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第九話 -[リオ目線] 私は、私は…

ここはオパル町のギルド…

リオは、普段通り業務をこなしていた。

最近は依頼者が減少気味だったけど

ここ数日依頼が戻ってきている。


「達成率の確認終わり!

次は承認前確認だね。」


今日も業務が終わり

お茶を飲んでいる秘書長の指示に従い書類整理をしていた。

ギルドの秘書の一人としていつもの業務を進める。


「リオ!いつ終わりそうだ?」


警備をしていた私の彼氏、

ソウが期待を込め声を弾ませた。

「今日は20時ぐらいかな。」


「ちぇ、じゃあ夕食はまた今度だな。」


…ふふ、うれしい…求められてる。

誘ってくれるなんて優しいなぁ。


「その気持ちだけで十分。

また手紙を書いとくね。」


「こっぱずかしいな、仕返ししちゃおっかな。

そういえば最近外出してたけど

あれ本当に何の仕事だったの?」


「それはただの付き添いだって…」

そんな会話をしていたとき、

閉じて鍵をした扉が砕かれ、

ボロボロの少女がギルドに入り込んできた。


「逃げてください!

過激派の情報を求めて民衆たちが来ます!

何をされるか分かりません!」


明かりに照らされ、ハッキリとわかる赤と土…

縁の下ギルドの紋章、そしてその顔は…


「建内…日葵…!」

腰の力が抜け、口を抑え込み私は座り込んだ。


それは頼まれた、捏造音声…

そのターゲット張本人だった。


書記長の代わりに私が出席し、

仕事を請け負った、その…!


本人が、ここに来た。


しかもボロボロ…

理解ができない。


「ガーネス町におかれた…チラシを読んだ被害者たちが

あなた達が過激派の居場所を…

知っているって、勘違いしています!

逃げてください!」


「そんなの俺たちが知るわけないだろ!

大人しくしろ!」

日葵は体を引っ張られながらも必死に叫んでいた。


「リオ、大丈夫。

直ぐ終わるさ。」

衛兵たちが取り押さえる中、

勇者教の宗派を辿り、実際に会っていた事を

私は知っている。


被害者たちに噂を撒くよう依頼し

気軽に噂を広めていたのは…私の仕事だった。


…本当かもしれない!

「そ、それは…」


「心配しないで。」


「逃げたほうが…」


「大丈夫だから。」


言えない…!言えない…

嫌われそう…嫌だ!


「煩いな、誰だ!」

奥の部屋から不機嫌に

ギルドマスターが歩み寄ってきた。


良かった、これで私の責任じゃない。


「建内日葵です…っぐ…」

彼女は組み伏せられ、身動きも取れなそうだ。

バレなくてよかった…


「お前か。民衆を扇動して楽しいか?

このレコンキスタのギルドマスターである私から見れば

お前のギルドはちっぽけなものだ。

たしかに、お前がきてからの一年で何故かあのギルドは急成長した。

でもな、ここは衛兵だけで8人、私も40レベルだ。

ギルド備え付けの魔法の壁も作れる、残念だったな。」


そのまま前に歩み寄り

ギルドマスターは手で衛兵を下がらせた。

「違います!ただ伝えに来ただけです!

抵抗するつもりもありません!」


そしてマスターが懐のボタンを操作すると、

彼女がいた床が穴となる。


一瞬驚いた表情をし、お腹を抑えて落ちていった。


「これで地下にベルトで拘束されているはずだ。

少し地獄を見せ、その後

路上死体に偽装しよう。」

その呟きは、他に聞こえただろうか。


最悪、気持ち悪くて吐き気がする。


きっと地下室の、カギのかかった部屋だ…


「壁を起動して、憲兵どもに連絡しろ!

…念のため数時間だけだ。

来たらしょっ引かせるぞ!」


そうして、部屋に戻っていった。

地下室じゃなくて、良かった。

良かったんだよね。


わたし、仕方なかったんだよね?

だってこんな怖い人たちが上司なんだから。

従うのは当たり前だよね。


でも、壁を展開できたのって

あの子のお陰だよね…違う!

だってこのギルドがただの民衆に負けるはずないから。

警備の数も、設備も。


あんな弱小ギルドとは桁が違うんだから。

だから、だから、何もしなくていいんだ。

きっと自業自得なんだ。


「リオ?」

気が付くと、机を持って私は崩れ落ちていた。

涙が止まらない。

「あの、外の様子を見に行った方が…」


「心配するな、逆に罠かもしれない。

ギルドに留まるんだ。」


そこから数十分、私は無為に時間を過ごした。

胸騒ぎを抑えながら、どうしても地下室が気になって仕方がなかった。


”出て来い!いるんだろ!責任者!”


「来た…!」


”俺たちをだましやがって!”

”悪徳ギルドが!家族を返せ!”

”匿っている、レジスタンスを出せ!”


「なんの話だ…」


”あの時のやつ、ここにいるんだろ!”

”おい、アンタら!こいつらはレジスタンスと内通してる!

幾らでも俺たちが説明してやるからよく聞けよ!”


まずい、まずい!


「リオ…?」

恋人の語調に違和感を感じ顔を上げた

真っ青で瞳孔が開き、手を震わせた。


「何か知ってるんじゃないよな…」


彼は親戚の子をテロで亡くしているって

思い出した…


「ないよな、はは、ただの下っ端だもんな。

リオがそんなことするわけないよな、俺がバカか。

様子を見てくるよ。」


目をそらし、閉じて、祈った。

たいしたことが起きないことを。


血相を変えて彼氏が戻ってくるまでは。

「どんどん増えてる!

囲まれてる!」


ギルドの障壁が、ガンガンと叩かれる音が

開いた扉から聞こえる。


やだ、やだ、やだ


「反対側にも人がいる!

うちの専属の猛者冒険者まで交じってた…!」


「誰だ、そいつ…オーリア!?

対魔法のスペシャリストの…」


「噂を広めて、仲間に引き入れてる!

暴動だ!」


いやぁぁぁぁ!

どうしてこんなことに…!


少しすると空気が震え、ガラスが割れるような音が響き渡り

歓喜の雄たけびが、直接響いてきた。


止めてぇ!



「奥に逃げろ!リオ!動け!」


入り口に向かうソウを腰を抜かし見送ることしかできない。

小競り合いが始まって、表と裏から争いの声が聞こえる。


ギルドマスターも私の横から飛び出していき、先頭に加わった。


「お前ら、死刑だ!死刑!

全財産没収だ!」


民衆を一人二人と両断するのを

止めたのは一流の冒険者であるアイアンバドレだった。

「前から気に入らなかったんだよ…」


剣を歪ませて捕まれてそのまま締め上げられて、

床に押さえつけられて…


それに続くのは

その下の層のゴロツキども。


「そいつ、前噂を話してた…!」

「あいつだ!あいつを捕えろ!」


金目の物を探し回っているようだ。

装飾品や見せつける様におかれた魔具が奪われていく。


震えながら、けが人の看護をしている者もいた。


ショックと罪悪感で、

何も考えられない。

ただ、みていた。


「このクズ野郎!」

いきなり右肩から突き倒され、視界が白くなる。

気が付くと、圧し掛かられており必死に殴って抵抗する。



「お前が勇者教の内通者だな!」


「ちが…ちが…

私は…私は…!」


私は…仕方ない…よね。

だって、あの子を陥れたんだもの。

この後、私も殺される…!…殺される?


「言い訳なんかいらない、加担してるのは

間違いないんだ!

お前なんかこうしてやる!」


床にマスターが転がってる。

今なら…ちゃんと助けられる!


「待って、聞いて!」


男は私の服に手をかけ、力いっぱい引き裂いた。

そして、近くにあった棍棒で、私の腕を…砕いた。

ショックで痛みを感じなかった。

必死だった。


「地下のあの子を助けて!」


棍棒で頭を殴られ血が流れる…意識が…


「あの子って、何だよ…」

男が動きを止めたのを見て

最後に伝えた。


「建内日葵って子が、地下に…」


意識が…


自分の左腕が、2回、曲がってる。

もう、働けない。

ごめんね、ソウ…

★境界からの独り言★

辛かったら、見なくていいんだよ。

無理に何かするのはよくないから。


だって、自分も独り言書こうとしてやめちゃった。

無理に書くと辛いからね。


時には逃げることも大切だって私は思う。

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