25-校長室(概念)に呼び出しされました
「…それで?」
ギルドで村あての手紙と、荷物の運搬依頼出して、そのまま連行されて研究塔に。
ギルドは商業地区にあったから、帰り道の馬車の沈黙が拷問。
そんで、着いたら客用部屋で、ジュールさんに、ヒザ詰めっていうかゴリゴリに詰められています。
ずーっと笑顔なのが、怖い。
「レイン君の言う『ちょっと大きめの石』とは、具体的にどの程度の大きさなのでしょうか。」
ほら来た。絶対そこ聞かれると思った。
でもさぁ。本当にそんな大きくないんだよなぁ。色も悪いし。
「このくらいのー、」
親指と人差し指で輪っかを作ってみせる。
「色がほとんど抜けてるやつ。」
「魔獣核としては、大きめですが。」
「売れなかった石ですよ?」
隣街のギルドでは、大きくても魔力の抜けた色ナシは買い取ってもらえないんだよ。
大きいには大きいから、せっかくだし討伐お手伝い記念にって、おっちゃん達がくれるっていうんで貰ったヤツ。
記念品兼研究資料に、俺の実験部屋に何個か転がってる。
何かに使えそ、と思って取っておいたんだけど、ほぼ出番なし。で、今回、ようやく使い途を思いついた。
「村から出てきたときは、すぐに帰るつもりだったんで、」
「そういえば、そんなこと言ってましたねぇ。」
「いろんなもの置いたまんまで。」
「手荷物、トランク一個だけでしたもんね。」
「思ったより長居することになったんで、ついでにこっちでいろいろ試してみたいこととか、改良したいとことか、いっぱい出てきて、」
「ふーん。」
「辺境で集めた、えーと、計測値の記録とか、試作中の模型とか…。」
「で。」
ジュールさんが、とても、優しい、笑顔で、聞いてきた。
「何を試そうとしてるんです?」
すごく怖い。
どうする?早めにゲロっとく?
…なんか、その方がいい気がしてきたよ。ジュールさん、こっち見ないで。笑顔、怖い。
「魔石を経由したら、」
「はい、」
「体内の過剰魔力を、安全に放出できるんじゃないかなー、って。」
「…なんですって?」
ジュールさんの笑顔が、崩れてない。ヤバい。
「魔力観測機の仕組みの応用っていうか転用っていうか、安定しない人でも魔石を一旦経由させれば魔力が安定するし、そしたら魔力密度が上がりすぎて暴走するならその前に受け流しちゃえみたいなことができそうだなとか思ってたから、念のために大きめの石用意すれば魔力が大きめの人でもいけるかなって思って?」
「ち、ちょ、ま、ちょと、ちょっと待って!」
恐怖に駆られて、一気にゲロったら、ジュールさんが「あわわ」ってなっちゃった。ごめん。早口はヲタクの悪いクセ。
「…今の話を一つずつ順番に説明してくれませんか?」
「え?なにを?どこから?」
「いや、待って、今ここじゃない方がいいか…?私だけじゃ…。」
ジュールさんは深くため息をついた。
なんだかよくわかんないけど、ごめん。
「…とりあえず、今からベルトラン様とルシアン様にお時間をいただけるか確認してきます。」
え、何?面談?面談の予定を組むの?今から?
なんで?
**********
執務室の一角。
前回の大きな会議用テーブルではなく、立派な応接セットに案内されました。
本来であれば座り心地の良いであろうソファなのに、なんでしょうか、針の筵ってヤツですか、コレ。
目の前には、ベルトラン様とルシアン様。
俺の後ろ、扉方向にはジュールさん。万全のシフト。
気分は、職員室飛び越えて校長室に呼び出された小学生です。
「王都で、なかなかに充実した時間を過ごせているようで、何よりですね。」
ルシアン様っ。開口一番、なんてきれいなイヤミっ!京都人かな。
手元にある紙束。もしかしなくても、ジュールさんからの報告とか観察記録とか業務日報とかな気がする。
あっ、ああっ、ベルトラン様まで回し読みされてる…。
「『新型魔力測定器試験運用』は、実用化まで数か月を見込んでいるという話だったが。」
おもむろに発せられたベルトラン様の問いに、ルシアン様が答える。
「はい。最初の数回はレイン君に協力をお願いして、その後は研究員だけで行う予定でした。」
「君は、数週間の滞在予定と聞いていた。それとも、このまま王都に移住するつもりかね。」
ベルトラン様の視線が俺に向かってくる。あいかわらず、圧が、強い。
もう、手元の紙束記録だけで、俺の行動予測まで出来ちゃってるんですね。
ええ、観光だけの予定だったんですけど、隠し目的が達成されちゃったので、予定が伸びまくりなんです。でも。
「いえ、移住はしません。」
「だが、冒険者ギルドに、宿泊先の斡旋を頼んだそうだな。」
「思いがけず滞在が伸びたので、拠点探しをしたくて。」
ついさっきのハナシじゃん。超速で伝わってる。
ジュールさん、あんた、やっぱりシゴデキだよ。
「いっそのこと、王都に住んで、研究塔入りするのはどうです?部屋、用意しますよ。」
ルシアン様、雑な勧誘。ヤですよ。横入りみたいなズル。
研究塔入りしたくて真面目に励んでる人たちに悪いでしょ。
「王都に残りたいのは、研究のためではなく、個人的な理由ですので。」
うん、これは誰の為とか研究の為とか、そんなんじゃない。
全部、自分の為だ。




