表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ネタ不可避の推しを生き延びさせるために、転生モブは全力を尽くします!  作者: ちまはは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

35-大馬鹿者は俺です

 


「研究内容の秘匿性の問題です。」


 急に、応接室の入り口から声がした。

 ルシアン様だ。それと、ジュールさん。


「すみません。遅くなりました。」

「先日は、村でご歓待頂きありがとうございました。」

「あ、こないだのお兄ちゃん。」


 カイが、顔を上げた。

 カイと俺は、マリナさんの話の邪魔をしないように、絨毯の上で、おとなしく石の色変え遊びをはじめていたところだ。


 ジュールさんはカイに手を振ってくれた。


 で、秘匿性ってなんで?


「魔石や魔獣核の運用管理は、国によって統制されています。」

「でも、色なしは、その枠外よね。」


 マリナさんが答える。


 うん、一昨日、ギルドでリーゼさんに聞いた。

 直取引OKって。


「ええ、色なしが色なしのままなのであれば。」


 ルシアン様の笑顔。


「研究の中に、色なしが色付きになる事象についての実験があります。」

「…これ?」


 マリナさんが、カイの手元のクズ石に視線をやる。


「色が付いたとしても、この大きさじゃ、市場価値は無いに等しいわ。」

「ですから、研究材料です。色付きになったものは、そのまま魔力観測機の素材として利用します。」


 うん、そう。俺が、そう作ってる。


「魔力観測機とその運用も研究の一つですので、実用化され公になるまで、材料などの詳細情報は秘匿されます。」


 へー、そうなんだ。


「王都近郊で使用済みの魔獣核を回収して利用した場合、回収先から材料の情報が漏れてしまう可能性が高くなります。」

「使用済み魔獣核はギルドの管轄外になりますので、何があっても介入することはありません。」


 ジュールさんも解説に入る。何の解説?わかんないけど。


「ただし、王都で動力源として利用されている魔獣核は、この石より大きいものがほとんどなんです。」


 マリナさんが、片眉を上げて、ジュールさんに聞く。


「…単純に、割ればいい、という問題でもなさそうね。」

「はい、万が一、使用済み魔獣核に価値があると知られれば、」

「価値の無いものに価値がつくことになる。」

「ええ。」

「ギルドも把握してない、色なしでもお金になる、なら、奪い合いになっちゃうわね。大きいなら、もっと価値があると思われても不思議じゃないし。」

「そうです。」

「大混乱ね。…なんで、色なしに価値が出たのか知りたくなっちゃうわ。」


 マリナさんが、俺を見て肩をすくめる。


「秘匿事項を口外しないこと、が契約に含まれるってことね。お互いのために。」


 どういうこと?


「お金を出してでも、研究内容を欲しがる連中が増えるってこと。」

「…。」

「もっと言うと、色なしが色付きになる秘密に気づかれちゃうかも。」

「…どういう…、」

「秘密を知りたがってる人に、色付きにできるって知られたら、そのあと、どうなるかしら。」


 カイを見る。

 手のひらの上の、もとは色なしの石。

 今は色変えして、キラキラになった石を持って、俺に見せてくる。

 これを、外で誰かに見られていたとしたら。


「みて!」


 いい、笑顔で…。


 (―― っ!)


 呼吸が止まった。

 音にならない音が、喉奥から漏れる。


 …ああ、俺は、馬鹿だ。大馬鹿だ。

 そんな危険(リスク)に気づかないなんて!


 偶然気づいた、魔石、魔獣核の性質。

 性質を活かして、発展させて、魔力観測機に組み込む。研究の事しか頭になかった。

 ほんとなら、研究を進めるなら、成果だけじゃなく、危険も考えなきゃならなかった。


『価値の無いものに価値がつくことになる。』


 マリナさんの言う通り。

 価値の上がったものに群がるヤツらがいるって、知ってただろ、「俺」は。

 小さな子供にも、悪意を向けられる大人はいる。どこの世界でもだ。

 そして、悪意に狙われやすいのも、力の弱い小さな子供だ。

 俺が守んなきゃいけないのに。俺が考えなしなばっかりに、大切な…。


 頭が、くらくらして…。呼吸が、浅くなって…。目が…。


「…レイン!」


 背中を、ドン!と強く叩かれた。


「…くはっ、ぅ、ぁ、…」

「レインくん、しっかり!」


 ジュールさんが、支えながら肩のあたりをさすってくれてる。

 俺、絨毯に倒れこみそうになったみたい。


「そんなに、驚かせるつもりじゃなかったの。」

「荒療治過ぎました。すみません。」


 マリナさんとジュールさんが、俺をあちこちさすりながら、謝ってくれる。


「だいじょぶ、わるくない、二人とも。」


 俺は、息を整えながら、なぜかカタコトで謝っていた。

 うん、あくまでも可能性、の話だよ、ね。わかってる。わかってるけど、「もしも話」で受けたダメージが大きくて、自分でもびっくりしてる。


「君は、自分のことには無頓着なのに。」


 ルシアン様が、呆れてる。


「身近な人間のこととなった途端に、そんな風に崩れちゃうんですか。」

「ちょっと、ルシアン様。言い方!」

「ごめん。悪かったわ。いつものレインの様子だと、強めに行かないと効かないと思って。」


 マリナさんも、謝ってるけど、内容は謝って無くない?俺、何だと思われてんの?


子供(カイ)をだしにしたのは悪かった。でもね、実際、あなたが考える最悪の事態になんてさせないわよ。」

「レインくん。大人を信じてください。」

「危険に気付いたのなら、今から対策を考えればいいんです。」


 ルシアン様も、ジュールさんも、静かに頷いた。


「秘匿も契約も、そのためにあります。」

「レインくんが考えた研究は、我々大人が責任を持って守ります。」


 …そうか。俺一人で全部守ろうとしなくていいんだ。


「でも、俺の、自覚も足らなかった。本当にごめんなさい。」

「…レイ兄…。」


 カイが、目を見開いて寄ってくる。


「大丈夫。…カイのせいじゃないよ。」

「…。」

「大丈夫。」


 俺を心配して、服を握りしめる小さな手がある。


 うん、大丈夫。

 ちゃんと、ちゃんと考えるから。俺と、俺が変えちゃったかもしれない、この世界の「何か」について。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ