第二十五話 - 私からの世界への告白文
ソウさんと会ってから、手紙を思い返して夜を過ごした。
いつの間にかゆっくり眠って…
翌朝。
「気を付けてください。
あなたまだ、注目されているんですから。」
「うん色々持って来てくれて本当にありがとう。身の回りにも気を付ける。」
私は頭を下げて感謝した。
その後ベラーゼ君は、
本や記事を渡して去っていった。
昼に…本を読んでいた時だった。
その記事の内容について
バルドさんが謝ってくれたけど…
「バルドさん…悪くないよ…
千切って捨てない私が甘かった。」
世の中に…ある記事が広がっていた。
「縁の下ギルド、恩赦を懇願か?
被害者周囲より草案入手。」
私への報道はまだ冷めていない。
それは、ゴミを漁るほどに。
もちろん記者たちも暇じゃないと思う。
バドレさんとのケンカ記事については面白かったからいいけど、
でも地元の一部では私が取材の対象になり続けている。
この地元にとって、きっとあの悲劇は
想像以上に大きなものだったみたい。
私の評判がまだ傷付いていて…
体より深い傷があることも分かってる。
縁の下ギルドが和解のため金銭を受領した…
首謀者の疑いもあるのにすぐ釈放されたのはおかしい。
そんな抗議がまだ沢山来ている。
沈む気持ちで読み込んで、最後の方。
その下の記事が目に入る…これって…!?
*
ノスタリア家当主 ファンノッテ・ノスタリア様からの寄稿文
本日、筆を執らせていただきますのは、
オパル町を中心として相次ぎ発生いたしました一連の騒擾についてでございます。
先般、暴徒がガーネス町ならびにオパル町の両ギルドを襲撃し、
多くの死傷者を出すという痛ましい事態となりました。
この惨劇は、レコンキスタによる不適切な情報操作を端緒とし、
秩序を揺るがすに至ったものと承知しております。
同ギルドの助言役を務めていた者として、かかる事態を招いたことお詫び申し上げます。
つきましては、レコンキスタおよび縁の下ギルド
さらに今回の事件において加害の立場となってしまった者たちに対し、
財政的支援ならびに心身の再建に向けた庇護を私家より拠出し、
その責を負う覚悟でございます。
また、縁の下ギルドにて発生した脅迫事件に関する情報開示が遅れたことも
混乱を助長した一因であったと深く反省しております。
二度と同様の悲劇を繰り返さぬよう、
関係各所と協議を重ね、制度の改善と治安の安定に向けて尽力する所存です。
皆さまにおかれましては、どうか今後ともご理解とご助力を賜れますよう、
謹んでお願い申し上げます。
*
ファンノッテさん!
「そっか…こんな事を…
じゃあ私も寄稿しないと…」
ファンノッテさんが悪く見られたときに
何も起こらない様に。
「日葵…素人が寄稿するって
確かにこりゃいいアイデアだけどよ。
何を…どう書くんだよ。」
バルドさんのいう通りだ。
私は…まだガキだ、それで記者に文章を出していいのかな…。
悪用されたりするかも…分かんないよ。
試しに、文章を書いてみよう。
腫れぼったいけど、手は普通に動くし
筋を伸ばしても違和感で収まるぐらい、順調だった。
書き間違いをしながらも、思い付きで紙に書き止めた。
それを元にして、新たに完全版を書き写す。
指先が震え始め、休憩し…
30分後、漸く書き終えて…元の原稿を千切り丸めた。
*
皆様、ガーネス町の縁の下ギルドの建内日葵です。
まず、この事件に於きまして被害に遭われた方に深い哀悼の意を捧げます。
この事件の調査の結果、如何なる事実が判明しようとも全ての関係者について恨むことはありません。
被害に遭われた方々が一刻も早く日の当たる道を歩くことができるよう祈っております。
今後同様の被害を防ぐため、必要な調査や再発防止には誠実に協力いたします。
さて、当ギルドを巡る一連の疑惑についてお話しします。
当ギルドの秘書である建内日葵が、とある過激派の勇者教団体より
向日葵の勇者を騙っているのではないか…という疑惑にて呼び出しを受けました。
憲兵の護衛の元で現場に向かったのですが、その時に水晶音声版にて音声を取られており、
悪意のある順序入れ替えの上で噂として広まったという認識をしております。
事件の後、建内日葵は暴動を止めようと怪我を負い、取り調べにも協力いたしました。
改めて申し上げますが、此度の事件において縁の下ギルドが受けた被害に関しましては、
如何なる役割を担った人々であろうと恨むことはありません。
当事者間で話し合いを行い、お互い納得出来る様であれば責任も問うつもりは御座いません。
残る疑惑について、調査にも全面的に協力させて頂きます。
悲しみを負う方々に一刻も早い平和が訪れます様に。
*
「なんか…幼いぜ…」
バルドさんが首をひねり、その文章を見た。
スノル君も、目を潤ませながら悩んでた。
私も、そう思う…でも心を込めて書いた。
「バルドさん、取材の方が来てます。」
「日葵、待ってろ…」
「待ってください!」
背中を向けて向かおうとする二人を呼び止めた。
「私、もう対応できます。
それに、彼らに聞きたいことがあるんです。」
…
「日葵さん!もう大丈夫なのですか!?」
何人か、見慣れた記者がいる。
花束を持ってる人も…すごく丁寧だ。
「ええ、ただ、取材の前に一点だけ相談に乗っていただけますか?
記事には、しないという約束で…」
記者たちが咄嗟に持っていた紙を仲間内で回す。
そして…
「ここに4人分の署名を取りました。
どうぞ、病院の方も見てください。」
ここに記載すること、そしてそれに付随した話し合いは…記事にはしません。
そう…記載があった。
「分かりました、ここに相談を記載します。」
寄稿文を寄せて、被害者たちや加害者たちが
一刻も早く社会復帰できるように
いかなる事実があっても恨まず、当事者同士の話し合いでの解決を
試みる旨の記載をして…裏目に出ることはないか、
縁の下ギルドに危害は出ないか…聞いてみた。
記者たちを信用しすぎかもしれない、縁の下ギルドに害があるかもしれない。
それでも、聞きたかったから。
「なるほど…原文はありますか?」
「いえ…原文は何か記事になりそうなので…
それに、ちょっと内容が幼くて
ギルドの管理人の許可も得ていないので。」
”ここに付随する話し合い”じゃない原文は
記事にされるかも、直感でそう思った。
顔長のお兄さんが、一歩歩み出る。
服はお洒落なシャツとズボンだ、
サッパリとしていて賢そう。
何処かで、会ったよね。
名前が…
「そうですか、分かりました。
私としましては、問題ないと思いますよ。
ただ、ギルドには裏金疑惑もありますし…
もちろん、私としましてはこんなケガを負って
上級冒険者とケンカするような日葵さんが
そんなみみっちいことをする人柄ではないと…一部は気付いていると思いますが。」
人柄。
いや、このままだと疑われる可能性があるってことだよね。
うーん、どうしよう。
「あの、すみません。
私の事、覚えてますか?」
17歳ぐらいの女性記者だ…
…!
ハンナさん!
短い茶髪が。
最初…連絡先を渡して、記者に誘ってくれて…スノル君の事件でも!
「覚えてます!」
そうだ、あの日の帰りの…
「あの、そのまま記事にはしません。
どうしてもそれを託してほしいんです。
そこのお兄さんと一緒に、縁の下ギルドに
そのまま向かって…ご相談しますから。」
この人なら、それにそこまで言うなら、信用していいかもしれない。
「バルドさん、お願いできますか?
他の記者の皆さん、幾らでも質問に
お答えしますから。」
そうして、この寄稿文を託した。
「大丈夫、あなたの誠実さは…
私の名誉も賭けて、必ず世界に広げます。
日葵さん、それでは失礼しますね。」
胸と肩があったかくなって、すごく気が楽になった。
名残惜しく、二人の背を見つめる。
「では日葵さん
…我々の質問には
幾らでも答えてもらいますよ。
約束ですから…ね。」
途端に暗黒が漏れ出すメガネに後ずさり…
だけど、背後にも記者たちが付いていた。
うっかり、1年前の事を話しちゃダメだ。
…どうやって…質問に答えよう。
「さて、行きますよ…!」
背中の傷の話とか、腕や足の状態を見せて
自分で負った怪我と暴動で負った怪我で入院中なこと…
被害者たちとも話し合ってきたこと…
自身が深いトラウマを負っていたことに、日を追うごとに気が付いたことを話した。
光景は話していいか分からなくて、
死体が見えたとだけ話した。
それだけで、涙があふれ出て
記者たちも…少しだけ質問を止めてくれた。
その後泣き止んだら、質問攻め…
働き始めの話や、両親の話まで聞かれて
気を使い、疲弊し、己の運命を恨み、
そして…ひがくれた。
「明日の新聞…良かったら、買ってみてくれ。
ちゃんと擁護もしておくからさ。
これがただの悲劇だって、伝わるさ。」
お兄さんが言った言葉が印象的だった。
食事を食べて口を漱いで…背伸びしても
昨日ほど痛まない。
手はまっ黄色…酷い見た目だけど
背中の傷が落ち着いて、もう退院出来そうだって。
スンとする匂いも、そろそろお別れ。
明日…退院かな…
…
この寄稿文はただのそれではない。
彼女が過去に断絶した世界に
”ただの新聞”という手紙となって
様々な存在を裏で動かし始めていたことを、
暫く彼女は知る由がなかった。
★境界からの独り言★
宣言通り活動報告にもいろいろ書いてるよ。
(おまけストーリーもここ1か月はほぼつけてるよ)
でも活動報告はPVが見れないから誰も見てないかもしれないけどね。
何か意見があったら遠慮なく言ってね。
コメント制限とかはしてないと思うから。
後収益化もしてないから。




