第四十六話 - 争いは何も生まないから。
劇の練習をするため、
石でできた街道を歩いていると
突然、黒い服の男たちが道に立ちふさがってきた。
「よう、ギルドの姉ちゃん。
おらぁ、剛石ガネス組の組長
モデインだ。」
浅黒い肌、そして両手ポケットで高い背合わせ
目で凄むその姿は、ものすごく怖いけど、僅かにかっこいい。
「ご、ガネス組!?
逃げようぜ!」
トルトルさんが肩を引く中、男は素早く私の手を
部下に掴ませた。
気を取られた、私まだまだだ。
「ケンカするつもりはねぇ、
良いじゃねぇか質問するだけさ。」
じゃあ、対話しよう。
でももう油断しないよ?
「分かりました。
お答えします。」
男は緑色のお草が入った金色の細工がある瓶を取り出し中身を燃やした。
紫色の霧を口に吸い込む。
「あのギルド、1年でどうやって拡張した?
この質問をするのは部下が突然増えたっていう
縁の下ギルドの資本金から、俺らの金庫が
盗まれたと思ったからだぜ…どうなんだ。」
もしかして、スノルの…!
背中が熱くなって、手の震えを感じる。
一言、一言言ってやりたい!でも…
争いは何も生まないよね。
話してからでも、遅くない。
「そ、それは、話せば長くなります。
このあたりの貴族、ベッチさんをご存じですか?」
男はその名前を聞いて、金の管を取り出して
お草の瓶の煙を吸い、天にもくもくと紫を吐いた。
「共同作業所の道具屋を始めた貴族だろ?
奴も1年前、異常に金を配りまくって
発狂したって話題になってたな。
…縁の下ギルドの件で。」
そこから、なんだね。
「そのベッチさんと商業契約を結んだんです。
半年前、借金をしながらギルドを拡大した時に
80万クランの契約です。」
男は、金の管を外して指遊びした。
そして再び目を輝かせ、若干横を向き私を見下ろす。
「だからおかしいだろ。
あの後借金まで背負って
金の無心をしていたという情報、
俺らが知らねぇと思ってんのか!?
確かに、今は商売してるがよ。」
怪しまれても、仕方ない…。
よく考えたらすごく数奇な運命を
彼も歩んでいたから。
「それには別の地方貴族、ハリーさんが絡んでいます。
私が1年前、子泣きの横穴・禁忌に入って
子供を救出した事により借金をチャラにしてもらったんです。
その識別名の由来も、私なんですよ?」
部下の手を妖気で押し出し、振り払う。
部下は驚いた顔で、一歩下がった。
「ふーん。」
その返事、逆に怖い。
「でって事ですかね?
その後、フロイラ家の支援を受けるために
特別なある素材を探しに行ったんです。
これは将来、分かるかもしれませんね。
私が経験した出来事の中で、
それだけの投資価値がある危険なダンジョンを
ギルド総出で探索したんですよ?」
「ほー?」
「その素材は新素材で…
育成はともかく、固すぎて伐採できなかったんです。
農家たちの力も借りて
何とか地面ごと収穫できる木材で。
その加工のめどが出来たから投資してもらって
その金額の一部を報酬として受け取ったわけです。」
男が片手をポケットから出すとそこには名刺が握られていた。
「目がブレてねぇ、嘘はついてねえな。
コレ、詫びだ。
何かあったら連絡してくれ。」
それは違うよ。
「分かりました、でも謝罪は私じゃなく
あなた達の部下に、怪我をさせられた
スノル君にしてください。
私の敬意が欠けてるかもしれないけど
そんな気持ちに、なれないです。」
その時の組長の、見開いてまるでときめいた様な瞳。
私の心に強く強く刻みついた。
「分かった。
ギルドに直接、謝罪に行けばいいんだな。
連絡先も要らねぇか…初めてだぜ。」
「国一番、優しいギルドを目指していますから。
遺恨を残したくないんです。一切。」
少しだけ近付いた気がして、甘く柔らかいため息が出た。
利害さえなければ人は優しくし合えるのにね。
「…面白れぇ。
根本的に考えが違げぇ、それだけで許したくなるな。
トンだ人たらしだろ。」
彼が握りこぶしを出して、開いてくれたのは…赤色の葉っぱで包まれた、飴玉!
多分高い!
「今回の足止めの侘びだ。
じゃあな!」
あああああ!
劇に急いでたんだった!!!
「そういえば、急いでたんです!
それでは、また!」
トルトルさん達と走って、オペランさんの屋敷に向かった。
…
屋敷の門の前で待つ、貴族オペランの前…
私は頭を何度も下げた。
「それで、ガネス組の人と話してて
遅れました!」
そう話した時、オペランは無言で振り向いた。
…遅れて、失望されたかな。
「はははははは!」
…あははは…
オペランさんは突然狂ったように門から庭に入り
噴水の周りを走り回っていった。
呆然としてると、アルテさんが私の肩を叩いた。
「昨日の夜、主はうなされていたんです。
あんなことが起きたら、明日何に襲われるか分からないと。
それが…ぷぷ…ガネス組…ははっ!
これは沢山支えないとですね!」
ははは!
「昨日デルタ盗賊団にも会ったんですよ?
聞いてますか?」
アルテさんの笑顔が固まり、戸惑いの色が広がった。
両手を上げてゆっくりと目を向けて。
「お菓子は大丈夫でした?」
「ばっちり、手を引いてもらいました!
いつかは本気で話し合って、改心させたいけどね!」
私たちがスキッチする様子に、アルテさんも呆然としていた。
普通じゃないかな、でも国一番を目指すんだから
当然悪い人達ともお話しできる度胸がないとね。
「将来はもっともっと、幸せを広げるんだから、ね?」
「ご案内します…」
そっか、家の運命が掛かった”劇”
心配させちゃったかな…。
まだまだ学ぶことがあるなって、
気を引き締めた。
でも気を引き締めた途端、飴玉を思わず
受け取ってしまったことに気が付いた。
私って、単純…




