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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
考えたんです。きっと普通に話してもだめだって。
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第十七話 - 分かち合おう?痛みと…知識を

★注意★

ここのあたり、話が重すぎるので定期時間外で投稿します。

無理してご覧にならないようにお気を付けください。

スキップしても構いません。

午後4時、日陰の…庭園のある大きな屋敷の隅。

穏やかな鳥の声、ゆっくりと時が流れている。


その集会場の前で待っていると

ローブを着た男の人が斜め三本の石をつなげた白い慰霊碑に

手を合わせているのが見えた。


声を掛けようと踏み出すと、バドレさんに肩をもって止められた。

「一人で話させてやれ、

邪魔するな。」


囁きに納得し、私も遠くから手を合わせるのみにした。


暫くして、その男の人が来て…

私を見るなり、胸ぐらを掴んできた。


「建内…日葵!」


左胸に、筋肉が引きつるような痛みが走る。

男の人の青い目が歪み、涙を流している…私のせいで。


悪い意味の有名人の気持ち、考える気力が抜けていく。


「お前のせいで、どれだけの仲間が逮捕されたと思ってる!

お前だけ良く言われて、俺たちはボロボロなんだ!

お前…煽りに来たのか!帰れ!」


バチン!


…意識が遠のく

なに、頬打たれたの?


涙を流し優しそうな男が苦しみ歪めた顔が見えた。

…立場も状況も違うけど、レンさんと同じだ。

きっとモヤモヤして、胸が苦しいんだ。


「お前…何か言えよ!魔女…悪魔!」


カタカタと歯が鳴り言葉が出なかった。

もう、真っ白で…緑と白が目に入ってくるぐらいしか。


「勇者と似た名前しやがって!気持ち悪いんだよ!」


…だからこそ、あの音声で人が集まった…


「何泣いてんだよ…当たり前の仕打ちだろうが。」


壁に叩き付けられて、鋭く痛む。

背中で何かが滲んでいく。


「や…止めましょうよ…」


「は!?お前…これ位で許すかよ!

なあ、バドレ…」


バドレは無言で険しい顔をしていた。


男はこちらに怒りの顔で向き直ったが、

何も言わないバドレをもう一度見た後、顔を青くして手を離した。


こんな仕打ちを受けたのも自業自得で、

あまりにも悲しくて

両肩を両手で持ち、震えるしかできなかった。


また、変な体調だ。冷や汗と体の不調か…笑顔になれない。


「はは…は…」

何言っていいのか分かんないよ…


「…」


「カギを開けて、座らせてやってくれ。

こいつはただのガキだし…

こいつも嵌められた被害者なんだよ。」


ほんとに色んな…ははは…


導かれて、木の建物に入る。

落ち着いた長机と椅子が沢山ある空間。

端の椅子に私は座った。


「お前…背中…」

男が椅子を寄せて私の顔を覗き込む。


しまった、隠さないと

この人が苦しみそう。

「これですか?西瓜ジュースです…

さっき飲んでたんですけどバドレさんが零しちゃって。

美味しかったです…」


椅子に座りながら、手すりにずっと顔をつけていた。


「すみません…」

その言葉を聞いて、すぐに私は笑顔で頷いて返した。

でもすぐに顔を背けた。


名前を悪く言われて…それに

すこしだけ顔も張っていたから。


「椅子と机を並べるから手伝え。」

その言葉で、男はバドレの元に歩いて行った。


頭が悪いなんて、嘘だよ。

すっごく賢い。


いつの間にか子分の人も私にパンと水を手渡してくれた。


「俺たちレジスタンスの手がかりを探してただけで、だから捕まらなかったんっす。

でも実際に略奪したり不当な暴力だって決められた奴、大半捕まってて

…さらに家族を亡くした奴もいるんす。」



そうだ、私捕まった時…暴力振るわれた時のこと

何も覚えてないって話したんだ


家族を亡くした人、それを見た気がした。

気持ちが悪くなって思わず胸の前で拳を握りしめた。


いや、場所や雰囲気に当てられたのかも

いったん深呼吸して、落ち着こう。


一年前…辛いことを散々味わったからかな

少し深呼吸したら、いつも通りに戻れた。


顔を上げると沢山の人が集まっているのが見えた。

数十人…私の話をしているようだった。


ここから、会議が始まるんだね。


椅子が並び机がコの字型に並んで、

更に椅子が部屋の外側で同じくコの字型に並ぶ。

私は一番端、入り口側の隅だ。


「本日の犠牲者追悼の会、

および現状の共有会を始めます。」


ふくよかな中年の女性の方が宣言し、

皆さんが黙とうしていたので、私もそれに倣う。


無言の中、必死に手を擦り合わせ…祈りを捧げた。

記事で見た今までの被害者たち、あの地獄に居た方たち、

スノル…間接的な、被害者たちも含めて。


「勇者教被害の報告です。

今日の被害は確認されていません。

ニューフィールドへの信者移動は

50名ほどを確認したようです。

大規模集会の予兆がありますので皆さんお気をつけください。」


ニューフィールド…旧腐った大地…!


「先日の逮捕者については、釈放されていません…

国の聴取結果も、追加では公表されていません。

本日は当事者の建内日葵さんに来ていただいているので

日葵さんの視点での情報を、直接伺いましょう。」


何だと!

アイツが!?


そんな声で自分がどれだけ嫌われているのか

痛感しながら、私は立ちあがった。


「お邪魔しております、建内日葵です。

当日の事について、お話しします…」


手すりに手を付きながらも私は立ちあがった。

背中を隠したかったのでその場で声を張り上げる。


「ではまず最初の確認です。

あなたと、勇者教との関係は

どの様なものなのですか?

無言の抵抗軍、レジスタンスそれぞれ、お話しください。」


白い眼が大量に私に向けられ、思わず壁に身を寄せる。

「レジスタンスには、勇者の名を偽り

カネを集めさせていると疑われ呼び出されていました。

無言の抵抗軍にはレジスタンスとの関係を疑われ

無言の教鞭の対象とされていました。」


「じゃあなんでお前はピンピンしてるんだよ!

なんで殺されてないんだ!」


男性の声が部屋の隅から響く。

何でって言われても。


「静かに、カネを集めていたというのは?」

おばさんが真顔でこちらに体を向け、

徐々にその体が近く大きく見えた。


「新植物の発見で1回契約した…

そういった関係の貴族がまるで名前ゆえに無償で

資金援助していると…囲まれて、問い詰められました。」


「その植物というのは?」


「オモテララ…ベッチさんとの契約です。

私はギルドマスターと憲兵を事前に呼んでいたので生きています。

ですが…」

おばさんが手を上げたので、黙った。

目線は、未だに厳しい。


「無言の抵抗軍に、レジスタンスとの関係を疑われたのは?」

容赦ない尋問だけど、疚しいことはない。

すこし、助かった。


「噂の音声が、無言の抵抗軍に広まっていました。

それで、あの日、”無言の教鞭”のためのデモを申請されていた様です…

今は、一時的にギルドのお手伝いをしてもらっています。」

おばさんの目線も、他の人の目線もより厳しくなった。


「結局利用してるじゃねぇか!!」


その通りだ…よく考えたら。

声の方向を見ると睨んだ痩せている人や下を見て

未だに泣いている人もいた。


もしこれが勇者教過激派なら、もっと話すのは大変なのに。

なのに、心が通じなくて、折れそう。

体が勝手に後ずさりしようとして、壁に当たった。


「あの日、民衆はなぜオパル町に?」


「私の覚えている限りでは

妙なチラシがガーネス町の広場にばら撒かれていたと

誰かが叫んで…」


ダン!と誰かが机を叩き、立ち上がる。

さっきとは違う方向、正面の男の人だ。

金髪で鎧を着た人。


「それがレジスタンス関係者かと聞いているんだ!

お前が説得し、民衆を止めた後にそれだ!

勇者教を利用し、純粋な彼らを

犯罪に送り出したんじゃないのか!」


え…は?

愕然とし、勝手に口が開く。

何でそんな事を…


「レジスタンスの信者たちが

オパル町に誘導したと笑っていた話、

お前も知っているだろう!

…知らないのか?」


両手で口を押えてその男の人を見た。

金と白の鎧をしてる…冒険者だ。


「本当に知りませんか?」


「何それ…知らないよ…」

私が思わず漏らすとおばさんが口を結ぶのが見えた。

どう、見えてるんだろ…


「黒幕だって言うなら、当日俺らがいると知らずに丸腰で現れるなんて、

バカすぎないか?」


バドレが男に肩を置いた。

そして座って小声で何かを話し合う。


「レコンキスタでは何が?」

おばさんの問いかけに目を閉じて思い出す。


「あの後、私は民衆を止められないと思い

レコンキスタに走り、逃げるよう言いました。

そしたら取り押さえられて、落とし穴に落とされ…

上がったら、ギルドが…!」

力が抜けて膝から床に落ちた。


「ギルドが…!

いやぁぁぁぁぁ!!

誰か、誰か…!」

そんな私を抱き上げてくれたのは

おばさんだった。


「落ち着きなさい。…血が…」

ダメ…思い出しちゃった

ここの人たちの誰かが、胴体を両断されてて…

腕を折ってる人もいて…


私は顔をぶんぶんと振って、もう限界だと祈るように伝える。


「あたしはこの子が、我々を嵌めたとは思わない。

こんなに心に深い傷を負っていて、自分が引き起こした事なら…

皆さんはどう思いますか?」

返事はなく、静まり返った空間に虫の鳴き声が響いた。


抱き上げられる腕は暖かく、添えるような…

顔をあげると手を震わせて握りこぶしの男や

こちらを見て目をそらす女性が見える。


思わないって、みんなが私を見つめてる。


「終わったらすぐに病院に行きな。」

おばさんが囁いたけど、私にはそんな余裕は無かった。


お金も心も。

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