49 山田颯太
山田颯太に狙われた! あと少しで命を落とすとこだった。しかし、彼も致命傷を負ったようだったが……
本格的に山田颯太が襲って来た。狙いは、僕と来夢だと思う。もし、希美が狙われるような事があると……
「響君、遺体の件だけど、若頭が自供したわ」
「それじゃ、関与を認めたんですね」
「ええ、でも驚いたわ! アンドロイドをヒットマンにするつもりだったみたい」
「それで、資金提供をした訳ですか……」
「ええ、使える物はなんでも使うって事ね」
「でも、よく認めましたね!」
「もう駄目だと思ったんでしょう! だから、すべてを話して、山田に罪を被せて、若頭は保釈金払って塀の外に出ようって事じゃない」
「でも、暴力団なんでしょう解散させたりしないんですか?」
まあ、希美の言う通りだと思う。
「まあ、そうね……」
来夢の話だと、城島組を解散させたら元組員が転々ばらばらになるから管理し難いとか……
まあ、解散させれば未来でも、過去でも逃げ放題な訳だから管理は厳しいだろう。それに組があれば警備局や警察で管理しやすいという事らしい。
「まあ、難しいところね」
「なんだか複雑ですね」
それは、希美だけがそう思うのではなく社会的に難しい問題だと思う。
「ところで、山田は一発銃弾をもらっているんですよね」
「だから……」
「だから、病院とかにいそうな感じですけど……」
「そうね…… そんな単純な事なら事件も解決なんだけどね……」
銃弾を受けて病院へというのは普通の行為ではないのか?
「響、外にいるのは高校の友達じゃない?」
希美にそう言われタイムマシンの外をモニターで確認した。あれは、龍己と神谷さん……
「響君、中に入れてあげたら」
来夢からそう言われたのでそうする事にした。
『龍己、光を照射するからその中に入ってくれ!』
僕はマイクを使って外にいる二人に声を掛け、オレンジ色の光を照射した。二人はオレンジ色の光とともにタイムマシンの中に現れた。
「こんな仕掛けがあったのか……」
「ああ、いちいちハッチを開けなくて良いからな」
「なんだか身体がふわっとなって変な感じだな」
「私は、内臓が持ち上げられる感じでちょっと気持ち悪いかな……」
二人には、この光は初体験だったから仕方ないかな……
「ところで、どうしてここが解ったんだ」
「解るわよ! アパートの扉は穴が開いて壊れかかっているし……」
「あと、警備局の人が沢山いたから…… おまえの部屋を通り過ぎて階段の踊り場からファスナーで来たんだよ」
「あっ、ありがとう……」
「肩、どうしたの? 服も破けてるけど」
「あ、うん…… ちょっと引っ掛けちゃってさ……」
「引っ掛けたような破けかたじゃないよな」
いや、そんな事は……
「ねえ、ここに来る時、変な男を見なかった?」
来夢がそんな事を訊くから、二人はまたもや怪訝そうに僕を見ている。
「おまえさ、何か隠してるだろう」
龍己は僕の顔を見ながらそう言った。でも、神谷さんは僕の事を見てくれない。仕方ないかな……
「あっ、いや…… 隠すつもりは……」
「舞龍達に命を狙われてたの! 私も、響君も」
来夢がそんな事を言うから二人は、凄く驚いている。
「あの人がそんな事をするようには見えなかったけど……」
龍己がそう思うのも無理はない。元々、催眠効果でそうさせられていた。しかも、来夢と舞龍は友達関係にあった訳だから……
「龍己君の言う通りだよ! 舞龍は圭子に操られていたの!」
「操る? えっ、圭子って誰ですか?」
また来夢がそんな事を言うから、話がややこしくなる……
まあ、舞龍の事、圭子の事、それから山田の事、一連の流れを説明したけど、どこまで解ってもらえたかな……
「それで、舞龍さんは?」
「今は、二十三世紀の病院にいるわ! でも、あなたのことは覚えていないかもね」
「何故ですか?」
「だってあなたに逢ったのは、催眠状態の頃の話だから……」
それを聞いた龍己は、ちょっと残念そうだった。
「それで、響君は、その…… 山田って男に命を狙われているのね」
「うん……」
「察するとこから、アパートの扉の壊れかた、服の破け具合からすると山田から命を狙われここに逃げて来たってとこかしら」
はい、おっしゃる通りです……
「そうだよ」
僕は少し不貞腐れたように返事をした。
「それで、何故響の服の肩が破けるんだよ!」
こいつはまだ解らないのか……
「馬鹿ね…… まだ解らないの!」
「馬鹿で悪かったな……」
「ごめん、言い過ぎたわ……」
神谷さん、なんとなく変わったな…… 普通ならこれから言い争いが激化して行くのに。
「響、今日は私の部屋に来る? あの状態だと部屋に戻れないでしょう」
希美、何をサラッと凄い事を言っているのか、神谷さんが変な顔して僕の方を見ている。僕はなるべく視線を合わせないようにした。
「響君、そうしたら! 警備局の調査がもう少し掛かりそうだから」
来夢まで、何を言っているのか……
「響、別に俺の所でも構わないぞ!」
いや、龍己のとこに行くのなら希美の部屋がいい。
「いや、大丈夫だから」
「そうね、タイムマシンもあるからね」
まあ、タイムマシンが一番落ち着くかな…… でも、希美の部屋も捨てがたい。
「それにしてもアパートがあんなに酷い状態なのに警察は来てないよね」
「そこは、うまく警備局が隠しているから」
「でも、警察と合同でやった方が早くないですか?」
神谷さんの言いたい事は解るけど……
「そんな事、出来る訳ないでしょう! 警察に未来から来た警備局です…… とでも言うの?」
「はあ…… 信じてもらえないですよね……」
「そう言う事」
「響、帰ろう! 晩御飯何が食べたい?」
希美が僕にそう話しかけた時……
「希美さん、こんな状態の時によくそんな事言えますね」
神谷さんが、いきなり挑戦的な発言をして来た。出来れば、仲間内で争いたくないんだけど……
「こんな状態だから普通に接してるの! 私達の事は警備局や来夢さんが守ってくれるから、だから…… 私は、響と一緒にいたいの」
希美が僕の事をそんなに思っていてくれたとは…… やっぱり、この状態をなんとかしなければいけない。まだ、死ぬ訳にはいかない。来夢の件だってあるし、いつまでも希美と一緒にいたいから。
その時、突然壁がファスナーによって開かれた!
「なに? どういう事?」
来夢は慌てながら僕達の前へ出て来た。中からは山田が出て来るのかも知れない……
僕が注意しながら中を覗くと、同じ山田でも山田未玖さんが現れた。その後ろには水嶋智代さんもいた。
「ど、どうしたの未玖?」
希美が驚いたように訊いている。
「どうしたもなにもないわよ! 智ちゃんがね……」
水嶋さんはちょっと怖い顔をしている。何があったのか……
「智は、山田颯太を絶対に許さない!」
「智ちゃん、山田は銃を持ってるし、危ない男だよ」
希美がそう説明するけど……
「私の子孫を殺して、アンドロイドにして、利用するだけ利用して…… 絶対許さない!」
「そうか、また頼もしい助っ人が現れた訳だ」
どこからともなく柴咲副部長が現れた。
「いたんですか?」
僕がそう訊いたら……
「いや、彼女達が現れた後くらいに俺も出て来たんだ」
えっと、瞬間移動ですよね…… あれって時空を越えられるのかな……
「あの、タイムマシンで来たんですよね」
僕は恐る恐る訊いてみた。
「そりゃそうだろう。時空を越えるにはタイムマシンしかないから」
やっぱりそうだよな……
「それで、山田颯太だが、二十三世紀の橋本市にいる。怪我の治療をしてるようだ」
「それじゃ今から……」
「まあ、待て来夢。今、警備員を配置している」
とにかく今は、作戦を立てるべきだろう。どうせ奴は、タイムマシンの中だろうから不用意に近付けば逃げられてしまう。
「配置終了しました」
「了解した」
「どうするんですか?」
「警備員を四方から包囲した。奴は上空へ逃げるからそこで俺が待ち伏せる」
「でも、タイムスリップしたら」
「その前に撃ち落とす」
まあ、それなら……
「副部長、タイムスリップ直前だと……」
「うん、解っている」
副部長は難しい顔をして天を仰いだ。
「まさか、タイムマシンごと……」
「いざという時は仕方がない。上層部から許可が出た」
まあ、これ以上犠牲者が出る前にという事だろう。
「それじゃ、配置に着け」
副部長はその一言を残しいなくなった。多分、瞬間移動したと思う。
来夢も二十三世紀の橋本市へタイムスリップした。
来夢は、やっぱり警備局員だろな…… 黒ずくめの男に指示を出していたし……
「響、大丈夫だよね!」
「うん、警備局員も結構いるみたいだから」
希美は、ちょっと緊張しているようだ。龍己と神谷さんは、また何か言い争っている。未玖さんと水嶋さんはお互いの子孫の事で話をしている。
しかし、二十三世紀の橋本市に着けば、また、状況は変わって来るのかも知れない。
山田颯太の潜伏先が解った! これから確保へ向かうが……




