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「おう、お疲れ~」
「お疲れ様でした~~」
「いや、さっきは大変だったな」
「いつにも増して気合いはいってたよな・・・」
「まったくだ。数センチずれていたらアバラやられてたぜ・・・」
ヒーローショー終了後、俺たち悪役側は控室に戻りお互いに愚痴っていた。
とそこにドアを豪快に開け放ちながら5人の屈強な男達が入ってきた。
そう、カムマンの中の人である。
「ガハハ!ザコ役の皆さんお疲れさん!」
「今日もいいやられっぷりだったぜぇ?」
等と口々に俺達に労いの言葉?をかけるカムマン達。
態度が完全に上から目線だ。全国のチビッ子がこれを知ったら悲しむぜ。
「お、お疲れ様でした・・・」
偶然部屋の位置口近くにいた俺に目線が向いていた為、俺が代表してあいさつをした。
「おう!幹部役の兄ちゃんか!怪我は大丈夫かい!?最後のはいいように決まっちまったからな!ガハハ!」
「はぁ、まぁなんとも無いッスけど・・・」
レッド役の問いかけ俺は蹴りが当たったのはゆるキャラのドでかい頭だし痛くもなんともなかった。そう返した。
「ほぅ。なんともないってか。どうやら俺は兄ちゃんを甘く見ていたみたいだな・・・」
だがレッド役の男は「ハッ!!テメェの甘ったれた蹴りなんざ、そよ風みたいだったぜ?」みたいな感じで解釈していた。
眉間に青筋を浮かべながら手を震わせている。
「ど、どうかしましたか?」
流石に異変に気付いた俺は恐る恐るレッド役に話しかける。すると、
「よし!明日東京ビッグサイトで47都道府県御当地ヒーローが集まるビックイベントがある。そこにお前を敵役として招待してやる。そこで俺達の本気をみせてやろうじゃねえか」
「え、いや別にいいですけど・・・」
「そうか、じゃあプロモーターには俺から話しておいてやる」
「えっ、いや、そういう意味じゃ・・・」
肯定じゃなくて否定の意味でいったんですけど!!!
曖昧な表現で喋ってしまったついさっきの自分に後悔しながら俺はカムマンが去っていくのを見ている事しか出来なかったのであった。
翌日、俺は東京にある東京ビッグサイトに来ていた。
どうやら当日は御当地ヒーロー以外にも御当地ゆるキャラやコスプレイベントなんかも開催されているらしい。
今の俺には関係ない事だがな。
「でも皆さんまでついてきてもらって良かったんでしょうか?」
そう、なんと俺を心配してくれた戦闘員の中の人全員がついてきてきれたのだ。
なんとその数20人。
「いいってことよ!兄ちゃんだけにやらせはしないって!」
「そうだそうだ!それに今日はあいつ等にひと泡吹かせてやるつもりなんだろう?」
「皆さん・・・」
皆の言葉についつい目頭が熱くなってしまう。
そう。俺は今日カムマンに常日頃受けた屈辱をこの大舞台で晴らしてやろうと思っているのだ。
俺が来る前からヤツラに痛めつけられている先輩方のヤツラを見る目はハンパない。
殺る気だ。
そう思わせる気迫がある。
俺達が入念な打ち合わせをしているとスタッフから移動の合図がかかる。
決戦だ。
「さあ!続きましてはこの方達の登場です!○○県××市の御当地ヒーロー!カムマン!」
司会のお姉さんの合図で颯爽と登場するカムマン。
特設ステージの上で堂々とお客に向かって手を振っている。
だがその態度も今日までだ。
いくぜ野郎ども!
「おーーーーーと!ここで怪人たちの登場です!果たしてカムマンは無事切り抜ける事が出来るのか!」
司会のお姉さんの言葉に合わせてまずは戦闘員がステージ上に登場していく。その数15人。
血走った目で。っていっても覆面しているから傍目からでは分からないが、俺には分かる。
で、カムマンに突っ込んでいく戦闘員の皆さん。
蹴りや投げ技で次々に戦闘不能に陥るものの、いつも以上に善戦している。
「なんだコイツら。いつもよりしぶといぞ・・・」
グリーンよ。ようやく気付いたか。だが、遅い!
「おーと!戦闘員がカムマンに組みついたぞ!カムマン絶体絶命のピンチ!」
舞台は整った。いくぜ!
舞台袖の階段を駆け上がりステージに出ようとする俺。
踊るように飛び出てそのままの勢いでレッドのとび蹴りを喰らわす。
はずだった。
「うおっ!」
強い衝撃の後。俺は動けなくなっていた。
なんだ!?ヤツラの新しい戦法か!?
そんな事を思っていると後ろからついてこようとしていた残りの戦闘員から声がかかる。
「なぁおい。マジか・・・。頭が・・・」
「なんだどうした?頭が何だってンだ?」
ワケが分からず戦闘員に聞くと気まずそうに、
「頭がデカ過ぎてハマっちまいやがった・・・」
なんだってぇ~~~~!??
どうやら俺のゆるキャラ怪人の頭のサイズが通常のゆるキャラよりも若干大きかった所為でステージへと続く階段を塞いで身動きが取れなくなってしまったらしい。
とんだ誤算だぜ・・・w
ってそんな事を考えている場合じゃない。
早く脱出してステージ上の彼らと合流しなければ。
・・・しなければ彼らの命が危うい。
「頼む!後ろから押してくれ!!」
「おう!待ってろ兄ちゃん!」
俺の後ろに続く予定だった5人の戦闘員たちが俺をステージ上に送り出すために、俺を懸命に押してくれる。
だがビクともしなかった。というより、
「いってええええ!!!」
頭を置き去りに動く身体だけが前に押されるものだから背中が反り頭と身体が直角になりそうなくらい曲がっていた。
「ストップ!ストップ!一旦引いてくれ!」
「おお、済まねえ兄ちゃん・・・」
頭を持って後ろに引っ張り始める戦闘員たち。
力強く引っ張られた為、なんとか脱出する事に成功する。
「ッシャ!!」
「じゃあ改めていくぞ!」
「「おう!」」
気を取り直して、今度は引っかからないようにカニ歩きでトコトコと階段を慎重に昇って行く俺たち。
待ってろよ!今行くからな!!
だが、その数十秒から数分のやり取りが命運を分けていた。
「遅かったな。他の奴らは全て片付いてるぜ?」
「くっ!」
俺たちがステージに上がった時には既に15人の戦闘員たちが地面にのびていた。
「す、すまねえ。兄ちゃん。もたせられなかった・・・」
「いいえ、あとは任せてください」
近くにいた戦闘員は俺の姿を見届けると小さな声で謝罪し俺の言葉を聞くと息を引き取った。
まあ気絶しただけだけどね。
「よくも我が手下共を!」
一応、ヒーローショーなので口調は悪役らしくいく。
「フッ!準備運動にもならなかったぜ!全ての悪は俺たちが倒す!」
カムマンのキメ台詞を吐きながら接近してくるカムマン。
迫るカムマンの圧力に思わず気圧されるが逃げることは出来ない。
「うおおおおおおおおおおお!!」
拳を掲げながら突っ込んでいく俺。
対するカムマンはレッド以外の四人を後続の戦闘員たちが抑えてくれたため、必然的にレッドとの一対一の戦いとなった。
「そんな腰の入ってない拳が俺に効くものか!」
そう言いながらレッドは唸る剛腕を俺に浴びせようとする。
速い!
さすがレッド。拳のスイング速度がハンパじゃない。
だが俺には届かないぜ!
「!?」
突如体勢を崩すレッド。空振りする拳。
「テメェ・・・」
レッドが体勢を崩した理由。
それは地面に伏せていた戦闘員がレッドの足首を掴んだからだった。
「へへっ、これ位なら今の俺たちにも出来るんだぜ?」
「ザコがぁ!」
「ガッ!」
激昂したレッドに蹴られ気を失う戦闘員。
でも助かったぜ!お前たちの作ってくれた時間を無駄にはしない。
「くらえ!!」
戦闘員が作ってくれた僅かな隙の間に俺はレッドの懐に潜り込み、膝を落とし腰を捻りレッドの顎に渾身のアッパーを喰らわせる。
「・・・・・・・」
「どうだ!これが俺たちの積年の恨み・・・だ・・・・?」
アッパーをまともに食らったレッドだったが、倒れる様子は無かった。
というより、俺を上から目線でギロリと睨めつけているではないか。
「それがお前さんの精いっぱいの攻撃か?」
嘘だろう?全然効いてないじゃないか!
「攻撃ってのはな・・・」
そう言いながら俺の股に左手を滑り込ませがっしり固定すると露出した首を右手で握り、
「こうやるんだよおおお!!」
「うおおおおおおお!!」
あろうことか身動きのとれずにいたブルー達の方に放り投げたではないか!
絶叫する俺。再び動き出すブルー達。
それからのことは良く覚えていない。
ヤツラは俺を空中に留めたまま、まるでバレーボールでもするかのごとく俺を手玉にとり痛めつけていた。
見てる子供達は大歓声。大人は若干引いていた。
「と・ど・め・だあああああああああ!!」
レッドがバンプアップしたかのように全身の筋肉を漲らせ自然落下している俺に全力ラリアットをかましてきた。
あまりの威力に全身が悲鳴を上げ、接触した個所が首だった為気管が潰れたのか息が出来なかった。
そしてステージから放り出され、空中に投げ出された俺は工事中のマンホールへと見事カップインしたところで意識を手放した。




