第33話 図書館棚入れ作業
八月十五日、照りつける日差しを避けるように、六人は灯台一階に集まっていた。
「これ全部……寄贈された本、だよな……?」
亮汰はうめき声と共に段ボール箱を三つ積み上げた。フリーマーケットで見覚えのある古書や、地元の歴史誌、小学生の絵本まで、種類は実に幅広い。
「無理して重ねない。倒れたら責任とってもらうわよ」
理央が即座に冷たい声を浴びせ、彼の手から二段目の箱を取り上げた。
「はいはい、怒られるのも夏の風物詩ってことで」
亮汰はニヤリと笑い、Tシャツの袖で額の汗をぬぐった。
「……この分類法、どっちに合わせればいい?」
志歩が二冊の本を手に悩んでいる。一冊は料理研究家の随筆、もう一冊は短編小説集。どちらも「生活」ジャンルに入りそうだった。
「ISBNコードの頭三桁で切る。それが一番混乱がない」
理央は即答し、ホワイトボードに分類基準を書き足した。彼女が作ったラベルとチェックリストはすでに棚ごとに貼り付けられている。
「慎重に運んで。床に本を置かないように」
亜梨沙が呼びかけながら、台帳に『整理完了』のスタンプを押していた。紙と鉛筆、付箋とバインダー。彼女の前だけ時間が昭和で止まっているかのようだった。
「祐介、あの段ボールは?」
「写真集と図鑑。視覚資料だから窓際の棚に置く」
冷静に返した祐介が、黙々と棚に大型本を滑り込ませていく。途中、本が引っかかると、微調整して並べ直す。彼の几帳面さは、理央に次ぐレベルだった。
「こんなに手間かけて並べても、誰も来なかったら意味なくね?」
亮汰がぽつりと呟く。
「来させるのよ、絶対に」
その言葉に、理央が返す声は静かだったが、強かった。「誰のせいでもなく、私たちの責任だから。せっかく残すって決めたの。なら、使ってもらえる場所にしなきゃ」
その一言で、室内の空気が一変する。誰もが無言で、本を手に取った。
ふと、窓の外から蝉の鳴き声が飛び込んでくる。白く塗られた外壁の向こう、潮の香りがわずかに届いた。
辰巳岬灯台は、今まさに「読む場所」としての姿を形作ろうとしていた。




