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0Dead『希咲望のバレンタインデー』

ある教室内で異様な状態が起こった。

するとある顔立ちの良い男子生徒が気まずそうに望に聞いた。


「なあ……希咲……それは……そのチョコは……貰ったのか?」


とそれを聞いた望はキョトンとしながら口をもごもごさせながら


「ほれはほれが……」

「あ、食い終わった後でいいから」


と言ってまずは望がチョコを食べ終わるように言った。

望は口の中のチョコを全て


「ゴク」


と飲み込んで


「貰ったって……これは俺が全部買った物だぞ……沢田、今日見たら安売りしてたんだ、先生もなぜか今日はチョコを食べていいって言ってたしこの際だからな!」


と言った。

この男子生徒の名前は沢田(さわだ) 誠司(せいじ)という名前で希咲望とは高校1年の時に取り敢えず仲良くなった存在であった。

それを聞いて沢田は


「あの……な……貰えなかったんだろう状態は分かるんだが……だがな……何も大量購入してそれを教室内で食べなくてもいいだろ?」


と言った。

望は


「さっきから何の話をしてるんだ? 貰う?」


と顔をしかめながら聞いた。

沢田は


「だから! バレンタインデー!! チョコを貰う日!!」


と少し怒りながら言った。

望は


「フン」


と鼻で笑い言った。


「何を言ってるんだ? この世にチョコを貰える日がなんてあるわけないじゃないか」


と呆れるような口調で言った。

普通ならそれを聞けば腹が立つが

沢田はあまりにも異様な……そして異常な状態で怒る気にもなれなかった。

それどころか


(これは……どういうことだ? あまりにも貰えなかったからこいつの中でバレンタインデーという存在が消えたのか? それともバレンタインデーを無かったことにして自分を慰めているのか……)


と考えていた。

すると周りの女子や男子は


「なにあれ……」

「マジヤバくね? 希咲って奴全く気にも留めてなかったけど……」

「あいつにこれから近づかない方がいいのかな……」

「見ろよ……あのみじめな姿を……」

「俺等はあれよりマシだろうな……」


と話していた。

すると教室のドアが開き一人の女子が入ってきた。

するとクラスメイト達がざわついた。


「おい、時任(ときとう)さんだ」

「ああ、女子からも男子からも厚い信頼を得ているあの」

「確か、なぜか今希咲と話していた沢田の彼女だっけ……沢田君も時任さんに負けず良い男子だからねえ」


と噂のように話していた。

時任は


「さっ沢田君、ちょっといいかな……」


と少し緊張しながら話しかけた。

沢田は


「お、おう、良いぜ」


と少し照れ気味に言った。

沢田自身もどういう用件かは分かっていた。

そして、時任は


「チョッチョコ作ったの……バレンタインデー、食べてくれ……」


そこで時任の時は止まった。

たまたま緊張しながら目を逸らした先に望が大量購入したチョコの山を目にしてしまったのであった。

時任は


「えっと……きっ希咲君……それ……貰ったんだよね……」


と言い終わる前に気になってしまったのか望に質問をしてしまった。

望は


「……さっきも言ったけどこれ俺が買った奴だけど……」


と言った。

時任は


「えっと……今日はバレンタインデーチョコを女子から貰う日じゃ……」


と言うと望はあ


「? 何言ってんだ? これもさっき言ったけどチョコを貰える日なんてこの世にあるわけないだろ?」


と言った。

時任は


「……希咲君……どうしちゃったの?」


と沢田に聞くと


「……分からん……多分もらえない現実逃避かバレンタインデーそのものがこいつから消えてなくなってるかだと思うんだが……」


と言った。

時任は


「そっそうなんだ……サッ沢田君! とにかくチョコ貰ってくれる!」


と言って先にチョコを沢田に渡した。

沢田も嬉しそうに


「あ、ありがとう!」


と気を取り直していった。

そして時任は望の異様な光景が気になってしまったのか


「えっと、希咲君……沢田君のチョコを作って余った分で義理チョコ作ったんだけど……いる?」


と聞いた。

するとクラスメイト達は


「さすが! 時任さん! あの希咲にもチョコをお恵みになるとは!」

「私涙が止まらないわ……」

「ああ、沢田も気を使って話しかけるぐらいだし!」


と言って微笑ましい様子になった。

望は呆れたように


「おいおい、今俺自分で買ったチョコを食べてるだぞ? お前のチョコを食べる容量があるわけないだろ?」


と言った。

クラス全体が


「「「「「「ええええ……」」」」」」」


ガチ引きした。

沢田も時任も


「「ええええ……」」


さすがにガチ引きした。


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沢田と時任は一緒に帰っていた。

時任は


「あの……この話題持ってくるのもあれなんだけど……希咲君……大丈夫?」


と聞いた。

沢田は


「……分からん……だが只ならぬ様子だ……わざわざバレンタインデーの日にチョコを大量購入、そしてそれを教室内で食べ始めるという行為……仕方ない……身内に聞いてみるか」


と言った。

時任は


「みっ身内」


と時任が聞いた。

すると


「お! 沢田君じゃん! 何! どうしたの! 私に用なんでしょ!」


と言って瑛代が現れた。

沢田は


「相変わらずのようだな……初めて会った時からそうだったけど……」


と呆れたように言った。

時任は


「この子は?」


と聞くと沢田は


「希咲望の妹、希咲瑛代だ」


と紹介した。

瑛代は


「で! 早速だけど! 兄貴がなんで教室内で大量購入したチョコを食べてた事なんだけど!」

「なんでそれを聞こうとしたことを知ってるんだ! 本当にお前怖いんだけど! 俺が初めて会った時! 俺の名前を言った時からお前はそうだよな! 変だろ!」


と言った。

時任も


「え……」


と少し怯えた。

瑛代は


「まあまあ、時任ちゃんも! 落ち着いて! 二人の仲を引き裂こうなんて思ってないから!」

「なんでそれを!」


時任はさらに怯えた。

瑛代は


「ちなみに、今日渡したチョコは何度かしっぱ……」

「止めて! 本当にやめて! 怖いから!」


と青ざめながら言った。

沢田も


「いいから希咲について」

「私も希咲だけど……え! 何! 私の武勇伝でも語ろうか!」

「それはいい! 長いから!」


と言って本題に入った。

そして瑛代は


「じゃあちゃんと話すよ……」


と言って望のバレンタインデーのことについて話し始めた。


「実はね? 昔兄貴が小学校の頃なんだけどたまたま2月14日に図書の時間で返さないといけない本があったんだけどランドセルに入らなくて別の袋に入れて行ったんだよ」


と言った。

沢田は


「ああ……なるほど」


と少し理解した。

それを聞いて時任は


「? どういうこと?」


と沢田に聞くと


「つまり、その袋を持って行ってしまったせいで希咲がチョコレートをたくさん貰おうとしてただとかそういうことを言ったクラスメイトがいたってことだよ……」


と言った。

瑛代は


「さすが、鋭いね」


と言った。

時任は


「え? でもそれって図書の本を持っていくためなんでしょ? ちゃんと説明すれば済む話じゃ?」


と言ったが沢田は


「いや、ちゃんと説明しても無駄だろう、面白いネタを見つけたら皆に言い振らして笑い者にする奴は多い、そんな絶好のネタを見つけてやらない奴はいないんだよ」


と言った。

瑛代は


「そう、兄貴は皆の笑い者にされた挙句、いつも馬鹿にしてきた女子達からチョコの欠片をカバンの中に大量に入れられるという嫌がらせを受けてみんな笑いながら欲しかったんだろ? 舐めるように食べろよ、って言ったりしてたみたいだよ、さすがの兄貴も来るものがあったらしくてそれ以来お兄ちゃんの中でバレンタインデーは消え失せた」


と言った。

時任は


「そんなことが……結局そのチョコはどうなったんですか?」


と聞くと瑛代は


「ああ、帰った後すぐにゴミ箱に捨ててたよ? めっちゃ蟻湧いてたけど」


と言った。

沢田は


「そっそうか災難だったな……だがそれだと家族からのチョコも受け取らなさそうだな……」


と言った。

瑛代は


「それなら心配ないよ? 私とお母さんでチョコが安売りされてるよっ今がチャンスだよ! って言って兄貴の財布にお金をこっそり入れた分で買わせてるから実質上げてるよ! +ホワイトデー兄貴の財布から抜き取った金を出して出かける際にチョコをお母さんと私分買ってきてって言って行事は熟せてるから!」


と言った。

二人は


「「そっそうなんだ……」」


と苦笑していた。


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パンデミックが起こった後


二人は教室の隅でゾンビに囲まれながら


「沢田君……私達……死ぬのかな」


と時任は泣きながら言った。

沢田は


「……多分な……」


と言った。

時任は


「そうか……でも誠司君となら……いいかな……」


と言った。

沢田は


「俺も……俺も早奈美(さなみ)となら……」


と言って抱きしめあった。

時任は


「そういえば……希咲君……どうしてるかな」


と言った。

沢田は


「妹の方か? アイツなら大丈夫じゃないか? あんな感じだし……」


と言った。

時任は


「もう、瑛代ちゃんについては何も心配してないかな……たまに会ったときとかも分かるけど……あの子強いし……ここで死んでしまう玉じゃないよ……」


と言った。

沢田は


「そうなると兄貴の方か……あいつは分からないな……2年になって話す機会も減ったし……」


と懐かしそうに言った。

時任は


「そうね……あのバレンタインデーの凄い状況を思い出すね」


と言った。

沢田は


「そうだな……あれは忘れたくても忘れられないよ……あいつとの思い出で思い出せるのがそれって……なんだかなあ」


と苦笑しながら言った。

そして二人は


「「もし……希咲君が生きているなら……それはそれでおもしろいかも」ね」


と言った。

そして、二人は覚悟を決めて互いの首の頸動脈を斬って自害した。


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