51 終わり良ければ……
山田颯太の件から三ヶ月、僕らの大学受験が始まった。
山田颯太のタイムマシンが墜落して、すべてが終わった三ヶ月後、今日から大学入試共通テストが始まる。
あの日の後、僕は希美と二人で部屋に戻った。その日は、希美も一人にはなりたくなかったのか、僕の部屋で一夜を明かした。勿論、何もない。ここは断言しておく。
それ以来、何も起こっていないが、何か違和感を感じる。しかし、山田颯太はタイムマシン毎墜落して、爆発した訳だからまず助からないはず…… でも…… 何か違和感を感じる。
いや、それより試験だ! 今は、試験に集中しよう。この結果次第で決まる訳だから…… まあ、余裕だけど!
『響、私は手伝いがあるから先に行ってるね!』
希美からLINEが来ていた。そう言えば、受付の手伝いをする事になっていたようだけど……
その後、試験会場の北山大学へ行きました。
「あっ、響こっちだよ!」
希美に呼ばれて、僕が受付で受験票を出して教室を確認している時でした。
「50182の教室はどこですか?」
一人の男性が訊いて来た。受付の女性が三階まで上がって階段から二つ目の教室を教えていた。
それは、僕が試験を受ける隣の教室だ。
「響、どうかしたの?」
「あっ、ううん、何でもないよ」
「響は三階にあがって階段から三つ目の教室だからね!」
「うん」
「がんばってね!」
そう応援されて希美から見送られた。さっきの男、誰だっけ? 何処かで見た事があるような……
そう思いながら教室へ行った。同じ教室には龍己も神谷さんもいなかった。別の教室なのかな? しばらくすると朝見かけた男の事は忘れて試験に集中した。そんな事もあって、一日目の試験は無事に終了していた。
試験が終わり、朝受付のあった場所に希美が待っていた。希美は僕に気付くと手を振って僕の方へ走って来た。
「お疲れ様! どうだった?」
希美にそう言われた時だった……
「山田颯太だ!」
「えっ、なに!」
希美が声を上げた。
「朝、僕が受付をして教室の場所を聞いたとき、もう一人男がいたでしょう」
僕がそう説明をするけど……
「そうだっけ? でも、山田は……」
そう、死んだと思っていたけど……
「名簿とか見れないかな」
僕は希美に訊いてみたけど……
「それは駄目だよ! 響は受験生なんだから、変なことをして失格にでもなったら……」
そうか、まともに手は出せないか……
「ねえ、来夢さんに報告した方が良くない?」
そう言って、希美は来夢に連絡した。僕達は、アパートへ戻り来夢と合流する事になった。
「久し振りだね、響君!」
こいつは変わらないな……
「それで、警備局で調べたよ」
「どうだったんですか?」
「うーん、受験者名簿を調べたけど、山田颯太という名前は無かった」
「それじゃ、僕の見間違い?」
まあ、僕もすぐに解った訳じゃないし、試験が終わって希美のところへ戻った時にそう思った訳で……
「でも、怪しい名前はあったよ」
怪しい…… どういう事だ!
「怪しいってなにがですか?」
「この名簿を見て! 50182 山本章弘」
「これがどうかしたんですか?」
「解らないかな…… 他の人はみんな番号順になっているのに、こいつだけ50180のあとに、50182って特別枠みたいにあるでしょう」
確かに、これは可笑しい……
「でも、可笑しいだけで、まだ山田とは解らない」
まあ、これだけじゃ何も出来ないよな……
「試験は明日もあるんでしょう」
「うん」
「それじゃ、明日も来るかもだから、警備局でも見張を出すよ」
「うん、解った」
まさか、試験当日にこんな事が起こるとは……
試験二日目、僕は同じ時間に受付に来た。
「響、頑張ってね!」
今日も希美の応援を受けたが……
「希美、昨日の人は?」
コソッと聞いてみたが……
「まだ来てないみたいだよ」
そうか…… 他人の空似かな。僕がそう思っている時だった。
「おい! 響」
龍己がいた。
「龍己、おまえどこの教室だよ」
「あっ、おれは二階の真ん中の教室だよ。おまえは?」
「僕は三階」
「結構離れてるんだな」
「神谷さんは?」
僕が龍己に訊いたけど……
「さあ、見かけてないけど四階か一階の教室なのかな」
「同じ高校でこんなに違うかな……」
「まあ、色々と不正をする奴がいるからな」
そんな話をした後、試験が終わった後に会う約束をして教室へ入った。
二日目の試験も終わった。これで、後は二次試験だけど……
「おい、響!」
龍己と神谷さんが来た。
「やっと会えたね! 私はずっと一階の教室だったから」
そんな話をしてる時だった。
「なあ響、あいつは死んだんだよな」
龍己がそう言って来た。
「あいつって誰の事よ」
神谷さんもちょっと気になるようだ。
「ほら、タイムマシンで死んだ……」
「山田颯太!」
「ああ、そいつだ! 実は似た奴と一緒の教室だったんだ」
どういう事だ! 俺も似た奴を見かけた。しかし、そいつは三階の教室だったはず……
「いや、俺も似た奴を見たんだけど、そいつは三階の教室だった」
「二人とも変な事言わないでよ!」
神谷さんは、もう関わりたくないんだろうと思った。
「そんな事より、何か食べに行こう!」
「うん、希美はどうする?」
「私はパス! じゃあね響」
うん! 何だかラフな喋り方だな…… まるで来夢だ。
「来夢だよな!」
僕が希美の背後から、そう声を掛けると……
「ちぇ、バレたか」
僕は来夢の側まで行き訊いた。
「希美は?」
「響君は友達と約束してたみたいだからって、タイムマシンにいるよ」
「そうなんだ……」
「あいつの事は、まだ調査中だから」
来夢から一言そう言われた。
「うん、解った」
そう言った後、その日は試験終わりという事で久々に友人三人で食事をする事にした。
三人で食事をしてる時、神谷さんに訊かれた。
「ねえ、試験どうだった?」
やっぱり気になるよな……
「俺は、今週勉強していた問題と同じようなのが出たから、ラッキーだったよ」
「響君は?」
「僕はまあ、余裕だったかな」
「相変わらずだね」
だったら訊かなきゃ良いのに。
「神谷さんは?」
「うん、私も結構出来たと思う」
「それじゃ、三人で同じキャンパスを歩けるな」
「まだ、二次試験があるでしょう」
「まあ、そうだけどさ、ハハハ」
こういう日常的なのが良いな…… 来夢には悪いけど、あいつが来てから碌な事がない。
「響、どうかしたか?」
「あっ、いや」
その日は、久々に三人で楽しかった。こういう日常が続くと良いんだけど……
あれから何事も無く、今日は北山大学の合格発表を迎えた。
「響、発表見に行くでしょう!」
希美だ! 今日は朝早くから僕の部屋に来ている。
「別にネットでも発表してるけど」
そう言ったけど……
「駄目だよ! ちゃんと大学に行って確認しないと」
こうなると行かない訳にはいかないな…… そう思っている時、希美の手が僕の目の前にある。
「はい、はい」
そう言って希美の手を握り、僕は合格発表を見に希美と出かけた。すると、また希美の手が僕の方へ伸びて来た。
「なに、どうしたの?」
すると彼女は顔を赤くして……
「一緒に歩く時は手を繋ぐの!」
そう言われ、僕も悪い気はしないので手を繋いだ。これはもうデートだな……
大学に着いて発表の確認するけど……
「響、番号は?」
「30162だけど」
そう言って僕も番号を探している時……
「あったよ!」
希美が指を指してはしゃいでいる。何だか希美が合格したみたいでとても嬉しそうだ。
「ありがとう」
「何だか楽しそうね!」
僕達の背後からそう声が聞こえた。
「神谷さん!」
「倉橋君も無事合格出来たようね!」
という事は……
「響、また三人一緒だな!」
「良ければ私も仲間に入れてよ」
希美がそんな事を言った。
「あっ、でも、私達は邪魔じゃ……」
「そんな事ないよ、みんな一緒が良いでしょう」
まあ、四人一緒なら希美ともいつも一緒にいれるから良いかな。
そんな事を思っている時だった。目の前の人の動きが止まった。背景もセピア色になったような、これって……
「響君、希美、乗って!」
いきなり上空に来夢のタイムマシンが現れオレンジ色の光を出した。僕達はその光によってタイムマシンの中へ入った。
「一体どうしたんですか?」
「城島組がアンドロイドの献体を集めている!」
「そんな事を?」
希美と神谷さんは驚き、顔色が悪い。
「今は時間を止めて奴等の動きを止めてるから」
「これって回避出来るんですか?」
「今、警備局がやっているけど、あなた達に何かあれば未来が変わってしまうから」
来夢はそう言ってタイムスリップをした。
ここは星の綺麗なところだ。しかし、僕達の周りでは小さな光が、光っては消えチカチカしている。
あれ、ここは……
「ここは城南市の上空だよ。約一年前の」
それって星空教室? あの日はかなりのUFOが目撃されていたけど……
「あれは、ほとんどが警備局ですか?」
「うん、それと城島組のタイムマシンだよ」
あの辺から僕達は観測してるはずなんだけど……
「響君、あれ!」
来夢が指差すところに、バケットハット型のシルバーのUFO……
「あれは?」
「あれは、一年前の私」
「どういう事ですか?」
来夢の話では一年後の未来の警備局から依頼があっていて、来夢は自分と繋がりのある人物を探すために二十一世紀に来ていた。
僕の前に現れたのはタイムマシンとこの時代を結ぶ出入口にするためだったんだけど、それが探しているご先祖様だったという事だった。
一年先の警備局から今の警備局にはきちんとした連絡が行ってなかったようだが、一刻を争う事だったからという事だ。
「そろそろ元の時代に戻るね」
そう言って来夢はまた、タイムマシンを操作した。
「来夢さん、アンドロイド計画は回避されたんですか?」
「うん、時間もまた動き出してるから」
「それじゃ、これで一件落着ですね!」
希美はそう言うけど……
「結局、山田颯太は解らなかったんですよね」
「警備局もあれから探してはいるけど見つかっていないから大丈夫だとは思うけどね!」
そういう事で、安全な日常が訪れた。希美と水嶋さん、未玖さんは大学二年生に、僕と龍己、神谷さんは北山大学に無事入学出来た。
「ねえ響、お昼どうする?」
僕と希美は一緒の時はいつも手を繋ぐ! 希美のお願いだからな。
龍己と神谷さんは付かず離れずの関係が続いているけど、あの二人はそれが良いのかもしれない。
来夢とはたまに逢ったりしてるけど、あいつも警備局員だから忙しそうだ。
僕と希美は一緒の大学で楽しいキャンパスライフを送っている。
色々と絡み合った事ではあったけど、すべて解決した。
いつもご覧いただきありがとうございました。一応、これで終了です。ただ、山田颯太の事がありますので、気が向いたら続きを書くかも知れませんので、その時はまたよろしくお願いします。
また、新作も考えていますので準備が出来たら書いていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いいたします。
赤坂秀一




