第24話_達成率50%の夜
6月28日、午後11時2分。
潮崎市、樹の実家の倉庫。天井の蛍光灯がジジと唸りながら、薄明かりを投げていた。
「50%達成か……ここまで来たんだな」
樹がパソコンの画面を見つめながら呟いた。
その隣では、亮汰が段ボール箱を抱えていたが、彼も思わず手を止めて、画面を覗き込む。
「ちょっと感動する数字じゃん? やっぱ俺の飛び込み映像が効いた説あるよな?」
「いや、あれで引いた人もたぶん多い」
祐介の冷静なツッコミに、倉庫内が薄く笑いに包まれる。
「でも、あと3日で残り半分……結構きついわよ」
理央が、資料の束をペンでトントンと整えながら、冷静に現実を突きつけた。
「逆に言えば、“あと3日”もあるってことだろ?」
亮汰は相変わらず前向きだったが、その瞳の奥にはほんの少しの焦りが見えた。
樹は席を立つと、天井の配線を見上げた。
この倉庫での会議も、もう十数回を超えた。真夏の夜も近づく中、皆の顔にも疲労の色が滲んでいる。
そのとき、不意に祐介がスマホを握りしめていた手を見つめた。
「……俺、父親に電話してみる」
「え?」
志歩が驚いたように振り返った。
祐介はゆっくりと息を吐きながら、スマホを手に立ち上がった。
「資金の相談……頼れる人間が少ないからこそ、俺、今このタイミングでやらないとダメな気がする」
理央が目を見開き、少しだけためらったように言う。
「それって、確か……距離を置いてたんじゃ」
「そう。でも、自分を変えたくて、この灯台計画に乗った。だったら、ここで逃げたら意味がない」
沈黙。
数秒の間を経て、亜梨沙がぽつりと口を開いた。
「……慎重な判断じゃないかもしれない。でも、私は祐介のその決断、応援する」
「私も」
志歩がスマホを握ったまま笑顔で続いた。
「模倣じゃなくて、自分の言葉で動いてるって、いいなって思った」
「……ありがとな」
倉庫の外に出た祐介の背中を、誰もが見つめていた。
夜の風が少しだけ冷たく吹いた。
彼はスマホを耳に当てる。
ワンコール、ツーコール――
『……もしもし』
懐かしい声が、梅雨明け前の夜に、静かに届いた。




