以上の量を直ぐさま食べ終えてしまった。

 料理を堪能しつつ、ハンナさんに行き倒れになっていた事情を話したり、この辺の事を聞き込んでみたりした。

するとルーフスに聞けなかった様々な情報を入手する事が出来た。


 まずここはやはりと言うか何というか、魔界と呼ばれる土地だった。

主に魔物や魔族、亜人と呼ばれる人間以外の人型の生物・・・エルフやドワーフ、竜人等が住む土地だそうだ。

 魔族とは魔界に生きる生物全てを指す言葉であったらしいが、今現在の定義では、知性のない魔物とは違い、確固たる意志を宿した魔物の進化系のような存在をいうらしい。

 俺が戦場であった人たち全員が恐らく魔族だろう。もちろん中には例外が存在したかもしれないが、意思疎通が取れなかった人物はいなかったように思う。

 魔族には階級が存在し、


 魔物

 ↓

 魔獣

 ↓

 使役悪魔

 ↓

 下級悪魔

 ↓

 中級悪魔

 ↓

 上級悪魔

 ↓

 魔将軍

 ↓

 魔王


 とこんな感じになっているようだ。

 これはあくまで悪魔系統を簡単に表した物である為、例外ももちろん存在するし他の種族には当てはまらない。

 例えば魔獣という階級一つとっても、ピンからキリまで差はあり、同じ階級内であっても力の差は大きく開いておりそれによってさらに細かく分類がなされているとの事。

 

 下級:ハウウンドドッグ → 中級:ヘルドッグ → 上級:ケルベロス


 といった感じだ。

 

 階級が上がれば上がる程、限りなく人に近い形になるという。これは世界を想像した神々が決めた理《ことわり》らしく、神が殺された今なお継続している理とのこと。

 確かに言われてみれば魔王リリスやその配下二人の姿形は人間の姿にそっくりだった。

 俺の姿も頭以外は人間の体と遜色ないので、中級悪魔~上級悪魔に分類されるのではないか?とハンナさんに言われた。


 そのハンナさんはというと、種族がドワーフとの事なので、この系統ではない進化が存在するようだ。

進化には己を成長させる何かが必要らしい。これは人によって様々で、人や魔物を殺して戦闘技能を向上させ進化する者もいれば、勉学に励み知識を深め教養を身につける事で進化する者もいるらしい。

 戦闘員の俺が進化すると何になるのか気になるところではあるが、今は話を進めよう。


 戦闘に勝ったり、人から頼まれた事をすると”徳”と呼ばれる不思議な力が体に蓄積されるらしい。

 これは自分たちの技量つまりレベルを上げる際に用いるとのこと。

 ”徳”どっかで聞いたことがある単語だな。どこだっけ?

 徳=経験値ってことですね。分かります。


 ある程度徳を集めると世界の声とやらが聞こえてきて階級が上がるらしい。

これは人間も魔族も亜人も例外はなく訪れるものとのことだ。


 世界の声?もしかすると俺にスキルの存在を教えてくれた声がそうなのかもしれない。

 神が死んだこの世界で聞こえる謎の声。いったい何者なんだろうか。

 まさか本物の魔神?いや、そんなわけないか。私見だが、魔神なら人間の味方なんてするはずないものな。まして神を殺しちゃうような存在だぜ?まずあり得ない。


 次に大雑把な現在位置についてだ。

この世界は縦長に広がっていて人間界と魔界が横一線に上下に表裏一体となっていて、間に中立地帯エターナルアースがある。

 つまり、人間界から魔界に行こうとすると地の底へと突き進む必要があって、魔界から人間界に行こうとすると同じく地の底を目指す必要がある。

 人間界の上には天界、魔界の上には冥界が存在し、今は魔王ですら進入出来ない不可侵領域とのことだ。

 俺が居るのは魔界にある魔王リリスが治める土地。【ゼクステリトリー】だ。

7人いる魔王の内、領土を持っているのは6人のみで残る一人は放浪癖があり、人間界・魔界を問わず放浪しているらしい。

 そんな事もあって残る6人の魔王で魔界を分配し治めているそうなのだ。

 ゼクステリトリーの中にある森林地帯を抜け出た先にある平野を進みたどり着く荒野。荒れ果てた何もない殺風景な土色の世界。

 だが、そんな世界にも大きな渓谷が存在した。谷底を見ると何百メートルあるだろうか。切り立った岩石がせり出した壁は逆ハの字に谷底に向かっていて底には運河がある。

 その運河も次第に大きさを増して行き、俺が通り過ぎた平野に行きつく頃には横幅数キロにも及ぶ大河となっていた。

 そんな渓谷にある運河から分流したいくつもある河の一つの終着点にこの村は建てられている。

 運河から流れ出た水は村の中心部にある巨大なクレーターに注ぎ込まれ湖のようになっている。その湖を中心に木造平屋建ての建物がいくつも軒を連ねており、俺がお世話になったハンナさんの家もその一角に存在している。

 住んでいる住人はハンナさんのようなドワーフに俺を発見してくれた少女、エミリアのようなダークエルフ、知能を有している魔族である二足歩行の狼のような出で立ちのワーウルフ。半人半魚の人魚《マーメイド》など、様々な種類の魔族や亜人が生活している。

 魔王リリスは種族によって迫害を強要するような人物でなく、様々な種族を平等にする人物らしい。

ということは反対にある一定の魔族や亜人を迫害するような魔王がいるってことだろうな。

 エミリアのようなダークエルフは一人だけのようで、ダークエルフは本来、俺がエターナルアースから来る時に通った樹海に住んでいるようで、エミリアは赤ん坊の頃に両親を亡くし、その両親を看取ったハンナさんがそれ以来娘として育てているそうなのだ。

 エミリア本人も樹海にいる同族の所に帰ろうという気は無いらしく、この村での生活を営んでいるそうだ。

 ちなみにこの村の名前はシャーニッドという。残念なことに冒険者ギルドのようなモノはないみたいだ。まあそれも仕方がないだろうな。なんせ魔物の村だし。


 クエストは人間一匹の討伐です。


 なんて言われたら流石の俺も躊躇《ちゅうちょ》してしまうしな。


 食事は主に川魚や肉、穀物。水はけの悪い湿地帯で、吹き晒しの西風により、夏には冷たい風が吹き、冬には吹雪となって、作物の生育を妨げる大地ではあるが、運河の恩恵により水は豊富だ。

 知恵のある魔物である下級魔族であっても体力的には人間を遥かに上回る。働き頭たちは毎朝早くに出かけ、荒野から平野へと赴きシカやウサギのような魔物を狩り夕方には戻ってくるそうだ。

 知恵の無い魔物は知恵の付いた魔物、魔族にとっては同族という認識は無く、畑や魔族たちを時には襲いかかる厄介な存在として認知されている。

 人間がゾンビと化した人を平気で殺せるようなものだろう。


 魚は村の湖で釣ることも出来るし、穀物に至っては荒れた土地でも水さえあれば育つように品種改良が成されているそうで、村の畑では麦やら野菜が育てられている。

 とはいっても、異世界での品種改良した穀物の種の稀少性が高く、あまり育てられていないようだが。


 俺はその後、村の代表者である村長に頼みこみ空家をもらうとそこで生活をすることにした。

 釣りの道具はその辺のアルガンっていう砂漠地帯でも育つ干ばつの時は地中100メートルもの深さに根を張り水分を取り込み、数千万年生き続けられるという乾燥地帯にあるポピュラーな木の枝を折って作った。

 糸はハンナさんに貰い、餌は付けず針だけで勝負だ。


 村には女性しかいなく、ハーレム展開を期待した俺だったが、戦争でエターナルアースに出兵しているだけでいない訳じゃなかったらしい。残念。

 魔王リリスの張った結界が解除され他所者である俺からこの村が見えた事から戦争は終結し帰路についているのではないかとのこと。

 確かに勇者は俺が倒したし後の連中は魔王軍だけでもなんとかなったことだろう。


 そうそう。頭の中でステータスって念じたら俺のステータス画面が見えた。

 異世界パネェっす。


 これでようやく異世界ライフを始める事が出来そうだ。




 名前:マオ

 種族:戦闘員

 年齢:??

 所持スキル:不老不死。物理攻撃無効(低)。統括者《ルーラー》。



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