23-父子関係の攻略法は考察したことありませんが?
…なんだかなぁ。めちゃくちゃ、気が、抜けた。
なんだこのヘタレ筋肉は。
いや、まじでヘタレすぎだろ?
『大泣きされるのが、辛くて。』?
辛いのは、シエルだろ?
父親として、普通にアウトだ。寝顔しか見てないのも、子供の成長曲線を知らないのも、アウトだ。
騎士団に、子持ちの先輩いないの?子育てあるあるとか、世間話しないの?『人見知り』を知らないの?
「…シエル様の年齢であれば、もう人見知りも無く、大泣きされることは無いと存じます。」
「そうなのか?」
「そうなんです。」
俺の頭の中の疑問は一旦抑えてみた。が、まだ、首ひねってるよ、この脳筋。
子育てあるある聞けるほど仲のいい友達なり先輩なり、いないのかな。
ぼっちかな、この人。偉くなると、逆に世間話する相手がいなくなっちゃうの?
いやいや、そんなの言い訳にもならんが。
『お前それで父親か!!』をとっさに飲み込んだ俺を、頼むからだれか褒めてくれ。
眉間に皺が寄ってるであろう俺を、ディートリヒが、ジッと見ている。
「君は、小さな子に慣れているのかな?」
「ええ、まあ。弟のような子がいるので。」
「では、聞いてもいいだろうか?」
「…なんでしょうか?」
計測した魔力計測の結果をまとめながら、話の続きを促す。
「身近に小さな子供がいたことがなくてな。」
「…はい。」
「私の子供の頃を思い出しても、」
「…はい。」
「兄の鍛錬の真似をしていたことくらいしか覚えていない。」
子供のころから脳筋かよ。しかも、いきなり鍛錬なの?木登りとか庭で走り回るとかじゃなく?それはそれで、すげぇな。
「話に聞くシエルは、静かで、本をよく読むと。」
まあ、そうだろうな。
俺も内心で頷く。天使なシエルが、静かに読書する姿。脳内再生、余裕だ。
ディートリヒが腕を組んだ。
「勉学から逃げてばかりだった私の幼い頃とは違いすぎて、」
…でしょうね。むしろ、想定内です。
「どう接したらいいかわからんのだ。」
ディートリヒは、真剣な顔で言った。
「私は、どうすればいいのだ?」
「…。」
(知らんがな。)
危うく口から出そうになった。
このヘタレ脳筋は、なに真面目な顔して、初対面の年下の未成年に子育て相談をしてるんだ?
シエルの血縁じゃなかったら、思いっきり、ケツ蹴り上げてるぞ、この野郎。
誰だって最初から親じゃない。
うちの父だって、新米とーちゃんの失敗あるあるを、未だに笑い話のネタにされるくらい経験してる。村のおっちゃん連中だって、そうだ。失敗して、いろんな人に支えられてフォローされる。それを繰り返してる。
泣かれて。
怒られて。
それでも、子供の側にいて、居続けたから、親になれるんじゃないのか?
(あんたは、一歩も踏み出せてない!)
(親になる、一歩どころかだいぶ手前で足踏みしてるだけだ!)
喉元まで怒声が出かかって、我慢した。
怒鳴っても、何にもならない。
優先するべきは、シエルだ。
シエルの心と身体の健康が最優先。笑顔と幸せを守るのが、俺の、最優先事項だ。
ここは、譲れない。譲らない。
「…ふー、」
ゆっくり息を吐いて、頭の中を整理する。
ゲーム記憶には無かった、シエルを取り巻く環境。
リュシエンヌの言葉。態度。
ディートリヒのヘタレっぷり。
ベルトラン様や、シュナイダー夫妻。モロー先生とジュールさん。
どこかに、糸口はあるはずだ。
みんながシエルを想ってるなら。
想いがすれ違っちゃってるなら。
まだ、取り返せる。
シエルが、孤独な誕生日を迎えずに済むのなら。
そう、思い出せ。
まずは、「シエルくんのお誕生日をみんなで祝おう計画」の第一歩だ。
「…じゃあ、会いに行きませんか?一緒に。」




