最終話
「ご注文のカニカマボコ、お待たせしましたー」
「あ、こちらですわ店員さん!」
私はカマボコ専門の料理店へとコミット様を連れ込みました。
「さ、コミット様。今日は沢山飲んで食べて帰りましょう?」
「……うぅ~。今日は厄日だ~……」
「ほら、美味しいカニカマボコですわ。沢山食べましょう?」
「うぅ~、死にたい~……」
「飲み物も飲み放題ですわ。好きなだけ飲んで帰りましょう? 未成年ですからお酒は飲めませんが」
「うぅ~、いっそ殺せ~……」
「……しゃんとしなさい! 王子!」
私はペチンと王子の頬を叩きました。
「痛っ! な、なにするんだカニカマボコ!」
「王子ったらみっともないですわ。あんなに家庭科の時間で死にたくないって言ってた男が、この程度の失恋で死にますか?」
「……」
「その程度の事で取り乱しているようでは王子なんて勤まりませんよ。昔言ってたじゃないですか、『もう2度と、喋る食べ物ども如きで取り乱すようなことはない』って。あの言葉も完全にお忘れですか?」
「……すまない。確かに取り乱してた。落ち着くよ」
「素直でよろしい。さ、宴の続きを始めましょう?モグモグ……」
「モグモグ……なぁカニカマボコ」
「なんですの?」
「今日はありがとう。色々と世話になった」
「いえいえ。それほどの事はしていませんわ」
「モグモグ……あのさ、カニカマボコ。私は未だお前の事は意味不明な化け物としか見えていない」
……
「でももしも。もしもセバスチャンが言っていたようにお前の事が意味不明に見えなくなった時が来たなら。その時はその、だな……」
……
「……いや、なんでもない。さぁ、今日は私が奢ろう。お前も好きなだけ飲んでくれ」
……
「……カニカマボコ? どこだ?」
……
「!? ま、まさか……注文したカニカマボコと間違って食べちゃった……って事はないよな?」
……
「なぁ、違うよな、な。嘘だよな。私、幼馴染を食べたとか言う大変な事しでかしてないよなっ!?」
……
「う、うわああああああああああっ!!!!!! カニカマボコに慣れかけて早々これかよおおおおおおおおっ!! ぐわああああああああああああっ!!!!!!」
こうして、私は誰にも食べられないまま舞台から退場すると言う悲惨な結末を回避することができましたとさ。
めでたしめでたし。
(なお、カニカマボコはこの後きちんと量産されましたのでなんら問題はありません)
お粗末さまでした。