46 闇の組織
僕と希美さんはお互い好きだった事を告白して、お付き合いをする事になった。
久々に僕は、誠司さんと話をした。舞龍の事は表立って話せないが、僕と希美さんの事は話さないといけないと思っていた。けど、もうすでに、あの二人が話をしていたとは…… まったく、どうせならついでに舞龍の事も話してくれれば良かったのに……
「あっ、倉橋さん、こんにちは!」
「やあ、こんにちは」
明奈ちゃんも帰って来たようなので早速勉強を始めなければ……
「なんだ、もう帰って来たのか」
「うん、先生を待たせたら悪いでしょう」
彼女は笑みを浮かべながらそう言った。
「まあ、そうだな」
「それじゃ誠司さん、勉強を始めますので」
「ああ」
そう言って僕は彼女の部屋へ入った。
「この間の模試はどうだったの?」
僕が、そう訊いたら彼女は表情ひとつ変えずに……
「えっと、あまり変わってなかったかな」
彼女からは、あまり変わってないと返事が帰って来たので試験結果を見せてもらって驚ろいた! 全ての教科が優秀で、僕よりも成績が良いんじゃないかと思うくらいだ…… 本当にこれだけ出来ると僕はいらないんじゃないか…… 僕の表情は凄く驚いた顔になっているだろう。
「倉橋さん、なんだか雰囲気が変わりましたね!」
彼女はそう言うけど、そんなに変わったとは思えないけど……
「雰囲気? そうかな……」
「倉橋さんは、あの女の人と付き合っているんですね……」
いきなり明奈ちゃんがそんな事を……
「えっ、えっと……」
「うふふっ!」
彼女はそう微笑んで僕を見た。
「隠さなくて良いですよ! 良かったですね」
彼女にそう言われて、ちょっとホッとしている。しかし、女性というのはほんの些細な事で解るものなんだな、中学生の女子でも侮れない…… 僕はそう思った。恐ろしい……
その時、僕のスマホが鳴った。相手は来夢のようだ!
「来夢さん、どうしたんですか?」
『響君、大変よ! 水嶋さんがいなくなった』
「いなくなったって、どういう事ですか」
『それが大学から忽然と消えたの……』
「それって、舞龍達の仕業ですか?」
『よく解らないけど、そんな事をするのは、たぶん…… すぐに部屋に戻れる?』
「えっと…… 今、家庭教師のバイト中で……」
『そうか…… 判った、終わったらすぐに戻って来て!』
「はい……」
遂に、あいつらが動き出した。しかし、何故水嶋さんなんだろう…… 僕の事を狙っていたんじゃないのか。
「倉橋さん、どうかしたんですか?」
「うん、ちょっと友達が逢えないかって」
「ひょっとして女の人ですか?」
うっ、鋭いな…… と言っても来夢だけど……
「いや、そうじゃ無いんだけどね」
と嘘をつく……
「あとは一人でもやれますよ!」
ひょっとして明奈ちゃんは僕に気を遣っているのか?
「ああ、大丈夫家庭教師が終わってからで良いみたいだから」
本当は早く戻らないといけないのかもしれないけど、ほとんどの事は警備局が調べるだろうから……
しかし、何をやらかすつもりなのか……
二時間ほどしてから僕は明奈ちゃんから解放された。『あとは一人でも……』って言っていた明奈ちゃんだったが…… 『解らないから』と言われてたっぷり質問され、やっと解放されたのだ…… でも、急いで部屋へ戻らないと。
僕は、人の少ない路地に入り、ファスナーを使って壁を開いて僕の部屋へ戻って来た。
「あっ、おかえり! 結構ゆっくりだったのね」
えっ、未玖さん? ここは僕の部屋だよな……
「あっ、響君おかえり」
来夢もいた! 来夢の顔を見た僕は、ちょっとホッとした。
「あっ倉橋、智ちゃんがいなくなっちゃって、どこを探してもいないんだよ」
良かった! 希美さんは無事だった。
「うん、来夢さんから訊きました」
「ねえ来夢、本当に舞龍達の仕業なの?」
えっ、未玖さん…… 雰囲気、変わりました……?
「未玖、今警備局が調査しているから」
「私は、絶対助けに行くからね」
「解ったわ」
えっ、助けに行くって……
「未玖さん、二十三世紀に行くって事ですか?」
「うん、そうよ! 未来で智ちゃんが拘束されてるんだもん」
本気か……
「まあ、未来にいるかどうかは判らないけどね」
来夢がそう言った時だった。また、僕の部屋の壁が開いた。
「舞龍達の居場所が判った」
そう言って入って来たのは柴咲副部長だ。
「何処にいるの?」
来夢が詳しい場所を訊いているけど……
「今津港第二埠頭の倉庫にいる」
「えっと、二十一世紀ですか?」
「いや、二十三世紀だ! そこに拘束されている」
やっぱり未来で拘束しているのか……
「だったら早く助けに行きましょう!」
未玖さんは、すぐにでも行って救出したいようだ。
「まあ、待て! 今、警備局が救出作戦を立てている」
「警備局は、何故早く突入しないのよ!」
まあ、未玖さんの気持ちも解らなくはないけど……
「まあ、待て! 警備局も指をくわえて待ってる訳じゃない」
「じゃあ、何なのよ!」
未玖さんも副部長相手に負けてないな……
「舞龍達は取引でもするつもりですか?」
僕がそう訊くと……
「何故それを知っている!」
「取引があるの?」
副部長と未玖さんが僕を見て言った。
「いや、今津港埠頭の倉庫にいるんでしょう。そしたら、大体そういう場所では取引が行われるんじゃ……」
うーん、映画や小説の見過ぎかな……
「それって、智ちゃんが取引されるって事?」
まさか、いくらなんでも舞龍達が人身売買するとは思えないけど……
「いや、それは無いだろう」
「何故そう言えるのよ!」
「同じ倉庫内にはいるが、離れた場所に拘束されている」
まあ、そうだな、取引に使うのなら側に置いておくはずだから。
『ピーッ』
その時、副部長のスマホが鳴った。
「どうした!」
何か動きがあったようだ。
「判った! すぐ戻る。決定的証拠を押さえたら、人質を確保した上で踏み込め!」
この人、本当に現場の副部長なんだな…… 僕はそう思った。
「ねえ、私も連れて行って!」
未玖さんが副部長にそう言ってるけど……
「後から来夢と一緒に来い!」
そう言って副部長は壁を開いて行ってしまった。
「来夢、早く行こう!」
「判ったから…… 響君と希美も一緒に良い」
「うん……」
そういう事で、またもや二十三世紀にタイムトリップです。
「倉橋……」
来夢のタイムマシンの中で、希美さんは不安そうに僕の側にいます。それを未玖さんは黙って見守ってくれてるような……
「着いたよ!」
夜の埠頭というのは静かだ。僕達はファスナーを使って倉庫内の二階へ入って来た。
一階の積荷の側に黒い服を着た舞龍達がいた。舞龍と賢人に圭子、それに鬼崎、メンバーは揃っているようだ。しかし、圭子は相変わらずオレンジ色のパーカーを着ている。よっぽどお気に入りなのか……
誰かが入って来た。
「あれは、城島組の若頭だな」
来夢が側にいた。
「ヤクザさんですか?」
希美さんが来夢に訊いている。ヤクザにさんを付けるとは希美さんらしい。
「二十三世紀にもいるんですね」
「城島組はヤクザじゃ無いよ! 暴力団だよ」
「そうなんだ……」
「まさか、闇の組織が城島組とはね……」
取引が始まったようだ。
「舞龍って言うのはおまえか!」
「あたいがそうだけど」
「まさか、女が頭とはな……」
「女だからと舐めないで欲しいね」
「まあ、良い。物は準備出来ているんだろうな」
やっぱり取引か…… 鬼崎が何やら黒い物に包まれたデカい物を持って来た。
「これがそうだよ! あんた金は持って来たのかい」
「ここにある」
スーツケースの中には大金が入っている。未来でもこういう取引では現金なんだな…… まあ、キャッシュレスという訳にはいかないか……
そして、取引が成立して舞龍と城島が握手をした時だった。
「そこまでだ、大人しくしろ!」
警備局が踏み込んだ!
「ちょっと、踏み込むのは良いけど智ちゃんは大丈夫なんでしょうね!」
その時、来夢が動いた!
「響君一緒に来て!」
そこには警備局の捜査官と一緒に気を失った水嶋さんがいた。
「希美、ファスナーを開いて!」
希美さんは倉庫とタイムマシンを繋いだ。
「響君、足の方を持って!」
来夢が水嶋さんの肩の後から両脇に手を入れて支えている。
「はい」
水嶋さんの足って、結構細くて綺麗だな……
「倉橋、早く!」
僕達は水嶋さんを救出して、来夢のタイムマシンへ戻って来た。
「ねえ、あいつらドンパチやってるけど……」
未玖さんが不安そうにそう言っているけど……
「ドンパチやってるのは、警備局と城島組の連中!」
「それじゃ、舞龍達は?」
あいつらはどさくさに紛れて逃げた可能性がある。
「希美、水嶋さんをメディカルボックスに入れて、響君もう一度行くよ」
「はい」
そう言って僕と来夢は倉庫へ戻って来た。舞龍達はこの銃撃戦の中、逃げる事が出来ずにいた。
「あいつらファスナーで早く逃げれば良いのに」
「えっ、捕まえないんですか?」
「だって、警備局は城島組と交戦中だし、私達だけでは無理だよ」
まあ、確かにそうだけど……
「来夢!」
その時、大声で叫びながら圭子が右手にサーベルみたいな物を持って向かって来た。
「来夢さん危ない!」
しかし、来夢もそれに気づき銃を取り出した。
「圭子、ここは引きなさい! 死にたく無いでしょう」
来夢は何を言っているんだ。
「五月蝿い! 来夢、覚悟!」
圭子がサーベルを持って来夢に襲いかかった瞬間、銃声が聞こえた……
圭子が持っていた筈のサーベルが無い! いや、圭子の右手首が無くなり、そこからは火花みたいな物がパチパチと出ていた。
圭子って、一体何者なんだ。
城島組と警備局が交戦中のなか、圭子がサーベルを持って来夢に襲って来た時、銃声と共に圭子の右手首が無くなり火花が出ている…… これってどういう状況なのか……




