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来孫  作者: 赤坂秀一
第五章 黒幕
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47 圭子の最期

圭子がいきなり来夢に襲いかかって来た。来夢もそれに気付き銃を出すけど、副部長の銃弾がいち早く圭子の右手首に当たった。しかし、手首からは血が出ずに配線みたいな物から火花が出ていた。

 圭子(けいこ)は右手にサーベルを持って来夢(らいむ)に襲いかかって来た。


「来夢、覚悟!」


 その瞬間、銃声が聞こえた……


 圭子は呆然としていた。何故なら、右手に持っていたサーベルが無くなっていたから、いや、サーベルというか圭子の右手首が無くなり、そこからは配線みたいな物が出ていてショートでもしているように火花みたいな物がパチパチと出ていた。


 これは一体どういう事だ! と言うより圭子って何者なんだ。


「くそっ! 毎回毎回邪魔しやがって」


 圭子は眉間に皺を寄せ、悔しそうに項垂れ、前のめりに倒れ込んだ。


 その時、副部長が銃口を圭子に向け近付いた。


「まさかとは思っていたが、アンドロイドだったとはな」


「くそっ! ここまでか、でも、これじゃ終われない……」


 圭子は観念したように見えたが『ニヤリ』と笑ったのを僕は見逃さなかった。まさか……


「危ない! 急いで圭子から離れて」


 僕の掛け声と共に副部長と来夢は言われた通り圭子から離れたその瞬間だった……


「ドオン!」


 圭子は自爆した。


「あ、危なかった! なんて奴だ」


 最後の最後にとっておきのトラップが用意してあったようだが、助かった……


 その時、ファスナーを半開きにしていた壁が開いて未玖(みく)さんが顔を出した。


「ねえ、爆発した音が聞こえたけど……」


 爆発した圭子は腹部の付近が粉々になり、手足と頭は原型を留める程度に残っていた。右手に持っていたと思われるサーベルは右手が変形していた物だったようだ。


 僕達は一度、来夢のタイムマシンへ戻って落ち着く事にした。


「ねえ、舞龍(まろん)達は捕まえたの?」


 未玖さんが副部長にそう訊いた。それを訊いた副部長は不機嫌そうに……


「ああ、舞龍達も城島組(じょうしまぐみ)の若頭も捕まえた。今、取調べがなされている筈だ」


「それじゃ、一件落着だね」


 未玖さんは気楽にそう言うけど…… また謎が増えた。


 圭子は亡くなった後、葬祭場で火葬されたはずなのに…… それに誰がアンドロイドにしたのか?


 舞龍達にそんな能力があるとは思えないし…… うーん、わからん!


「おい来夢、大変だ」


 副部長がスマホで連絡を受けた後、声を上げた。


「どうしたの?」


「舞龍達の様子が可笑しい」


「どういう事?」


 来夢がそう言った時、水嶋(みずしま)さんと希美(のぞみ)さんが戻って来た。


「あっ、(とも)ちゃん大丈夫?」


 未玖さんが心配そうに声を掛けた。


「うん、あの不思議な部屋にいたら気分が良くなって、元気が出て来た」


 水嶋さんがいたのはメディカルボックス、あの部屋は一体どうなっているのか?


「良かった」


「ねえ倉橋(くらはし)、舞龍達はどうなったの?」


 そうか、希美さんはタイムマシンにいたから何も知らないか……


「いや、その事を今……」


 僕がそう言い掛けた時、来夢が口を開いた。


「それで、舞龍達が可笑しいってどういう事?」


 来夢がもう一度、副部長に訊いた。


「あっ、そうだった。実は舞龍達の記憶がないんだ」


 副部長が頭を抱えながらそう言った。


 記憶が無い? 記憶喪失なのか?


「えっ、どういう事?」


「圭子の事も知らないし、来夢や君達の命を狙っていた事も知らないの一点張りらしい」


「それって、惚けてるだけじゃないの?」


 確かに、舞龍だったらあり得ると思う。しかし……


「いや、それが脳波検査とかもやったんだが、嘘はついて無いようなんだ。しかも、舞龍だけじゃない賢人(けんと)鬼崎(おにざき)も何も知らないようなんだ……」


 それって…… どういう事だ! あれだけずっと来夢や僕のことを狙っていたのに…… 何故、知らない!


「ねえ、圭子が私を襲って来たのは、舞龍からの指示があったからなのかな」


 来夢が言った。


「えっ! それって、関係あるんですか?」


 来夢って、偶に訳が解らない……


「関係あるわよ! いつも何を考えているのか解らない圭子が、いきなり私を殺そうとしたのよ! ありえないわよ」


 そうかな…… 何を考えているか解らないし、単独行動も好きだったからこそ急に来夢を襲った……?


 でも、圭子は最初から来夢の事を狙っていたのか? もしそうなら何故?


「あ、あの…… 自爆した後の圭子さんはどうなったんですか?」


 ずっと僕達の話を黙って聞いていた希美さんが口を開いた。


「一応、残骸は鑑識が持って帰って調べている」


 でも、自爆してるから何も出ないんじゃ無いかな……


 まあ、これで来夢や僕の命を狙う奴はいなくなったという事で僕は安心して希美さんと一緒に現代へ戻れるという事だが……


「いや、納得出来ないよ! 響君、希美も調べるから手伝って」


 えっ、何言ってんだこいつ……


「来夢、取り敢えず僕達を二十一世紀に戻してくれ!」


 僕はつい、叫んでしまった。


「駄目よ、その前に舞龍に逢うの、逢って話をしたいの」


「でも、記憶が無いんですよね」


 希美さんも、早く帰りたいようで顔に出でいる。


「大丈夫よ希美、昔の記憶はあるはずだから」


 希美さんはそんな事を気にしている訳ではない。


「私達はここに居て良いのよね」


 未玖さんと水嶋さんはもうここから動きたく無いみたいだ。


「ええ、二人はここでゆっくりしててね」


 はあ、まったくどうしようもないな……


 僕達三人はまた、警備局へ行く事になった。


 ここに舞龍達がいるらしいんだけど……


 その後、僕達は舞龍達がいる部屋へ来た。


「来夢、久し振りだね! 元気だったかい」


「久し振り? ずっと逢っていたでしょう」


「何言ってんだい、中学卒業して以来だろう」


 本当に舞龍は知らないのか……


「舞龍は私や響君の命も狙っていたでしょう」


「ちょっと待って、あたいは本当に来夢と響とかいう奴を殺そうとしていたのかい」


「本当に覚えて無いの?」


 舞龍はありえないとでも言いたそうな顔をしていた。


「どうしてあたいがあんたを殺さなきゃいけないのさ!」


「それは、私が訊きたいわよ! 私の命を狙ったり、二十世紀の博物館から国宝の屏風を盗もうとしたり、私の知ってる舞龍じゃないでしょう」


「国宝の屏風?」


 本当に舞龍は覚えていないのか?


「舞龍、あなたは1985年の東京国立博物館から屏風を盗むところを私と隣の響君が邪魔をして阻止したの!」


「響君…… 良い男だね、来夢のこれかい!」


 そう言いながら舞龍は親指を立てた。ハハハ、呑気なものだな……


「そうじゃないよ、私のご先祖様だよ」


「そうかい…… それは残念だね」


「舞龍、圭子とは何処で逢ったの?」


「圭子って誰だい! 警備局の人も言っていたけど……」


 どうやら本当に舞龍は、一部の記憶を失っているようだ。


「はあ…… オレンジ色のパーカーを着ていた女の人なんだけど、本当に記憶が無いみたいね」


「なんだか催眠術にでも掛けられたようですよね」


 希美さんが何気にそう言った。


 催眠術か……


「催眠術、それだ!」


 えっ、なにが? 来夢がそう叫んだけど、これって催眠術なのか?


「来夢さん、催眠術ってどういう事ですか?」


「ちょっと待って! 圭子の残骸は鑑識が調査してるんだよね」


「副部長がそう言っていたと思います」


 僕がそう答えた後、来夢は副部長に連絡していたようだ。


「副部長、圭子の目を調べて!」


 いきなりそう言われても副部長も解らないんじゃ……


「そう、例のコンタクトレンズ! 似たようなのが圭子の目にあるかも……」


 舞龍達も僕も唖然としていたが、ようやく来夢の考えが解った。


 以前、来夢が僕の友達に使った催眠コンタクトレンズだ! あれを圭子が使っていたのなら、舞龍達は圭子に操られていた事になる。


「組織の黒幕は、圭子だったんですか?」


 希美さんの問いに、来夢はちょっと考えてから……


「ううん、黒幕は圭子をアンドロイドにした奴だよ! 希美、もう一人いるでしょう」


「えっ、それって……」


「いるでしょう、組織のメンバーで、姿を見せていない奴が!」


「山田颯太!」


 でも、あいつにアンドロイドを作る事が出来るのか?


 僕と来夢は、急いで検査室へ来た。


「副部長!」


「うん、おまえの言う通り催眠レンズが仕込まれていた」


「やっぱり…… 希美、お手柄だよ!」


「えっ、私……」


 ちょっと照れて顔を赤くしてる希美さんも可愛いな……


「それと、もう一つ判った。アンドロイド計画には城島組が関わっているようだ」


 城島組がアンドロイド計画をしているのか……


「城島組でアンドロイドを作っているんですか?」


「いや、そうじゃなくて資金が城島組から出ているようなんだ」


 城島組が資金を出すとは、何かメリットがあるのか……


「響君、ありがとう。後は私と警備局でやるから」


「あっ、はい……」


 来夢にそう言われて僕と希美さんはタイムマシンに戻って来た。


「あっ、戻って来た」


「ねえ、なにか判ったの?」


 タイムマシンに残っていた未玖さんと水嶋さんに訊かれたけど、なんだか疲れたからそんな気分じゃない。


「ねえ、何か判ったんでしょう」


 はあ…… なんだか面倒臭な。


「それじゃ、二十一世紀に戻るよ!」


 来夢がそう言って、タイムマシンを起動させた。


「えっ、帰るの?」


 未玖さんがそう言ったけど……


「うん、圭子の事もはっきりしたから」


 確かに、事件の全貌は見えて来た。しかし、圭子の遺体をいつ回収したのか、城島組が何故、資金を出したのか…… そこは、謎のままだけど、警備局が解明してくれるだろう。


「着いたよ」


「来夢さん、ありがとう」


「こちらこそ、いろいろと付き合ってもらって」


「来夢さん、また来ますよね!」


「希美、また、遊びに来るから」


 何だか、最後の別れみたいで嫌だな……


「じゃあね、おじいちゃん、おばあちゃん」


 そう言って僕達は来夢と別れて僕の部屋へ戻って来た。

圭子がいなくなった事で、すべてが変わった。しかし、まだまだ謎が残っている。あとは、警備局でやるって言ってたけど……

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