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『エリアボス』
人間界・魔界を問わずにある一定の縄張りを持ち、普段は息をひそめて行動する強大な魔物のことをいう。
自身の縄張りに強敵や天敵が侵入した際や、縄張り内の配下をある一定以上殺される事で姿を現すとされている。ちなみにこのエリアボスの場合の一定数とは配下の魔物の合計が二桁。つまり10を超すと現れる。そして今回エリアボスが現れた理由は後者だ。
前島幸雅の現在のステータスは左程高くない。この世界に転移した最初期はレベル1だったのだが、勇者との戦闘によりレベルは上昇している。しかしエリアボスに強敵と認めさせるほどのレベルではないし、職業:戦闘員のレベルも高くは無かった。
このエリアボスの配下は二種類しかおらず、牛のような外見のバッファモーと手に大斧を持ち、二足歩行型の全身を茶色い毛に覆われた巨人ミノタウロスのみだ。
普段草原に狩りに出向いている者たちはこのエリアボスの事を当然知っている。
だから、縄張り内であれば9頭まで狩ると縄張りから離れる。縄張り以外の場所で配下が殺されても、エリアボス的には庇護下である縄張りから離れた時点でその魔物が悪いと判断している。
その為、狩りに出かける者はその辺りの注意事項を順守し狩りにあたっていたのだが、エミリアは弓の腕は一級品だが、まだ10歳と幼くその辺りの事までは教えられておらず、狩りについて行くときもエリアボスの縄張り外での狩りしかしたことが無かったのでエリアボスを呼び寄せてしまったのは仕方がない事だったともいえる。
そして今、平原のエリアボス『ブルデュエル』と幸雅との戦いの幕が上がった。
「エミリア走って逃げろ!」
エリアボスの持つ圧倒的な雰囲気に完全に飲まれているエミリアに大声で怒鳴ると背中を押しだしエリアボスから離す。
エミリアを逃がしつつスキル【統括者】を発動させる。
この統括者だが、常時発動させられるスキルではなかった。
使用している間、ずっと視界の端に白い炎に包まれた凶悪な面した髑髏が三つ横並びで現れ、大きく開いた口の中の数字が回転しては止まるということがずっと繰り返し行われているのだ。
正直、破滅までのカウントダウンみたいで気味が悪いのであまり見ていたくなかったので、使用時以外はオフにしていたのだ。
統括者を発動した為、視界の端に髑髏が三つ浮かび上がりさっそく口の中の数字が浮かび上がっては消えてを繰り返している。
【1】【2】【8】
あの数字が揃うと魔神化する。という事までは未だ沈黙を続けている髑髏さんから説明されていた。
どの位の時間で魔神化出来るかは分からないが、職種:戦闘員の所持スキルとして不老不死と物理攻撃無効(小)があるし何とか時間は稼げるだろう。
【6】【5】【2】
てか、不老不死あるなら勇者戦で統括者使わなくても死ななかったんじゃね?とか思うが後の祭りだろう。
周囲の人影を確認し近くにあった大岩隠れたエミリアしかいないのを確認し左腕に巻き付けてあったチェーンを引きちぎる。
いや、あれだよ?別に厨二的なアレじゃないよ?
聖剣邪魔だなと思ってたらデフォルメされた剣付きの鎖で出来たチェーンに変わったからいつでも使えるように腕に巻き付けてただけだよ?他意は無いよ?
引きちぎられたチェーンが分解され、小さな剣が本来の姿へと戻り俺の手に収まる。
剣身の断面は菱形で、先端になるにつれ狭まり先端は鋭く尖っている細身の刃。柄は鳳凰の羽根を模したような形をしており、グリップ部分は俺の手にフィットする形になっている。
白銀の聖剣『ムーンレイス』を俺は顕現させる。
【1】【2】【5】
あれ?前見たときと形状が違うんだが、使い手によるのか?
勇者が持っていたのが、標準的なロングソードだとすると、今俺が持っているものは刺突剣と呼ばれるエストックの形状をしている。
確か闘牛に止めを刺すのに使われる剣もエストックだと聞いた事があるし、目の前の相手に使うにはお誂え向きの武器かもしれないな。
さて、余計な事を考えるのも後だ。いくら不死で肉体にダメージが無いからっていっても攻撃が当たれば痛いんだからな。なるべく喰らわないようにしないと。
全身の装甲の間から煙を出しながら俺に突進を開始するエリアボスに対し、俺は態勢を低くしエリアボスに向かって疾走する。
質量・速度・力ともに相手のが上である。このままぶつかり合っても俺が弾き飛ばされるのは眼に見えている。
だから俺は接触する寸前で跳躍し装甲の隙間を狙って聖剣で切りつける。
だが、飛んでいる最中に狙いを付けて攻撃をするなんて芸当を俺が出来るはずもなく、固い装甲に聖剣があたり火花が飛び散る。
いくら聖剣でも使い手が俺のような素人じゃ切れるモノも切れないようだ。
そもそも刺突剣であるエストックで切るってのはどうなんだ。突く事に重きを置いた武器だろうに。
でも突くっていっても、正面から向き合って突ける自信なんてないので、大人しく避けて切ってスキルの発動を祈るしかないな。
なんて気弱な姿勢の俺を見たエリアボスはフフンと息を鳴らし旋回からの再突撃の姿勢を取った。
野郎。俺を舐めてやがる・・・。
突撃するしか能の無い機械牛めぃ。眼にものを見せてくれるわ!
【2】【1】【3】
遥か先にいるエリアボスに向けて剣を何度も振るう俺。
すると剣先から光の刃が剣を振った数だけ出現しエリアボスへと飛来する。距離があった所為か、イマイチ速度が出なかった所為か右に左に軽快な動きで回避されてしまった。
だが、それでいい。魔力を宿した聖剣から光の刃___光牙斬とでも名付けるか。を撃てる事が分かったからな。
内に秘めた魔力をただ漏らしていた俺は以前髑髏さんの力を借りて抑えるのに成功した。
魔力譲渡という自分の魔力を相手に受け渡すことも出来たので、物に俺の魔力を纏わせることは出来ないかと思って実行してみたのだ。
結果、纏わせた魔力は飛ばせる刃と化し、遠距離攻撃が可能となったワケだ。
纏わせる魔力の量で威力や大きさが変わるかどうか試させてもらうぜ。
【2】【7】【1】
《マオォオオオオオオオオオオオウゥ!!!》
っとなんだ?何が起こった!?
【2】【 】【2】♪
お!両サイドの数字が揃ったみたいだ。真ん中の髑髏の口では炎の数字が現れては消えを繰り返している。そして・・・、
【2】【3】【2】
外れだった・・・。
どうやら真ん中に「7」が来ると継続してもう一回転回るようだ。どんな意味があるかは分からんけど。
と、あまり数字に気を取られている場合じゃなかったな。光牙斬を避けたエリアボスがもう目前まで迫っていた。
とりあえず、魔力を多めに纏わせた聖剣を二回振るいクロスした光牙斬を牽制として放つ。
先程よりも威力が上がった事を感じ取ったのか、エリアボスも避けるのに集中しているように見える。
巨体に似合わない速度で光の斬撃を避けつつこちらへ向かってくるエリアボスに次々に光牙斬を放つ。
すると、
「なん、だ?身体が・・・ダル重い・・・?」
光牙斬を放つ度に身体から力が失われていくのが分かる。これはつまり・・・、
「MP切れ的なアレか?」
思い当たる節はその位しかない。ゲームでもマジックポイント・・・MPが切れると魔法は使えなくなるし、物によってはステータスの低下や何らかの状態異常を科せられる場合もあるし恐らくそういうことだろう。
調子に乗って魔力を使い過ぎたってワケだ。いきなりの実戦で強敵と戦うのは具策だったな。
まあ、今更いっても遅いか・・・。
俺の魔力の枯渇を肌で感じ取ったのか、奴の速度が上がる。
遮るものがなくなったヤツの速度は速い。一瞬のうちに俺へと接近すると勢いのまま俺に突撃する。
「ぐおっ!」
トラックにふっ飛ばされたかのような衝撃が俺を襲い、吹き飛ばされる。
物理攻撃無効(小)のお陰で肉体にダメージはないが、痛みは変わらない。
身体が言う事を聞かず、動けない。辛うじて手足や首は動かせたので周囲を警戒すると、エリアボスはなんと四足の足裏から炎を吹き出し空中旋回していた。
【3】【6】【2】
「なんつーデタラメな・・・」
その様子を呆れながら見ていると、俺の方へと方向転換を終えたエリアボスの後ろ足付け根辺りがせり上がりバーニアのような物が出てくる。
空気を吸い込むような排気音が聞こえてきたと思うとエリアボスは一気に加速し俺に襲いかかる。
(動かねぇ!)
未だ痺れている身体は言う事を聞かず、エリアボスの攻撃を喰らうしかない俺。
とそこに、
「危ない!」
と俺の視界の端に飛び込んでくる影があった。
軽い衝撃が俺を襲い、身体が横に投げ出されエリアボスの攻撃を回避する。
声からしてエミリアだろう。俺に突撃をかましてエリアボスの攻撃から救ってくれたのだ。
ったく無茶しやがって。
「エミリア、たすかった・・・、エミリア!!」
ブウウウウウウウウウウウンンンン!!!
お礼を言いつつ視線を上に向けるとそこには動かないエミリアの姿がそこにはあった。
慌てて駆け寄り状態を確認するが、右腕が逆方向へと曲がり、他にも全身のダメージが酷かった。頭からは血を流している。
俺を助けた所為でエリアボスの一撃をまともに食らったのだ。
【1】【7】【1】
《マオオオオオオオオオオウゥウ!!》
「エミリア・・・」
抱きかかえたエミリアは力なく俺を見ると、
「ゴメン・・・な・・さい」
そう擦れた声でそう言うと静かに眼を閉じた。
【2】【 】【2】 継続!
《マオオオオオオオオオオウゥウ!!》
俺はエミリアの首に手を当て、脈があることを確認すると静かにエミリアを地面へと横たわらせる。
立ちあがりバーニアを噴かせつつこちらへ反転してくるエリアボスを睨みつけ、
「・・・テメェの血は・・・何色ダアアアアアアアアアアアアァアアアア!!」
【6】【 】【6】 継続!
激昂した俺がエリアボスへと突撃していくのと仮面がスライドし獣の雄たけびのようなファンファーレが鳴り響いたのは同時だった。




