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131Dead『欲に……』

セリスターの目の前にはめった刺しにされたラザーナ姫がいた。


「ラザアアナアアアアアア!!」


と叫び剣を抜かれてそのまま倒れこむラザーナ姫を抱えた。

隊長は


「あの時気絶したと思っていたがまさかここまで来てセリスターを守るとはな……その根性だけは認めてやるよ」


と言った。

セリスターは


「そんなあああああああ!! だめだあああああ!! 死ぬんじゃない!! お願いだああああああ!!」


とボロボロと涙を流しながら言った。

ラザーナ姫は


「あ……ああ……」


と声を出していた。

まだ息はあるがそれもすぐに失われる感触がセリスターの心の中へと流れ込んでいった。

隊長は


「セリスターよ、これが大切な人を失うという苦しみだ……あんたらが俺らに押し付けていたものはそれなんだよ……その絶望を抱えるんだな……」


と言った。

セリスターは


「何が……何が絶望だあ!! 貴様等は! 自分が守らなければいけない者を!! 殺しておいて!! 何故そんなことが言えるんだああああ!!」


と喚くように言った。

隊長は


「俺らの大切な者を勝手に決めんじゃねえ!! 俺らにとって大切だったのは家族だ!! 貴族制度だがなんだか知らんがこんな世界で俺らにそんなものを求めるんじゃねえ!!」


と言った。

兵士達も


「そうだそうだ!」

「失ったことがないからそんなことが言えるんだ!!」

「上級国民はいいよな!! 俺等下級国民よりも優先される命で!! だがこんな世界で上級国民も下級国民なんか関係ねえぞ!!」

「もうすでにすべてが平等なんだ!! 俺等に戦って欲しいなら報酬を寄越せ! 慈善事業だなんて真っ平だ!!」


と言った。

そして、隊長は


「それに比べれば俺等を利用していた希咲さんはちゃんと報酬をくれた、俺等をゾンビにする計画を立てたがその前にエロ本でいい気分にしてくれた……ほんの些細な報酬だけでも俺らは……動けたんだ……」


と言った途端隊長は思った。


(俺等は……ほんの些細な幸せが……欲しかったんだよな……だがさっき俺らは……些細な幸せではなく全てを欲していた……まさか!! 俺等は! 俺等は欲にのまれたのか!! さっき騎士や貴族や令嬢共を蹂躙しようと考えていた! 明らかに!! そんな! まさか!! 俺等こいつら貴族達と変わらないじゃないか!! 人が死んでいるのに自分達のことだけのこいつらと同じように!! いや! 寧ろ人を殺して快感を味わっている分俺等の方が質が悪い! だから希咲さんは一緒に俺等と死のうと……まさか! そんな!)


と隊長は深読みし始めた。

他の兵士達は


「隊長? 早くこいつらを蹂躙しましょうよ?」


と飢えた獣のような眼をしていた。

隊長はゾッとした。


(これじゃあ! 本当に! こいつらの言う! 怪物だ……そうだ! 希咲さんの言葉を思い出せ!!)


と望が言った下らないことを思い出した。

兵士が姫に犯らせろと言った時


『それは普通にやり過ぎだ! だからこそのパンツだ! パンツがあれば俺らはイケる! 抜ける! そうだろ!』

『そして奴ら騎士共をゾンビ化させて腹いせすればいい! それだけでも少しスッキリすると思わないか? 最後人間は絶望するがそれなら今までの恨みぐらいは死んだ後でもいいから晴らしたいと思わないか? そう! ゾンビ化してあいつらを絶望の淵に叩き込むことぐらいは出来る!』


の言葉を

どれもあまりにも欲が小さかった。

パンツにしても腹いせにしても

命を懸けて行うことではない。

しかし、隊長も他の兵士達もそれだけで足りてしまった。

そして隊長は


「お前達引くぞ」


と言った。

兵士達は


「え!」

「ドっどうしてですか!!」

「これからなのに!」


と少し不満そうだった。

隊長は


「それだからだ」


と言った。

兵士の一人は


「? え? どっどういう?」


と聞くと隊長は


「俺等は人を殺す事を楽しみ始めた……それじゃ本当に俺等は化け物になってしまう、希咲さんは言ったじゃないか、やり過ぎるなと腹いせだと……忘れたか?」


と言った。

兵士達は一瞬キョトンとしたが


「! まっまさか……欲に……」

「溺れてしまったというのか……俺等は……」


と恐怖した。

欲を味わい過ぎて歯止めが効かなくなってしまったことを皆悔いた。


「こっこれじゃ……本当に化け物だ……」

「そうだ……俺等は少しでもいいから幸せになりたかっただけだ……これじゃあだめだ……」

「俺等は俺等で自分達の小さな幸せを見つけないといけないのかもしれないと……希咲さん……ありがとう……たくさんのことを教えてくれて……あなたの言葉がなければ俺等は取り返しがつかないところまで行ってしまっていた……」


と反省をした。

セリスターは


「何が取り返しがつかないところに行くところだ!! 姫を殺して! 何が!!」


と怒鳴った。

しかし、隊長は


「だったら言わせてもらう……俺等の家族が死に俺等を酷使したお前等が……どの面下げて言ってんだ? それはお前等が今までしてきた報いだと思え……お前等に対してはこれぐらいで勘弁してやる……だがもうお前等に仕えるつもりはない……じゃあな……騎士様」


と言って皆その場を立ち去った。

セリスターは


「待て!! 貴様等!! 絶対に! 絶対に滅ぼしてやる!! 希咲同様に!! 殺してやるうううううううう!!」


と唸った。

そして


「糞! 糞おおおお!!」


と言ってラザーナ姫を揺さぶった。

ラザーナ姫は


「……よか……だ……死んで……なくて……」


と微かに声を出す。

すると


「おねえ……様……」


と一人の少女の声がした。

そして、セリスターが後ろを見るとそこにはセリーナがいた。


「セリーナ様……申し訳ございません……守れませんでした……」


と涙を流しながら言った。

セリーナは


「おねえざまあああああああああ!!」


と言ってラザーナ姫に駆け寄った。

そして


「おおねえざまああああ!! 逝かないでええええ!! お願いいい!! わだじをおいでいかないでええええええ!!」


と泣きじゃくりながら言った。

ラザーナ姫はセリーナの頬を触り


「セリー……ナ……私の可愛い……セリーナ……綺麗に……なるんです……よ……セリスター……セリーナを……おね……がい……」


とそのまま頬を触れていた手が落ちてそのまま動かなくなった。

目はすでに生気が無くなっていた。

セリスターは


「ラザーナ! らざああああなあああああああ!! お願いだあああああ!! 死ぬなあああああ!!! 死なないでくれえええええ!!」

「おねええざまああああああああ!!」


と二人は泣いた。

セリスターは


「きざぎいいいいいいいい! お前はああああ!! お前はこれが狙いだったのかああああああああ!!」


と泣きながらセリスターは叫んだ。


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「おおう!!」


と望はいきなり声を出した。

アンジェリスは


「何? どうしたの?」


と聞くと望は顔を赤らめて


「誰かが俺の噂をしてる……」


と言った。

アンジェリスは


「変なくしゃみだね……」


と言ったが望は


「いや……くしゃみじゃなくて……息子が……」


と言った。

アンジェリスは笑いながら


「キモイから近づかないでね?」


と優しく言った。

和子と剣子とレベッカも


「あ! そこから絶対に距離詰めないでね!」

「強制だからな!」

「近づいたら息子潰すから!」


と軽蔑の目線で言われた。


「それじゃあ支障出るくね?」


と望は反論したがしばらく距離は置かれた。


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