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画策 その1

 <CLUB WOMAN>に入店して間もなく一年が経とうとする十二月上旬の土曜日。閉店後に藍子店長から事務所に呼ばれた。

「ねえ夕起、雑誌のグラビアに出てみる気ない?」

「グラビア? 考えもしませんでした。そんな依頼がきてるんですか?」

 グラビア撮影は<CLUB WOMAN>のホームページで既に経験済み。洋服から下着姿となり、最後は手ブラで終わるというライトなものだけど。


「そうなの。風俗雑誌の編集部から誰かいないかって言われてるんだけど、夕起はまだまだ売り出し中だしかわいいから良いんじゃないかと思ってね」

「そうですか……」

 確かに売り出し中ではありますけど、私よりかわいい子は他にも一杯いると思いますが……っていうか「かわいいから良い」というのは単なる名目だろう。

 売り出し中の私を少しでもメディアに出して店の知名度を上げようという、藍子店長の画策。知名度が上がれば売上にもつながる、経営者としては当然の心理である。

 そこまで推測できたのなら仕方がない。


「分かりました。撮影はいつですか?」

「さすがアグレッシブだね」

 思惑通りにいった店長は欣欣然。

「撮影は明後日の月曜日の朝十時からよ。頑張ってね」

「随分と急なんですね」

「ギリギリまで検討してたからさ。ごめん」

 店長は欣欣然としたままぺこりと頭を下げる。

 

 月曜日は私は休日。

「初めからあたしにやらせようと決めてたんじゃないですか? ギリギリに伝えて有無を言わせず承諾させようっていう魂胆だったんですよね」

「バレてたか」

 藍子店長は肩を竦める。それぐらい誰だって推察できると思うんですけどねえ――



 二日後の月曜日、撮影は東京・八王子市内の公園とホテルの一室で行われた。

 朝八時にホテルに集合し、衣装に着替えメイクを済ませて公園に移動する。

「普通の公園なんですね」

「高尾山にも一応撮影申請したんだけどさ、許可が下りなかったんだよ」

 カメラマンは苦笑した。風俗雑誌がネックになってしまったか――

 設定は彼氏と公園でデートした後、ホテルでSEXするという在り来たりなもの。


「ブランコ、もっと高く漕いでみようか」「逆上がりやってみて」。カメラマンが次々に注文を出してくる。だからミニスカートってわけね。要するにパンチラを狙っているのだ。

 公園での撮影を終え、またホテルへと舞い戻る。

 人前で全裸になるのは慣れているとはいえ、今日は彼氏役のカメラマン、ヘアメイクの女性、照明の男性と三人に見守られていて雰囲気は全く違う。


 否が応でも緊張してしまい、初日のお客の時に体感した夢見心地の状態。それでいて唇はブルブル震えている。

「だいぶ緊張してるみたいだけど大丈夫?」

 カメラマンは心配している様子。

 でも、

「大丈夫です」

 ここまできて「無理です」とは言えませぬ。


 撮影が始まり、一枚ずつ服を脱いでいく。

いくら緊張していても、私も「脱ぐ」ことに関しては曲がりなりにもプロ。そう自分に言い聞かせて躊躇なく脱いでいった。

 全裸になってベッドに横になると、彼氏役のカメラマンがレンズを向け近付いてくる。 彼氏とSEXしている状態を表情と身体で演じていく。


「良いよ」「気持ち良さそうに見えてるよ」「もっと大胆になってみようか」。カメラマンに乗せられ、どんどんリラックスしていく自分がいる。

 裸体を撮られる感覚ってこんなにも開放的になれるものなんだ。なーんて雑念が入る程、頭も夢見心地の状態から落ち着きを取り戻していく。


 そして最後のシャワーシーンを撮影し、約四時間で全ての撮影は終了した。

 これでギャラは二万五千円也。今日撮影した写真が、来月に刊行される風俗雑誌に掲載されることになる。


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