第十話 - ショック
俺は、暴徒たちに押し込まれかと言って傷つける事も出来ず、
鍔迫り合いをしていた。
「誰か!地下室の場所を知らないか!」
叫びと共に、暴徒が力を抜いた瞬間…
俺は起き上がりリオを探した。
「地下室に、建内日葵がいる!」
その声の方を見て、愕然とした。
服を破かれた恋人、肌も見えており
血も流れ、腕はあらぬ方向に曲がり気絶していた。
そして、即座に理解する。
…許さない…
「俺が地下室を知っている!」
震える声で男に歩み寄る。
密室で確実に。
建内日葵と、殺してやる。
同じ思いを味合わせてやるんだ。
「余計なことを言いやがって…」
マスターの怨嗟の声を聞きながら
その懐のカギを頂いた。
「地下室は、大人数で入るとトラップが発動する。
…そこのお前一人がいい。
あのベルトには金属の芯が仕込まれていて
切るのには手間がいるんだ。」
男を連れて、地下室に入り、荷物柵を二人で持ち
横に退ける。
そして、カギを使い、部屋に入った。
「来い、力が必要だ。」
薄暗い中、扉を閉じてかすかな魔具の光を灯す。
ちかちかとする青い炎が滾る。
ためらいながら入ってきた男に、剣を振り上げた。
「よくも俺の恋人を、あんなにしてくれたな!」
「ひ、ひい!」
部屋の隅に逃げた男を追い、再び剣を振り上げた。
「お前、略奪に来たのか!女目当てで!!
…まず足を切って…」
目の前で逆に、少女を八つ裂きにしてやる。
”ごめん…なさい…”
女性の…いや少女のすすり泣きがしてぞっとした。
まるで魂を取られた気がして。
”間に合わなくて…ごめんなさい
助けられなくて…ごめんなさい…
ごめんなさい…”
思わず、耳を疑った。
急いで立っている箱を開けた。
少女が紐で首を締められ腕も縺れたまま
何とか魔法か何かで堪えている。
安全に拘束されるはずが、抵抗したのか…
「大切な人…ごめんなさい…!」
こいつは悪くない、そう感じて剣を紐に振り下ろす。
…ダメだ、切れずに引っ張られて余計苦しそうに悶える。
「来てたのか…ほんとに先に、俺たちがここに殴り込んだせいで…」
余りにも頑丈でうまく切れない。
体に食い込んで…すごく痛そうだ。
この子の魔法か紫色の魔法の霧がベルトを掴んでいるけど
まるでびくともしていない。
「俺も手伝う!」
その男の拳に、血が見えた。
恋人の血かと思うと体が剣を掲げた。
「うわぁぁぁぁぁ!」
直前で我に返り箱に斬撃を逸らす。
刃は箱に食い込み、誰にも怪我はなかった。
そしてプスンと機器は動きを止めて、泣いた土だらけの
少女が現れた。
気が付かなかった、こんなにボロボロで…
「行かなきゃ…上に…」
這い出て、おぼつかない足取りで、歩く少女を
俺は見守るしかなかった。
そうか、最初から…
気が付いて、膝が落ちた。
何で、気が付かなかったんだ…
…
日葵は助けられ、暗闇の中出口を探す。
石造りの地下室を手探りで触っていると
扉が開いて、私は駆けだした。
ともかく上へ、木製の落ち着いた階段を上り
そして、目に見えた扉を開けた。
「あ…あ!あ~~~!
やああああぁぁぁあああ!」
やだ…綺麗な机も壊れて窓も割れて
人が真っ二つ…女の人も…
棚を攫って袋に入れて…!
…ギルドの!
それはこのギルドの…!
「略奪を止めてください!」
走って男から袋を取り上げる。
「何してるんですか!病院に運んでください!
みんな!目を覚まして!」
背中が水っぽい、滲むように。
ああ、ダメ…もう手遅れ…
痛い…痛い…痛い!
日常が…ギルドの日常が!
沢山の日常が…壊れちゃった。
私がもし、ギルドに入らず…
ギルド前に立っていれば…!
それでも先に伝えないとと思って…!
敵意を示さないために捕まっておこうと思った
あの時、ちゃんと逃げてれば…!
痛い!痛い!
「…お前ら…」
頑強な男が立ち上がる。
そして私に近付くのを感じた。
「くそぉぉぉ!こんな事あってたまるか!
せめて、こいつだけでも…!」
歪んだ剣を掲げる男を見て、私の中の何かが壊れた。
切れかけたはずの妖気が再び立ち上がる。
私は正面から男を睨みつけた。
「死ねぇぇぇ!」
根元から男の剣を受け止め、そのまま歩を進める。
「あなたは少なからずギルドを発展させようと思っていたはずです!」
気が付くと、男を壁際に押しやり妖気で押し付けていた。
胸ぐらをつかみ、全ての力を込める。
「このありさまを見て何も思わないんですか!
傷付いた人たちを虫けら扱いできますか!」
男はにやり…笑みを浮かべる。
「油断したな、エアカッター!!」
当然、妖気で包んだ体からは何も出ない。
「で…バカな…何だこれは…!」
男に頭突き、妖気でねじる。
赤くなり、青くなった。
「貴方には…管理者の資格がない!
牢屋に入って、みんなに謝りなさい!!」
そういうと、男は泡を吹いて気絶した。
その男を…私は床に置けず、椅子に置いた。
そして私は、その男を守るように立って
もう無理、顔を抑えた。
私なら何とかできたかもしれない。
勇者になりたくなくて、ギルドで過ごしたくて
過激派のうわさっ…も何処か
遠い出来事に感じていた。
視界が明滅する、
全部私のせいだ…
考えるほど、どうすればいいか…分からなくなって
そのまま床に…崩れ落ちていた。
…ごめん…なさい…
★境界からの独り言★
ここまで読んでくれてありがとね。
これが、始まり…今作の”きっかけ”だよ。
日葵ちゃんはね、昔から病弱で
こうしてギルドに入った時も
色んな人に助けられたからここに居るんだ。
フラリス、諦神とか。
キャロスさんもリーファさんも、
明さんも仲間たちも。
でもそれ以上に、日葵ちゃんが前に進もうとしてたんだ。
そうじゃなきゃ、誰も日葵ちゃんを助けられなかった。
だから、マソールさんに助けを拒否されるなんて思ってなくて
暴力で返されたことで、今までの責任を全部背負っちゃったんだ。
今はただ、そっとしてあげたいな。




