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死ネタ不可避の推しを生き延びさせるために、転生モブは全力を尽くします!  作者: ちまはは


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28-窓の向こうへ

 

「今日は、お庭に出てみましょう。」

「…おにわ、ですか?」


 そう言うと、シエルはぱちりと目を瞬かせた。


「はい。窓から眺めるだけじゃ、もったいないですから。」

「でも…。」


 小さく躊躇う声。

 シエルは、視線をモロー先生に向ける。


「はい、大丈夫ですよ。」

「許可も出ました。」

「日よけをきちんとして、短い時間ならば。体調も落ち着いていらっしゃるようですし。」


 にこにことシエルに答えるモロー先生。

 到着後すぐの健康チェックはOKだったみたい。

 もちろん、今回も俺謹製の魔力観測機による魔力測定は済んでいる。


 モロー先生は、以前から適度な運動を勧めていたらしい。

 でも、その提案が受け入れられることはなかったという。

 なので、ここに来る馬車の中で、御当主様の許可のお手紙見せました。

 今回お留守番というか、測定係から抜けられなかったジュールさんには、事前に計画チェックしてもらってたし、ベルトラン様へお知らせ済みだから、そっちは問題なし。

 お医者様の目で見てOKであれば、その範囲で、いろんなことをさせていいよっていう一文を入れてもらってたからね。


 うん。ほんと、無敵のアイテム。


 窓越しの花々。

 見慣れている景色のはずなのに、その向こうへ出るという発想は、あまり無かったのだろうか。


 ちょうどその時、庭仕事中のヨハンさんが、窓の向こうで、剪定ばさみを腰に下げたまま振り返った。

 声をかける。


「ヨハンさん。案内をお願いできますか?」


 ヨハンさんは一瞬目を丸くしたあと、照れくさそうに笑う。


「私でよろしければ、喜んで。」


 その言葉を聞いて、シエルの青い瞳が、少しだけ揺れた。


「…わたしも、いって、いいんですか。」


 許可を求める癖が染みついているような問いだった。


「もちろん。」


 俺は笑って頷く。


 マルタさんが、手早く散策の準備を始める。


「では、日よけのお帽子と、羽織るものをお持ちしますね。」


 ヨハンさんやマルタさんも、小さなシエルがいつ外に出てもいいように、外靴や帽子や、成長に合わせたものをずっと準備してたんだって。

 つば広の帽子と靴はハリのあるやわらかい生地で出来ていて、繊細な刺繡で飾られていた。

 マルタさんの手仕事かな?


 シエルの寝室の隣に、普段は使わない小さな応接間のテラスがあって、そこから庭に出られるらしい。


 外靴を履かせてもらって、こわごわと、テラスへ。

 足取りはしっかりしていたけれど、まだ迷いの見えるシエル。


 俺は、シエルに向かって片手を差し出す。


「一緒に、行きましょうね。」


 ほぅ、と息をついて、シエルが手をのせる。


「…はい、いっしょ、ですね。」


 そして、敷石に、一歩踏み出す。


 天気もいい。日差しも温かく、風もやわらかく、爽やかに吹き抜ける。

 敷石も、陽をはじいて白く輝いてる。

 庭先の花も、色とりどり。緑も鮮やか。


 一歩、二歩、三歩…。


「…!」


 声にならない歓声が聞こえてくる。

 一歩進むごとに、「楽しい」が溢れ出る表情。


 シエルの瞳が、キラキラと輝いてる。尊い。

 陽ざしより眩しいよ。その笑顔。


 これ、最高のお庭デビュー、飾れたんじゃない?




 **********




「『離れのお庭図鑑』を作りましょう。」


 庭の散策の後、俺は、そう提案した。


 外にいたのは、ごく短時間。体感で15分ってとこかな。

 日差しって、慣れないと浴びてるだけで体力つかうからね。


 ヨハンさんに花の名前を聞いて。

 しゃがみこんで花をのぞきこんだり、小さな虫に驚いたり。

 もう、全部可愛い。何しても可愛いんだ、この(シエル)し。

 可愛い、の大渋滞。


 可愛いけど、きみの身体の健康も大事。

 先は長いからね。

 体力をつけながら、少しづつ外時間を増やしていこうって、モロー先生も言ってる。


 もっと外にいたかったのにって、すねた顔のシエルも、もちろんスペシャルに可愛かったです。




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