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潮崎灯台リライティング ―嫌われ公務員と五人のわがまま再建日誌―  作者: 乾為天女


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23/40

第23話_ネットでの批判と反論

 6月25日、午後10時。

 理央のワンルーム。薄暗い室内に、ノートパソコンの画面だけが青白く光っていた。

 「……うん。来たわね、やっぱり」

 クラウドファンディングを始めて3日。初日は応援コメントが目立ったが、今日になって一変した。

 《地域振興っていうけど、雇用は?》

 《図書館とか今さら誰が使うの?スマホで充分でしょ》

 《ぶっちゃけ、リゾートホテルのほうが地元には得じゃね?》

 画面を見ながら、理央は小さく鼻で笑った。

 「よくもまあ、表面だけで判断できるもんね」

 隣では、祐介が書類を束ねながら椅子にもたれている。

 「批判されるのは想定内だろ?」

 「もちろん。感情的になる気はないけど、“数字で返す”つもり」

 理央は一つひとつ、コメントへの返信文をタイプし始めた。

 《図書館とか今さら〜》というコメントには、

 >「潮崎市には市立図書館が1館しかありません。アクセス困難な高齢者や児童には不便で、海沿いにもう1拠点できれば利便性が向上します」

 《リゾートのほうが得では?》には、

 >「当該開発は外資系によるもので、雇用は県外人材が中心。地域循環型経済にはつながりにくいと考えています」

 「……言葉でぶつけ合うと、どうしても感情になる。でも、データと論理なら、相手が誰でも正面から行けるわ」

 「まるで、理央らしい答え方だな」

 祐介の声は、少しだけ安心しているように響いた。

 そのとき、パソコンの画面が一度点滅し、新しいコメントが表示された。

 《なんで今さら灯台?自己満?》

 理央の指が一瞬止まった。

 そのコメントは、どこか妙に鋭く、そして正直だった。

 「……祐介」

 「うん?」

 「これ、私じゃなくて、樹が答えたほうがいいかも」

 「了解。転送しとく」

 そして数分後。

 《コメントありがとうございます。確かに、自己満かもしれません。でも僕たちは、この町で“消えそうなもの”を誰かが拾い上げる経験を、次につなげたいと本気で思っています》

 理央は、その返信を読み返し、ゆっくりと微笑んだ。

 「……やっぱり、こういうのは彼にしか言えないのよね」

 時計の針は、23時40分を回っていた。

 支援金額は、じわりと71%に達していた。

 理央は最後に、更新ボタンを押して、クラウドファンディングページの「活動報告」に一文を添えた。

 >「私たちは、感情よりも事実を信じています。だから今日も、数字と根拠で、まっすぐ進みます」

 潮崎の夜は、静かだった。

 だが、画面の向こうでは、誰かがその文章を読み、支援ボタンに手を伸ばしていた。

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