18-好奇心という名の種
いい質問もらいました!
「花や草にも魔力は含まれています。いろいろ計測した結果、それがわかりました。」
「これで、花のまりょくをはかってみてもいいですか?」
めちゃいい笑顔で聞かれた。かわいい。
でもなぁ。
「残念ながら、この魔力観測機では、花の魔力は測れません。」
「…。」
「まったく測れないというわけではありませんが、針が一瞬動くか動かないか、くらいの少しの反応しか出ないのではないかと思います。」
シエルの眉が下がった。あー、ごめんなぁ。
「花に含まれる魔力は弱すぎて、この魔力観測機では反応しないんです。」
「では、どのくらいのまりょくなら、はかれるのですか?」
「この魔力観測機の基準点、比べるための元々の位置を決めるのが、さらに小さめの石なので。」
クズ石を摘まみ上げる。
「その石より弱い魔力には、なかなか反応してくれないんです。」
「まじゅうかくじゃないものは、かんそくきにつかわないのですか?」
うわ、やっぱり、この子賢い。そこに気づくんだ。さすが、推し。天才。
「使えないことはないですが、魔獣核以外のものを使うと、計測結果が安定しません。えーと、長さを測るための紐の端っこを押さえる力が弱いと、紐がスポっと抜けたりして、結果がわからなくなったりするでしょ?」
一定の魔力濃度が長い期間保たれること。が、機器の基準点として使える最低条件だからね。
もっと言うと、石の純度の問題だと思うんだよね。再利用クズ石だと、壊れないギリギリで止められれば、同じ質を保てるわけだし。
「これは、安定した石を使うことで、人のもつ魔力以外のいろんな魔力まで、比べて測ることが出来るんです。」
「なるほど。魔石や魔獣核には、人と違って熱がありませんからなぁ。今までの熱を測る方式の魔力計測器では出来なかったことが。ということですな。」
「はい、基準点を作ることで、魔力だけを、目で見てわかるようにしたんです。」
モロー先生から、ナイスパス。
そう、魔石や魔獣核って、触っただけだと熱を感じないんだよね。
なのに、安定した状態で魔力を内包しているし、意識して触ると、魔力を石と人の間で移動させたりもできる。ホント不思議。
「つまり、魔力はいろんなところに当たり前にあるということが、この魔力観測機でわかるし、ついでに今までより、魔力を精確に知ることができます。」
伝わったかな?魔力は怖くないってこと。
シエルが、うつむく。
「石や、花や木や、いろんなものに、まりょくがあるんですね。」
「はい。」
「どうぶつにも、」
「はい。」
「わたしにも。」
少しだけ不安そうな声。
「もちろん、シエル様にもあります。」
モロー先生が少し緊張したのがわかる。
シエルは観測機を見つめている。
「わたしのまりょくは、よくないものだと、おもっていました。」
誰かに言われたのだろうか。
俺は、首を振って答えた。
「魔力は魔力、ですよ。」
「…。」
「火は火だし、水は水です。」
シエルが黙る。
「大きな火は家も燃やします。たくさんの水は家を押し流します。」
「…。」
「でも、火も水も、上手く使えば、美味しい料理を作れます。」
「…。」
「火や水、そのものが悪いわけじゃないです。」
「…。」
「知らないと危ない。だから知るんです。」
俺は、魔力観測機を軽く撫でる。
「そのために、これを作りました。」
「こわくないように?」
シエルの視線が魔力観測機へ落ちる。
俺は、魔力観測機を軽く振ってみせる。
「見えないものって怖いじゃないですか。」
前世でもそうだった。
見えない悪意。
見えない菌。
見えない放射線。
怖いのは、いつだって制御できない『なにか』だ。
「だから、見えるようにしたかったんです。」
「見えれば。」
ぽつり。
「こわくなくなるのでしょうか。」
完全に怖くなくなるかは知らない。
でも、正体不明の怪物と戦うよりはずっといい。
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。だったかな?
シエルが、小さな、でもしっかりした声で言った。
「わたしも、しりたいです。…わたしのことを。」




