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9月 その2 交歓会の余韻

未成年の飲酒・喫煙表現がございますが、法律違反行為を、容認・推奨するものではありません




 9月20日(日) 15時10分

 

 時計を見てかなりたまげた。

いくらなんでもちょっと時間が経ち過ぎている。朝から何も面白い事は無い。


 で、昨日の出来事、第一回宴会を思い返す事にした。三人で煙をくゆらす場面が思い浮かぶ。

 

 やはり、それなりに有意義な一時であった。雨の中を強行して行っただけの事はある。若いうちは、ああいうさりげない、何をする目的の無い、ばんやりとした会話が必要だ。憧れというか、理想というか、酒盛りと呼ぶ程飲みはしなかったが、とにかく楽しみにしていた集いであった。


 いいなぁ、ああいうの。

男に生まれて良かったと思う。交歓会(隣の女子高校生とのクラス単位交流会。昨日土曜午後の放課後13時、我が教室で開催・基本全員参加)で知り合った中山雅実ちゃんも言ってたっけ。

 

 その席で、級友石川が

「交歓会は成功だったよな」

と、言った。隣の俺に言った訳ではなく、誰かれ構わず言いたかったのだろう。

 実行委員の江橋は交歓会閉会式の時

「何、あんだけ準備に時間をかけたのに、これで終りかい?」

と苦笑気味に言った。これは江橋の性格と皆の思いをよく映したものであろう。


 とにかく、交歓会は成功した。

皆の話題から離れ、しらけた目ツキで静観していたヤツがいても、何も話さず俯いていた女の子がいても、だ。

  あれだけ幼くなれたフルーツバスケットがその証拠。いつもはすまし込んでいようが、皆が顔を上気させ、汗ばむ程に熱中してくれたのだから。

 



 9月22日(火)

 

 交歓会とは何と素晴らしいものか。


 たった一日の開催でクラスの過半数を今なお熱狂させ続けている。ここいらがむさいイメージのある太田高校生の可愛い所で、うちのクラスの得意とする所である。秀司は『お友達になってくれますかゲーム』で成功し、小森政則は話した彼女とは、まだ軽い仲なのだそうだが、充分ではないか。

 


 急に親父殿の友人が来宅したおかげで、我々の宴会がお流れになってしまった。明日やりたいなぁ。けど、明後日は休みじゃないしと思いながらも電話を掛けてみると、皆さんいらっしゃると言う。やはり悪いお友達だ。

 

 電話口の今北の弟には参った。オッサンみたいなんだもん。

 飯山の声は寝ていた。写真部のくせにピンボケだ。


 何しろ楽しい。高校は予想に反して非常に楽しい。

こりゃぁ、この恩に報いねば。で、お勉強。すぐさまとりかかるぞ、宿題の作文。




 9月24日(木)

 

 バイクの音がすると我が家の前で止まれ、と念じて一日。

ずっーと気にしていて、神妙な手つきで郵便受けのフタを開けては溜息を吐いて、また一日。

手紙を投函してから三日目の今日、すぐに返事が来ると思うのが甘かった。そう思って二日分の睡眠不足を解消すべく布団に入っていると

「お兄ちゃん、中山さんから電話だよ」

と長妹の声。


 ぎょえっ。


充分に考慮した末に、わざわざ文をしたためたちゅーに、と思いながら嬉しさを隠し切れずに受話器を握る。

 「もしもし」

あぁ、忘れもしないこの声は。

何を言ったら良いのか分からずにいると、いろいろ話してくれた。


 今、部活から帰って来たところで、手紙を読んだばかりだそうだ。

とってもドキドキしてるんだって。

どうしてどうしてそんなに可愛いの。

彼女のしっかりした声に対し、僕はしどろもどろ。


 「ロリコンって何ですか?」

この質問に答えるのに僕は、何と長い時間を要したのだろう。

(交歓会用自己紹介集で『ルパン三世カリオストロの城』のヒロイン、クラリスが好きだと書いた。でも、ロリコンではないと注釈をつけて)

友人と酒盛りをしたと言えば 

「へぇーすごい!」

よく電話する気になったね 

「だって別に悪い事じゃないでしょ」

とアッケラカンとしている。


君から受けた印象から手紙の方が良いと思って電話はやめたのに 

「すぐにお返事をしたかったから」

周りに人はいないの? と親の目を気にしたら 

「一階と二階に電話があるから二階の廊下でかけてるの」

なんて言ってたのに

「あっ誰か来る」

「ちょっと待って」

「どうしょうどうしょう」

なんて慌てだすから切っても良いよと言ってあげたら 

「えっ、じゃあ」

と切られた。  

 

 でも、手紙をくれるって言うし、敬語を使うのを止めようと言ってくれた。

 嬉しさが体の奥の方から放射状に弾けたように広がり、飛び回りたい気持ちが抑えられない。

 チキショー! うわぁっ! 

 

 はけ口が欲しくて今北にすぐ電話するが留守。

秀司に掛けると

「おめでと!、やったネやったネ!」 

 やったよ、くそ! 

しばしのろけて、秀司の意中のマリちゃんの話も聞き、口止めして切った。


 ランニングも飛ばし過ぎ。


 シャワーを浴びていると今北から電話が 

「集団デートをやろう」

と言うけど、今北の意中のみほちゃんは今年中は 

「勉強が落ち着くまで会うのはよしましょう」

と、言っているらしい。なかなか聡明な子だね。印象が変わってしまったよ。

 

 本当に出来たら楽しいだろうな。

 夢のような気がする。

 冗談みたいだ。

 

 今北と陽気な買い物をした。

 

 楽しい。勉強する。真剣に。




 9月27日(日) 5時33分

 

 なんでが知らんが一睡もしとらん。理由があるとするならば、一昨日の寝過ぎでしょう。知らんかったなぁ、寝溜めが出来るなんて。

 

 弓道の昇段試験なんだけど視力が落ちたらしく、的がまともに見えるか心配。

 

 今日は日曜日。つまり彼女からお手紙が来る日。待ち遠しい事。お電話もしたかったけど、保護者の方が出ると後でまた困るから止めておいた。

それでも昨日、声が聞きたかったな。

 秋の夜長。電話をしよう。



 昇段試験から帰って来た。まさか二中/二中(矢が的に二本中る)するとは思わなかった。嬉しい。

 

 それにしても、今日の僕は喋り過ぎ。みっともない、人に聞こえるような声で金の話など。トラブルがあったが、あの時はそれ程頭にきていたわけではなかったのに。恥ずべき事だ。誤りを犯すのはやむを得ない事だが、繰り返すのは許し難い。自分の言葉に誇りと責任を持つぞ。


 経験者杉田が正座の足の痛みなんて忘れちゃうと言ったけど、その通り。本当かなと思って意識してみたら、足の痺れを感じはすれど、倒れる程のものではなかった。僕にとってはすごく嬉しかった。

 しぃかぁしぃ、緊張した事。頭の中が熱っぽく、まともな考えは出来なかった。体は震えていたかもしれない。目の前の審査員達がペチャクチャ喋りやがって気になってしょーがないのよネ。そのくせ、初段の組になったら一言も発せず、まるで入社試験の面接官の視線で。

 それでも、入場と退場の時にもたついたけど、後は上手くいった。だからてっきり初段になれると思ったのに。

 やはり僕は信念で出来る人間ではないようだ。でも正直、二中、中ってホッとした。

受かった後の事を色々想像してしまったから、半分残念だったけど。でも、もう少しだろう。来年には二段、再来年には三段だ。すごいすごい。ま、そのうちね。

 

 弓道部の八鎌のやつに、日曜は郵便配達も休みと言われてハッとした。冗談だろ? すると今日は彼女のお手紙はこないわけ?ちょっとお返事の間隔が開き過ぎてるよ。電話したいけど親が出ると気まずいし、する為には手紙で聞きたい。





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