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11月 まだ早いんだってよ

 




 11月3日(火)


 リバイバル上映を見に映画館へ。


 ダスティン・ホフマン主演映画『卒業』


 前半が気に入らなかったけど、エレンの登場あたりからのめり込んでしまった。


 最初のデート、ヌードショーでエレンがからかわれてるのを見た、ダスティン演じるベンジャミンの感情が吹き上がってくる時の顔、いいな。

それからの二人は素敵だった。

赤いオープンカーも素敵に見えた。

所々に出てくる笑いを誘う場面、ありきたりの古い手法のように思うが底抜けに面白かった。


 エレン役のキャサリン・ロスが

「タフト・ホテルは?」

と言った時の車の動き。ホテルに入った時、皆が彼を偽名で呼び、そして最後に 

「レコニフさん!」

まで出て来た。

 ベンがエレンと結婚すると告げられた時の母親の絶叫。それからラストのバスの中の視線。


 良かったなぁ。


 どんなことをしても、何が何でも決心を叶えんが故の努力、エネルギー。

結婚式に向かうダスティンの健気さ。網にはりついた

「エレーン!!」

と叫び続けるその姿。

 そして親族達との奮戦の時に見せた根性、その勇姿。


 やっぱり良い映画は古くなっても良いものだ。


 手を繋ぎ、にこやかに笑いながら、教会を後にする二人。あぁ、その光景の何たる清々しさ、鮮やかさ。

 ちょっと忘れられそうにない。


 ダスティン・ホフマン万歳!!

 


 『エデンの東』は暗い映画だし、映画館の座席の場所が悪くてスーパーが読めなかったから、それほど楽しめなかった。それでもやっぱり、ジェームス・ディーンの魅力は絶大であるからして、解説等によく載っているように、若者の哀しみ怒り喜び寂しさを表現する事にかけては、右に出る者は居ないだろう。


 もっともこれは解説を読んでから思った事であるので、少々危しい考えであるが、確かに万人に愛され続けられるだけの事はある。

 

 僕は根がどうも暗いようなので、暗い映画は好まない。


 最後に『エデンの東』のテーマ曲が流れ始めると場面が何であれ、心がグニャーとねじれて押しつぶされ苦しくなる。しみじみ聞き入ってしまった。




 11月5日(木)

 

  昨日、飯山と秀司と遊んでいた。その場のノリでふざけて雅実ちゃんに電話をした。


 まず飯山が、そして僕、秀司。最後に酷くみっともなく僕が切った。

落ち込んでしまった。

決意も新たにお詫びの電話。気の無い雅実ちゃんの声。いつも通りの

「……うん……」

ばかり。飯山の時にはもっと活気のある話し方のようだった。

 

 そして、今日、届いた手紙。

手にした時から別れの手紙だと分かった。今までもシックな封筒だったけど模様ぐらいあった。それが真っ白で名前すら書いて無いなんて。分かるよ。そのぐらい。

 

 文通をやめたい、また早いと思うんだってさ。


 僕だってキミがOKするまでは矛盾を感じていたよ。交歓会での討論会では、男女交際について

「まだ付き合うとか、そう言う事はあまりしたくない」

とキミは言っていたからね。


 だから、文通だけと思って手紙を書いたのに、電話をしてきたのはキミの方。


 僕はOKしてもらってからは嬉しさばかりになったから、そんな事は思い出さなかったよ。

 僕の事が嫌だとか、気に入らないとか、そういうのじゃないと書いているけど、流石に苦しいなぁ。


 ガックリ来たよ。

読む前に諦めをつけた筈だったのに、読み出したら一行一行が重々しくて。

今まで意識しなかったのは、ニコニコしながら読んでたからなんだろうけど、便箋のモノクロが目に沁みる。白い便箋に、いつもの薄黒いきれいな雅実ちゃんの字。

 

 地球の引力が増したような、体重が、特に手足が重くなったような気がした。


 今日配達されたからには、昨日は既に書いてあったんだなぁ。しらけた電話もその所為かな。

 こうして書いていても怠いよ。


 結局、僕の事を彼女はどう思っていたんだろうね。

 

 こりゃ、この冬は寂しいな。


 寂しい冬も、また、いいか。




 11月24日(火) 20時53分

 

 久しぶりに書く。

故に書く事はたくさんある。可能な限り、順を追って並べていこう。

 

 17日に市内を走り、校内十キロマラソン大会。

 それ程嫌ではなかったが、疲れたのなんの。全身ガクガクね。ラストの、富士重工工場の壁の長い事、恨めしい事! でも、皆そうらしいね。そりゃそうよ。皆それ程鍛えていないだろうから。

 でも苦しかった。にもかかわらず先輩で抜いたの一人しかいなかったから、皆速いのね。上級生からスタートするから、一年が最後で当たり前だもの。来年は二百番以上を目指すぞ。

 


 19~21日と弓道部合宿。

 この寒いのにやるもんだから風邪をひいてしもた。

 初日の夜の事。薄川が

「自動販売機からタダでドリンクをもらってくる」

と、謎の発言をして出掛けて行った。

「誰か一緒にきて」 

との頼み空しく、このクソ寒い夜に出歩く物好きはおまえだけだと、誰にも相手にされぬまま。何をしにいったのかと、待つことしばし、手ぶらで帰って来た薄川くん、一言。

 

 「倒しちゃった」

…… ア ホ か ー い!!

 

 しかたなしの友情で、僕と八鎌も真っ暗闇の中を忍んで外出。角を曲がってぶったまげた。本当にもう、Indeed、倒れてんのよ。道に向かって四方八方に光を這わせて。思わず吹き出した二人の笑い声が、辺りに響いて恐かった。三人で力を入れる。甘かった。

で、薄川に助けを呼びに行かせて、更に待つ事しばし。助手半野の第一声。

 

 「!!!バ カ な ー!!」

 だよね〜

 

皆で立ててみて驚いた。全部『うりきれ』取り出し口は満杯です。

真夜中に、寒いのに、男子高校生が七人も

「……どうする?」

情けない。さすがの薄川も悩んでる。薄川が謝って弁償する話になり、結局、飲んじゃった。


 俺と八鎌は事の真相(故意)を知っているが、黙っている事にした。皆に話したらさぞ面白かろうと思うのだが、いくらなんでも。嘘は言わない。黙っているだけ。

 誰も聞かないでくれ!


 でも、授業の休み時間に、合宿所に遊びに来た飯山には、教えてしまった。ヤツは薄川ジュースを飲みながら、吹き出すのを必死にこらえながら苦笑していた。

 

 その夜、先輩三人が来た。栗山先輩・半野ペアにポーカーでまた負けた。おかしいな。岡原先輩なんかはなんと、数学の勉強で就寝四時。


 21の朝、僕は体調不良で授業に出ずに帰宅し、先輩達は制服に着替えに帰宅、他の部員は真面目に授業を受けに行った。僕って悪い子。


 しかし、この時期に風邪はキツイ。行事やテストが多い。あれからまだ学校に行けていない。

 

 こうして何もしないでいると、浮かび出る焦りと寂しさ。

彼女との文通はこれを埋める為だったのに。それは既に過去のものとなり、僕の気持ちは逆戻り。

あぁ、秋も冬も寂しい。

 


 そうだ、海外旅行に行くんだ、グァム。いくらなんでも急な話だよネ。冬休みだってさ。忙しい事。春休みぐらいになりませんかね。知らんよ、僕は。




 11月29日(日) 18時36分

 

 女々しいが仕方ない。雅実~

 苦しいと言うか、切ないと言うか、彼女が去らなければ、僕ももっと勉強が捗っているかもしれないのに……。寂しいな。心の拠り所が無い。


 秀司の彼女のマリちゃんは、恋をして成績を下げたそうだが、僕なら上がるよ。





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