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諸事情により数話先まで全て削除して書き直していたらえらく時間がかかってしました(汗
その場の勢いでぶん殴るなんて言ってしまったが、冷静に考えると相手は武器を持っている。
対して俺は素手だ。圧倒的に不利な状況だ。
別に俺は格闘術を習った経験がある訳でもない平凡な高校生だ。
だが、待てよ。
今さっき、俺はヤツの剣による攻撃を腕に付いていた手甲でガードしたぞ。
ただの強化プラスチックだった手甲でだ。
つまり、ここが異世界だと仮定するならば、だ。
俺の装備は限りなく本物に近い性能を有しているのではないか?
もしそうなら勇者の剣をガードし拳を叩きこめるかもしれない。
次に目の前の勇者君だが、俺のいた世界とそう大差ない顔つきの青年だ。
着ている服装こそ、金色の眩い輝きを放っている黄金の鎧を身に纏っているが、顔は英国辺りにいる普通の青年と変わらないであろう顔つきをしている。
手に持っている剣はうっすらと銀色の光を放っていた。
勇者って頭にサークレット的な物を付けて、青色が基調の服装がデフォじゃなかったのか?
なんてことが頭の片隅に過るが今は目の前の勇者にだけ集中する。
これは夢でもドッキリでもなんでもない。紛れもない現実だ。
目の前の勇者の放つ圧倒的なプレッシャーが俺に襲い掛かり、冷や汗が、震えが止まらない。
それは一度意識してしまったらそう簡単には消えないものだ。
相手が持っているのは人を容易く殺せる剣である。
今まで生きてきた中でそんなものは見たこともない。押し寄せる負の感情に怒りが冷めていくような感覚に囚われるが、後ろを振り向けば痛々しく傷付けられた少女が地面に伏せている。
ドン!
俺は自分の胸に思いっ切り拳を叩きつけると深く深呼吸をする。
剣なんて当たらなければどうということはない。ようは先程のように籠手で防げばいいのだ。
よし。何とか成るような気がしてきた。
俺は地面を蹴り、勇者に接近し拳の連打をあたえる。
「ハッ!遅せぇ!」
勇者は必要最小限の動きで俺の攻撃を回避すると剣を振るう。
とっさに籠手でガードするが片手で振ったとは思えない剣圧に俺は数メートル吹き飛ばされてしまう。
その際、俺の後方に倒れていた魔王も一緒に派手に吹き飛ばされるが、先程のイケメン部下に助けられ魔王軍の集まっている所まで後退していった。
「がっ!」
ダメだ。どうにもならなかった。
だけど俺は諦めない。
俺がバイトで習ったのはコミュ症を克服するためのコミュ能力だけじゃない。
カヌマンたちに袋叩きにされ身に付いた不屈の精神があるのだ!
立ち上がり勇者の方を見ると、勇者は既に俺を吹き飛ばした位置にはいなかった。
どこに行ったのかというと、俺の目の前にいた。
「オラッ!」
「カハッ!」
腹を思いっ切り蹴られ悶絶する俺。痛みで腹筋が自分のものでなくなったみたいに痙攣し上手く息ができない。
「でしゃばって来たわりにクッソ弱えぇじゃねぇか!なぁおい!!」
そう言いながら勇者は何度も俺を剣で切りつけてくる。
俺は必死に顔をガードするが、手甲を付けていない肩や腹などを狙われ、肌を切り裂かれる強烈な痛みが俺を襲う。
何度目になるか分からない斬撃を防いでいると、息の上がった勇者からポツリと言葉が漏れた。
「なんなんだよテメェは・・・」
「・・・?」
「なんで!攻撃が効いてねえんだ!」
勇者の言葉に顔の前に突き出していた腕を避け、自分の体をまじまじと見てみる。
すると先程まで身体を切られていた感覚はあるのに身体に切り傷は一切見受けられなかったのだ。
勇者以上に俺がびっくりだ。いったいどうなってしまったんだ俺の体は・・・。
ただ外見上傷が無いだけでダメージはしっかり受けているため反撃に転じれるほどの体力は正直残っていない。良くも悪くも俺の体力は一般の高校生の平均値ほどしかないのだ。
異世界(仮)の勇者とは比べ物になるはずもない。
てかなんで俺は勇者と戦っているんだったか?
ああそうだ。魔王を助けてしまったからだ。
翼や角を除けば見た目は中学生くらいの美少女である。
身体が勝手に動いてしまったのは仕方がないだろう。
助けるなら野郎より女の子に限る。
欲を言うなら俺は幼女より綺麗なお姉さん派だ。
俺がそんな現実逃避をしていると俺は派手に吹き飛ばされた。
勇者が斬撃を俺に飛ばしてきたのだ。現実逃避していた俺はそれをまともに喰らい吹き飛ばされる。
さらに勇者は巨大な雷を腕に纏わせると、まるで意思を持ったように俺に高速で飛来し着弾した。
黒焦げになり、地面に倒れ伏す俺。
吹き飛ばされた先は何百メートルも離れていた魔王軍のすぐ傍までだった。
ふらふらになりながら立ち上がると、煤がポロポロと身体から落っこちると五体満足の俺が立っていた。
傍目から見るとダメージをまったく受けていないようにみえるだろう。
しかし実際には立っているのだけで精いっぱいだった。
「本当にしぶとさだけなら魔王以上だぜ!何モンだテメェ・・・」
それを見た勇者から憎々しげにだが初めて畏怖の感情を含んだ声が漏れる。
「ははっ、お前の攻撃なんてこの程度だったってことさ」
精いっぱいの虚勢を張りながら俺は答える。
数キロ離れている勇者に聞こえるとは思えないが、お互いの聴覚はかなり良いのだろう。
俺の言葉に勇者がピクンと反応している。
「どうやらそのようだな・・・」
あれっ?勇者が自分の非を認めたぞ。じゃあもう帰ってくれるかな。いい加減限界だぞ。
「テメェは俺の全力を持って相手してやるよ!魔王にすら使わなかったこいつを受けてまでそんな口を叩けるか!!」
ウソだろ!今まで本気じゃなかったのかよっ!!
俺の思いとは裏腹に勇者は聖剣を上空に掲げると何やらブツブツと唱え始めた。
俺の周りにいた魔物たちが口々に「なんて膨大な魔力だ」とか口にしている。
魔力?なにそれ美味しいの?
参ったな。この世界には魔力なんてファンタジー要素があるらしい。
まあ、モンスターや勇者なんてのがいたり魔法もあったりするみたいだから当然かもしれないな。
と、そんな事を考えていたら勇者の攻撃準備が整ってしまったらしい。
晴天だった空は陰りを見せ、黒雲が周囲一帯を覆い尽くしている。
勇者の周りには風が舞っていた。
正直寒気が止まらない。
魔力とやらが感じとれない俺ですらあの攻撃はヤバイって身体が危険信号を出している。
「広域殲滅魔法の威力を喰らいやがれ!!」
勇者が聖剣を振り下ろすと空から夥しい量の雷が俺に向かって降り注ぎ、俺の視界は真っ白に包まれた。
全身を浄化するかのような光に俺の身体は拒絶反応を起こし、全身を貫くような鋭い痛みに襲われた。
直感で悟った。俺はこのままでは死ぬと。
死にたくない。
バイト中に変な所に飛ばされてその先で勇者とやらに殺されて死ぬなんてそれなんてエロゲー?
まだ17年しか生きてないんだぞ!異世界トリップとやらだったとしたら俺にもなにかチートスキルとか寄越せってんだ!
頼むよ神様!
なんなら悪魔にだって祈ってもいい!
だから!どうにかしやがれくそ野郎おおおおおおおおおおお!!!
その時だった。
何か機械的な音声が俺の頭の中に響き渡ってきた。
《発動可能なスキルが存在します。発動しますか? 【Yes】 or 【はい】 》
って肯定しか選択肢ないじゃないか。
俺にもあったのか!チートスキル!!
いや、この際チートでもなんでも構わない。
答えは【Yes】だ!
そう念じた瞬間。俺の身体は勇者の放った雷撃よりもさらに激しい輝きに包まれた。
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次回、これが勝利への鍵だ!【フェイス・オブ・マオ】




