50 山田颯太の過去
山田颯太の潜伏先が解り、警備局が確保に向かうが、それに応じるだろうか……
はあ…… どうやらここの場所も警備局に見つかったようだ。
そろそろ年貢の納め時なのかも知れない。しかし、ここで終わる訳にはいかない。倉橋来夢に復讐するためには……
でも、腹部に受けた銃弾の傷がまだ痛い…… メディカルボックスで少しは楽にはなったが、弾は残ったままだ。
はあ…… 何故こんな事になってしまったのか…… 元はと言えば倉橋来夢が悪いんだ!
あれは俺が中学生の時だった。コンビニでパンとコーヒーを買ってる時に、見ず知らずの不良にぶつかってしまった。
「あっ、すみません」
「ああ、おい、おまえ、ぶつかっといて何もなしで行くつもりか?」
いや、俺はすみませんと言った。
「おい、俺達の分おまえの奢りな!」
「えっ、そんなに持ってないですよ!」
そんな事を言っている時だった……
「ちょっとあんた達、何やってんの?」
「あ、おまえは……」
「なに、いくら粋がっていても中学生しか相手に出来ないの?」
「おい、行くぞ」
「年下にしか言えないなんてカッコ悪いよ! 弱虫君」
その時、俺を助けてくれたのが倉橋来夢だった。不良は来夢の顔を見るなり逃げって行った。
あの時は不良から助けてもらってとても良い人だと思った。
「あっ、ありがとうございました」
「きよつけなよ!」
そう言ってあいつも去って行った。
でも、あんなに可愛い娘はそうはいない! 俺は迂闊にもあいつのことを好きになってしまった。それで後日、来夢に告白したんだ。
「あの……」
「あっ、この間の…… いじめられっ子」
えっ、いじめられっ子?
「えっ、あの、僕あなたの事が好きになりました。付き合ってください」
俺がそう言った時だった。
「えっ、来夢どうするの……?」
「いや…… 無いかな! 私と付き合いたいのなら、もっと強くなりなさい」
「うふふ、来夢、それは彼が可哀想だよ」
「だっていやよ! あんな弱虫君」
「ハハハ……」
俺は、とても真面目な気持ちだったのに馬鹿にして笑い者にしやがった…… 許せない!
俺は、馬鹿にした来夢を見返してやろうと思った。
その後、大学を卒業して闇の組織に入った俺は、警備局へ潜入して色々と調査をしていた。
「あっ、山田、外に行くならアイス買って来て!」
またもやあいつだ…… 俺を使い走りにしやがった。それも一度ならず何度も……
あいつ、俺の事を覚えていないんだろうな…… というか俺は警備局にスパイで来ているんだぞ…… やっぱり俺は、あいつの事が許せない。あいつは俺の事を馬鹿にし過ぎている。何とも思っていないんだ! だから殺す……
まあ、そうは言っても警備局の目は厳しい…… まあ、局長の親戚でもあるし、それなら来夢の先祖を狙えばとは言ってもそんな奴は知らない……
しかし、ある日来夢がタイムマシンで過去へ向かった情報をキャッチした。そこで若い男と逢っていた事が解った。
あいつは一体何やってんだ? 過去に付き合っている男がいるのか……
しかし、これは使えると思った。以前城島組と共同で開発していたアンドロイド計画。これを使えばきっと上手く行く。
そのため未来からアンドロイド化した圭子を過去へ連れていき準備をした。舞龍達と接触させ、催眠状態にして仲間も作ってやった事で、来夢殺害計画もなかなか良いとこまで行ったはずだった……
しかし、圭子は勝手な行動をしてなかなかうまくいかなかった。あれは不良品だった……
結局、圭子は勝手に自爆するし、その所為で舞龍達の催眠も解けてしまった。結果、このざまだ!
あの時、来夢ではなく来夢と過去で接触していた男を先に狙うべきだった。
今考えれば、あいつは来夢のご先祖様だったんだからな…… あいつを消していれば、来夢も消えていたはず…… 今更言っても仕方がないが……
はあ…… このまま捕まるのなら死んだ方がマシだな……
いや、まだだ! だったら警備局のタイムマシンに体当たりするか、それともタイムスリップのためにエネルギーをたっぷり注入して自爆して大爆発を起こすか…… その辺だな。
山田颯太がよからぬ事を考えている時、僕達は橋本市に到着した。目の前には山田のタイムマシンとその周りを警備局のタイムマシンが包囲していた。
さっきの副部長の話では、痺れを切らして上昇した山田をタイムマシンごと撃ち落とすという計画だが……
「音声通信を頼む」
副部長は部下に指示をして準備をしてもらったようだ。
「来夢さん、副部長さんは何をしてるんですか?」
希美が来夢に訊いている。まあ、説得して投降を促すんだろうけど……
「希美、ちょっと静かに、見てたら解るから……」
「山田颯太だな、聞こえるか?」
副部長は小さい声で話し始めた。というか、そんなんで聞こえるのか?
「何だ! 投降するつもりはないぞ」
「今、投降すれば身の安全は保証する」
まあ、穏便に済ませる事が出来るのならそれが一番なのだが、山田はそういう奴ではないと思う。
「身の安全だと…… ふざけるな! おまえらの事なんか信用出来るか」
「だが、このままだと、命を落とす事になるぞ」
「さあ、それはどうかな……」
山田は負け惜しみのつもりなのか、それとも何か秘策があるのか……
「おまえの望みはなんだ!」
「あっ、望みだと…… 望みは来夢の死だ!」
「何故、来夢を狙う?」
「さあね…… 訊いたところで解ってはもらえないだろうからな! でも、あいつは気に入らない」
その時、側で聞いていた未玖さんがいきなり話出した。
「あんたね、もう少し人の事を考えなさいよ! あんたの所為で友達と喧嘩中なんだからね」
「はあ、知るかよ! 喧嘩ごときを人の所為にするな」
「私の友達は水嶋圭子の先祖なの」
「それが、何なんだよ!」
「私は、あんたの先祖なんだよ!」
「えっ、ご先祖様?」
「私の子孫にあんたみたいのがいて迷惑してんのよ! 本当なら私の手で殺してやりたいくらいだよ」
「はあっ、やれるもんならやってみろよ! 俺が返り討ちにしてやる…… まあ、そうは言ってもおまえだけは殺せないけどな…… ムカつくご先祖様だけど、どこまで繋がりがあるか知らないおまえを殺してしまったら俺も消えるかもだからな……」
その時、山田のタイムマシンが『キュイーン』と音をあげた。
「やめろ! 何をする気だ」
「五月蝿い!」
山田のタイムマシンは大きい音をたてながら上昇し始めた。
「副部長!」
「しょうがないな…… 他のタイムマシンはシールドを張って衝撃に備えよ!」
上昇して来る山田のタイムマシンに副部長は照準を合わせタイミングを測っている。
「ねえ来夢、あいつは何をする気なの?」
未玖さんが心配そうに来夢に訊いている。
「多分だけど…… 一か八かタイムスリップしようとしてるんだと思う」
「でも、副部長が上空で待機してるんでしょう」
そうだ、警備局の上層部から山田の狙撃は許可が出ている。これで、終わってしまうのか……
山田のタイムマシンが上空へ到達し、タイムスリップしようとした瞬間、副部長は山田のタイムマシン目掛けて攻撃した……
『ドーン』と大きな音をたてて山田のタイムマシンは爆発して黒煙を出しながら墜落して行く…… しかし、墜落しているマシンの上で何か光ったような気がしたが……
墜落したマシンは大きな音をたてて爆発した。しかしながら警備局のタイムマシンはシールドを張っていたため巻き込まれることはなかった。
「これで終わったのか……」
僕はそう思った。その時、希美は僕の側で、未玖さんと水嶋さんはあまりの事に固まっている。神谷さんは座り込み龍己が側についていた。
「墜落したタイムマシンを調査せよ! 山田颯太の遺体も捜索せよ」
副部長から指示が出て、捜査員総出で調査が行われた。
まあ、調査とは言っても、機械を使って瓦礫やマシンの残骸をいとも簡単に動かして調査をしている。
しかし、山田颯太の遺体は見つからなかった…… 爆発で、遺体がバラバラになったのか? それともタイムスリップして逃げた…… ひょっとしたら遺体がタイムスリップして何処かの時代で死んでる……
まあ、どっちにしてもこれで終わったのだと僕は思った。
「智ちゃん」
「未玖、ごめんね! どうでもいい事で怒って」
どうでもいい事では無いと思うが、この二人も仲直り出来たらようだ。
「響!」
そう言って希美が、僕に抱きついて来た。
「これで、終わったんだよね」
「たぶん……」
「仲が良いわね! まあ、良くないと未来の私が消えてしまうかもだけど」
「ねえ、本当にこれで終わったの?」
神谷さんが顔を青ざめて訊いている。彼女には衝撃的だったのかも知れない。
「もう、大丈夫だ」
龍己がずっと心配そうに側にいる。
「うん、もう終わりだよ」
まあ、そう言えたのはこれ以上何も起こってほしくないと思ったからであって、山田がどうなろうと、もうどうでも良いと思ったからだ。
取り敢えず、これで終わったんだと思う。僕も希美もこれで安心出来る。神谷さんはちょっと心配だけど龍己がいるから大丈夫だろうと思った。
山田のタイムマシンは、警備局の攻撃により爆発して墜落した。山田の遺体は見つかっていないが、あれでは助からないだろう




